今後のストレージ活用で押さえておきたいキーワードの1つが、フラッシュメモリを使うSSD(Solid State Drive)。それも、全てSSDを採用した「オールフラッシュストレージ/SSA(Solid State Array)」に熱い視線が注がれている。Pure StorageやSolidFireなど提供ベンダーも増えており、次の成長分野として期待されているのだ。
「2015年は、ベンダーによるプロモーションが激しく、エンタープライズ向けのSSAも発売された。これにより、基幹系システムを含む業務システムの基盤をフラッシュストレージに置き換えるべきかについて検討を始める企業も増えている。容量単価では高価なフラッシュだが、TCOで見ると比較的新しい勢力の割には品質が良い。しかも安定稼働するので、頻繁な交換が必要なHDDよりも安くつく。ベンダーの言い分だが、安定運用が可能なのでメンテナンスのための管理コンソールにログインすることがなく、パスワードを忘れるくらい(笑)とも聞く」
この他データ圧縮機能で容量を効率的に活用するなど、ストレージに求められる機能を一通り備えていることから、鈴木氏は、「SSAは検討の価値は十分ある」と断言する。
ただし、オールフラッシュが市場を席巻するのは、まだ未来の話だ。「世界市場で見ると、オールフラッシュの市場規模は1割を越えたところ。9割方はHDDのみのストレージシステムと、HDD・SSDのハイブリッドシステム。VDIなど性能要件が非常に厳しいソリューションであれば、オールフラッシュは選択肢に入れるべきだと思うが、決め打ちで導入しない方がいい」(鈴木氏)。
また、「現在のSSDはフラッシュメモリが中心だが、不揮発性メモリで書き込み/読み出しが10nsかつ低電圧で動作するMRAM(Magnetic Random Access Memory)や、読み出しが10ns以下で製造コストがMRAMよりも低いRe-RAM(Resistive Random Access Memory)も控えている」と鈴木氏は付け加える。動きが激しいだけに、動向をしっかり追うことが大切だ。
ストレージ市場を動かす潮流は、SSDだけではない。鈴木氏は、別のキーワードとして「SDS(Software Defined Storage)」「統合システム」を挙げた。
「SDSについて、一見ハードウェアは何でもいいのではないかと思うかもしれないが、特にストレージの場合、書き込みや読み取りの量が大きいため、0.1%でもエラーが出ると深刻な問題になる。また、SDSはソフトウェアとハードウェアの適合性が重要になることから、十分なテストを実施済みのハードウェアとパッケージで提供されることが多い。いずれはこなれた技術になると思われるが、技術的に難易度が高いことから、一般企業に普及するのは先の話だろう」
また「統合システム」について、ガートナーでは「サーバやストレージ、ネットワークのインフラストラクチャを組み合わせ、リソースのプロビジョニングと管理を容易にする管理ソフトウェアとともに販売されるシステム」と定義する。Nutanix、SimpliVity、Pivot3、Gridstoreなど、注目のベンダーがめじろ押しだ。
ガートナーは、統合システムを3つに分類する。
中でも、HCISは前述した注目ベンダーが該当する分野で、SDSの安全な展開方法として今後さらに需要が伸びると見られる。
「ソフトウェアとハードウェアを切り離して、どちらが重要という議論をするのは無意味かもしれない。ハードウェアの性能を最大限に引き出すソフトウェアと、ソフトウェアの処理を最適化するハードウェアという、互いを補う関係性があってこそ、新規ビジネスを創造する次世代プラットフォームが作られる。両方の特性や最新動向、課題を理解し、運用スキルを培って、ビジネスをドライブさせることが、これからのIT部門に求められる要件の1つだ」
また、ストレージ市場におけるここ数年の技術革新は著しく、今後も新しい技術が控えている。オンプレミスの見直しが始まった今、こうしたテクノロジーを押さえていくことは大切だ。インフラエンジニアが今後ストレージを活用するために必要なマインドセットとして、鈴木氏は下記のように述べた。
「動向を追い続けながら全てを完璧に理解することは難しい。アーキテクチャの概要や、ソフトウェアの効率性を高める背後にどんなハードウェアテクノロジーが使われているのか、ハードウェアの性能を向上させるソフトウェアはどのような仕組みなのかなど、大枠でもいいので理解する姿勢が大切だ。そうすれば、どれを採用すべきか、何を採用すべきでないか判断できるようになる」
ビッグデータ/機械学習、そしてIoTの潮流により、大量のデータを速く加工・蓄積・分析できるコンピューティング環境を構築するためにGPUやFPGAのアクセラレーションが注目を浴びている。また、Flashストレージ製品は増加し、その特性を理解した上でシステムを構築する利点を訴えるベンダーが多いなど、現在はかつてないほどハードウェアの知識がインフラエンジニアに求められている。一方で「クラウド/仮想化時代にハードウェアの知識なんて必要ない」と思っているエンジニアも少なくないのではないだろうか。本特集では、なぜ今ハードウェアの知識が求められるのかを浮き彫りにし、今までソフトウェアの知識中心でインフラを構築してきたエンジニアが、チップからサーバー、ストレージまで、ハードウェアの知識をいかにして身に付け、活用していくべきかの道標としたい。
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