ところで、クラウドコンピューティングには、大きく3種類あります。SaaS(Software as a Service:サース、あるいはサーズ)、PaaS(Platform as a Service:パース)、IaaS(Infrastructure as a Service:イアース、あるいはアイアース)です。今回は多くの人にとって最も身近な「SaaS」をメインに説明していますが、もう少しだけ、SaaSを基にクラウドのメリットを考えてみます。PaaS、IaaSについては次回以降で説明します。
総務省『平成27年度版 情報通信白書』の第2節-3「クラウドサービスの利用動向」によると、日本の企業でクラウドサービスは、「ファイル保管・データ共有」「電子メール」「サーバ利用」「社内情報共有・ポータル」「スケジュール共有」「データバックアップ」「給与、財務会計、人事」「営業支援」の順で使われているようです。
ファイルをクラウド上に保管できる「オンラインストレージサービス」はご存じの方も多いのではないでしょうか。上記の調査結果では、「ファイル保管・データ共有」「サーバ利用」「データバックアップ」の用途に該当し、主にリムーバブルメディアの代用やファイルのバックアップ、他人との共有や転送といったシーンで利用されています。
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オンラインストレージサービスは、クラウド事業者が所有するサーバの「ディスクスペースをユーザーに貸す」という仕組みで提供されます。ユーザーごとに個別にアカウントやパスワードが与えられ、割り当てられたディスクスペースの範囲で、インターネット経由で自由にファイルの読み書きができます。もちろん他人のファイルにはアクセスできないようセキュリティ対策が施されていますが、「共有リンク機能」などを通じて、知人や他のメンバーと同じファイルをクラウド上で共有することもできます。
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もう一つ、「Webメール」はどうでしょう。Webメールは、ブラウザを通じてアクセスするWebアプリケーション型の電子メール環境です。ブラウザさえあれば使えるのが大きな特徴。グーグルの「Gmail」や、Yahoo! JAPANの「Yahoo!メール」などが有名です。
ポイントは「インターネット環境とブラウザさえあれば使える」ことです。PCはもちろん、スマホやタブレットなどでも使えます。添付ファイルを含むメールの本体もクラウド上にあるので、いつでも、どこでも、どんなデバイスでも使えるようになりますし、膨大な過去のメールをPCに保管しておく必要もなくなります。
PCやスマホにデータを保管しないということは、ディスクスペースを圧迫せずに済むだけでなく、仮に機器を紛失してしまったとしても、重要なデータが流出してしまうリスクを低く抑えられる。つまりクラウドは、使い方によってはセキュリティ対策にも効果があると考えることもできます。
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SaaSを利用することで、ある企業では大幅に業務を効率化し、またある企業では経営のスピードアップを果たしています。クラウドによって運用管理に掛かるコストを削減できるので、そのコストを新規事業の立ち上げに投入したり、クラウドの上で独自のコストを抑えながら新サービスを開始したりできるのです。
この他にクラウドを説明する上では、前述した「PaaS(Platform as a Service)」や「IaaS(Infrastructure as a Service)」などの「ナントカ as a Service」という言葉も良く出てきます。いずれも、「**の機能をユーザーがネットワーク経由で活用する形態」を意味します。
今後、これまでオンプレミス(自社所有)で運用していたエンタープライズシステムのクラウドコンピューティング化がますます進んでいくことでしょう。
現在使われているさまざまなシステム、サービスやソフトウェア、インフラストラクチャが、クラウドコンピューティングに置き換わったり、その上で提供されるようになるでしょう。そして、クラウドコンピューティングを通じて、新しい技術やサービスも続々と生まれていくことでしょう。この背景にあるのは市場競争の激化や、さらなる利便性、効率性を求める企業や人々のニーズの高まりといえるでしょう。
企業経営や社会基盤の在り方、また私たちの仕事や生活の在り方が日々変わり続けていく中で、クラウドは大きな役割を果たしているのです。
次回は、日本マイクロソフト クラウド&ソリューションビジネス統括本部 データセンター&Azure営業本部クラウドソリューションアーキテクトの吉田雄哉氏が「クラウドを構成する要素」をやさしく解説します。お楽しみに。
長谷川 長一(はせがわ ちょういち)
CompTIA SMEコミュニティ 株式会社ラック ITプロフェッショナル統括本部 サイバーセキュリティ事業部 理事
ソフトバンク、日本ユニシスを経て、現職。社外では、多数の講演や研修、NPO日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)、CompTIAなどの団体での活動を行っている。経済産業省、総務省、警察庁、文部科学省などの情報セキュリティおよびクラウドコンピューティングの人材育成関連の委員を歴任。2010年(平成22年)より岡山理科大学総合情報学部特別講師、2011年(平成23年)より東京電機大学未来科学部非常勤講師、2015年4月より同大学国際化サイバーセキュリティ学特別コース(CySec)講師を務める
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