ストレージソフトウェアの他に、サーバ仮想化ソフトウェアとしてVMware vSphereを搭載するのが一般的。製品によっては、Hyper-V、KVMの構成も選択できるようになっている。また、マイクロソフトはAzure Packに基づくハイブリッドクラウド基盤ソフトウェアの展開を進めていて、これを搭載した製品が登場しつつある。仮想化環境の運用や利用を専門知識のない人でもできるようにするツールを組み合わせた製品もある。
とはいえ、ハイパーコンバージドインフラは、提供ベンダーによって味付けが異なる。また、一部の製品については、その位置付けや機能が急速に変化している。
ニュータニックスは、ハイパーコンバージドインフラに特化したスタートアップ企業であるため当然ではあるが、この分野のベンダーの中で最も急速に製品を進化させてきた。
2U/4ノードのアプライアンスでスタートした同社だが、現在では各種コンポーネントを組み合わせ、多様なハードウェア構成が可能になっている。同社製品ではGPUの搭載も可能。そのストレージソフトウェアは事実上無制限に拡張が可能だといい、単一製品で、大規模データセンターを含むあらゆる用途に対応できるとしている。
仮想化ソフトウェアとしてはVMware vSphereを利用するユーザーが大部分を占めているものの、同社ではHyper-V、KVMをハイパーバイザとして利用する構成も提供。vSphereと併用できるようにし、開発環境、クラウドネイティブなアプリケーション、あるいは単純に安価な仮想化環境を求めるニーズにも応えようとしている。
デルはハイパーコンバージドインフラで、多彩な商品展開をしている。ニュータニックスソフトウェアに基づく製品を提供。一方で、EVO:RAIL仕様に基づく製品を提供していたが、現在は「VCE VxRail」に移行した。同社はまた、VCE VxRackを採用した大規模環境向け製品を提供すると、2016年5月に発表した。
一方で、デルはマイクロソフトとの協力により、Azure Packベースの製品を提供する最初のサーバベンダーともなっている。
シスコシステムズのハイパーコンバージドインフラ「Cisco HyperFlexシステム」は、Cisco UCSのネットワークをはじめとした設定の容易さを生かした製品で、ここに同社としての最大の差別化ポイントがある。ネットワークスイッチを含めた統合運用ができる。
この製品では、SpringPathという企業からの独占OEM供給を受けたストレージソフトウェアを搭載。重複除外/データ圧縮機能、スナップショット、クローン、複製などのデータ管理機能を備えた高性能なストレージだという点をアピールしている。
Cisco HyperFlexは、基本的に1Uあるいは2Uの同社ラックマウントサーバを用いる。ブレードサーバとの組み合わせで処理能力を拡張する構成も提供している。
ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の、ハイパーコンバージドインフラに関するメッセージングはシンプルだ。同社はVMware vSphereを採用した製品を提供。以前はヴイエムウェアのEVO:RAIL仕様に合わせ、ストレージにVMware VSANを採用していた。だが、現在では自社の「HPE StoreVirtual VSA」を用いた製品に移行している。vSphereにOEMライセンスを適用できるため、全体として安価に提供できるという。仮想化環境の初期導入や運用、仮想マシン作成などのプロセスは、専門家でなくとも迅速に実行できるようになっている。なお、同社は2U/4ノードにこだわっているわけではないといい、自社のサーバ製品を活用して、多様な構成ニーズに応えていこうとしている。
HPEは、一方でマイクロソフトのHyper-Vにも対応している。さらにAzure Pack搭載製品の提供も発表した。
EMCは、子会社VCEが、統合インフラシステムとハイパーコンバージドインフラの双方を開発、これをEMCが販売する形で事業を展開している。ハイパーコンバージドインフラでは「VSPEX Blue」というEVO:Railベースの製品の進化版として、「VCE VxRail」を発表した。VxRailは基本的には2U/4ノードのアプライアンスだが、記憶媒体、CPU、メモリ量などを柔軟に選択できる点が、VSPEX Blueと決定的に異なる。
VxRailはストレージソフトウェアとしてVMware VSANを搭載。初期設定や運用を容易にするポータル機能を搭載している。専門家がいない環境で、15分以内に利用を開始でき、拡張も容易にできるという点も、EVO:Railと変わらない。同製品ではvSphereとVSANの統合度の高さ、および文字通り単一ベンダーでサポートできることを差別化ポイントとしている。
EMC/VCEは、VxRailで全ての用途をカバーしようとしていない。2社は大規模環境向けのハイパーコンバージドインフラ製品シリーズとして「VxRack」を提供している。同製品はラック単位のITインフラ展開・運用を容易にすることを目指している。VMware vSphere以外の多様な構成に対応。例えばOpenStackインフラや、Pivotal Cloud Foundryの環境を、ターンキーで展開できる製品をラインアップに含めている。
ハイパーコンバージドインフラ製品は、提供ベンダーによって、製品コンセプトが若干異なる部分があるが、共通の大きなテーマがある。「オンプレミスITインフラのクラウド的な運用」だ。
パブリッククラウドの多くは、ソフトウェアストレージを用い、拡張のしやすいITインフラを構築、これをユーザーがいつでも即座に利用できるような形で提供している。対して、一般企業はクラウドサービス事業者のようにエンジニアを多数抱えることはできない。逆に情報システム部門の最大の課題は、運用コストの削減だ。そこで、ハイパーコンバージドインフラでは、社内のエンドユーザーが、パブリッククラウドを使うような感覚で利用できる環境を、社内の運用担当者の手間も不要な形で提供しようとしている。
ハイパーコンバージドインフラは、「ITインフラ運用にかかわる無駄を最小限に抑えながら、ITをもっと活用したい」というニーズに応えられる可能性を秘めた製品ジャンルだ。IT調査会社が高成長を予測する理由はここにある。
次回より、ハイパーコンバージドインフラ製品ベンダーのキーパーソンへの取材などを通じて、製品のさらなる進化の可能性を探る。
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