ハイパーコンバージドインフラを解説する連載の第1回として、この種の製品が結局のところ何を目指しているのか、どこに価値があるのかを解説する。
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「ハイパーコンバージドインフラ」「ハイパーコンバージドシステム」と呼ばれる製品の提供が広がっている。米ニュータニックスなどのベンチャー企業が数年前に作り出した製品ジャンルだが、今や全てのサーバベンダーが、何らかの製品を提供しているといっても過言ではない。
米調査会社IDCが、2019年に39億ドルの市場を構成すると予測するハイパーコンバージドインフラだが、市場の広がりとともに、製品は急速な変化を続けている。本連載では、ハイパーコンバージドインフラの現状を分かりやすく解説するとともに、今後どのように変化していくのかを探る。
「ハイパーコンバージドインフラ」は、「コンバージドインフラ」(統合インフラシステム)の一種だ。統合インフラシステムでは、サーバ機と専用ストレージ装置を一体的なシステムとして提供している。ハイパーコンバージドインフラはこれをさらに集約。ストレージ機能はサーバ内蔵の記憶媒体を使い、ソフトウェアとして動かしている。つまり、物理的なコンポーネントはサーバ機のみ。「極度に集約・統合」しているため、「ハイパー(超)コンバージド(統合)」と名付けられている。
では、ハイパーコンバージドインフラは、単なる「ストレージ装置を持たないサーバ機のみによる統合インフラシステム」なのだろうか。答えは「イエス」であり、「ノー」でもある。
まず、「ストレージ装置を持たないサーバ機のみによる統合インフラシステム」でさえあれば、「ハイパーコンバージドインフラ」製品と呼ばざるを得ない。だが、それだけでも、導入組織は統合インフラシステムのメリットに、プラスアルファを期待できる。
統合インフラシステムのメリットは、製品の選択や検証・構成のプロセス短縮による省力化と短納期、導入組織側での構築や初期設定作業がほぼ不要、サーバとストレージのベンダーが異なる場合でも統合的なサポートが期待できる、サーバとストレージのライフサイクルを合わせることで更改プロセスを改善できる、といった点にある。
ハイパーコンバージドインフラでも、これらのメリットは全て享受できる。迅速にシステム環境を手に入れられ、即座に利用を開始できる。「アプライアンス(家電製品)」のような感覚で導入し、利用に徹することができる、というのが最も基本的なコンセプトだ。
その上で、統合インフラシステムに比べ、ハイパーコンバージドインフラは「アプライアンス度」を高めている。専用ストレージ装置を持たない分だけ、省スペース、省電力で、物理的に故障する可能性のある部品点数は少ない。ストレージ機能がソフトウェアのみになっても、技術サポートの必要性がなくなるわけではないが、サポートする側にとっての複雑性は軽減される。また、専用ストレージ装置でなくソフトウェアストレージを採用していることで、システム全体としての価格低下が期待できる(「ソフトウェア=安い」とは断言できない)。スモールスタート構成も作りやすく、比較的小規模なニーズにも対応できる。
最後の、「スモールスタート構成が作りやすい」という点は、ハイパーコンバージドインフラ製品の用途の広がりを考える上で重要なポイントだ。中堅・中小企業や大規模企業の支社・支店、事業部門などでも、サーバ仮想化環境を導入しやすくなるからだ。大規模企業のデータセンターでも、IT運用の効率化を進めるためのツールの1つとして、統合インフラシステムとハイパーコンバージドインフラを併用する、あるいはハイパーコンバージドインフラへの移行を図るケースが増えることが考えられる。
ハイパーコンバージドインフラの原点であり、現在でも最大公約数的な構成は、4ノードのコンピュータユニット(サーバブレードとほぼ同一の役割を果たすコンポーネント)を備えた2Uサイズのサーバ機に、HDDあるいはSSD、もしくはその両方を搭載し、何らかのストレージソフトウェアで動かすものだ。利用しているストレージソフトウェアは製品によって異なり、各社の差別化ポイントの1つともなっている。
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