クラスタ環境でSQL Serverが起動しない(起動トラブル)SQL Serverトラブルシューティング(10)

本連載は、「Microsoft SQL Server」で発生するトラブルを「どんな方法で」「どのように」解決していくか、正しい対処のためのノウハウを紹介します。今回は「クラスタ環境でSQL Serverサービスの起動までに達せず、エラー1069が表示される場合の対処方法」を解説します。

» 2016年08月01日 05時00分 公開
[椎名武史ユニアデックス株式会社]

連載バックナンバー

 本連載では、「Microsoft SQL Server(以下、SQL Server)」で発生するトラブルについて、「なぜ起こったか」の理由とともに具体的な対処方法を紹介していきます。

トラブル 05(カテゴリー:起動):クラスタ環境でSQL Serverサービスの起動までに達せず、エラー1069が表示される

 「Windows Server 2012」のクラスタ環境上に「SQL Server 2016 RTM」をインストールした環境を想定して解説します。

トラブルの実例:クラスタ環境でSQL Serverが起動しない。「フェールオーバー クラスター マネージャー」を確認したところ、SQL Serverはオフラインのままだった。また、失敗と記録されていたリソースは「サーバー名のIPアドレス」であり(図5-1)、Windowsのシステムログを確認すると、「エラー1069」が記録されていた(図5-2)。

photo 図5-1 フェールオーバー クラスター マネージャーを確認すると、IPアドレスのリソースの状態で「失敗」となっていた
photo 図5-2 「エラー1069」が発生していた

トラブルの原因を探る

 Windowsのシステムログでは、エラー1069の「クラスター化された役割‘SQL Server (MSSQLSERVER)’の種類’IP Address’のクラスターリソース’SQL IP Address 1 (SQLNetworkName)’が失敗しました」というメッセージを確認でき、その直前にある「エラー1049」でも、「重複するIPアドレス’192.168.100.83’がネットワーク上で検出されたため、クラスターIPアドレスリソース’SQL IP Address 1 (SQLNetworkName)’をオンラインにできません。すべてのIPアドレスが一意であることを確認してください」というエラーメッセージが記録されていました(図5-3)。

photo 図5-3 エラー1069の前に、「エラー1049」も発生していた

 このエラーは、クラスタのIPアドレスリソースで使っているIPアドレスがユニーク(一意)でないために発生します。今回の例では、「192.168.100.83」というIPアドレスが、クラスタ環境のアクティブノードのIPアドレスと重複していたのが原因でした。

 パブリッククラウド上で構築した環境では、場合によって自身のIPアドレスと同一のIPアドレスがDHCPで割り当てられてしまうことがあります(*1)。IPアドレスが重複していると、クラスタIPアドレスのリソースをオンラインにできません。そのために、依存関係が結ばれているSQL Serverのリソースも起動できなかったということになります。


解決方法

 原因からひも解くと、解決には「SQL Serverと依存関係を結んでいるリソース」をオンラインにできればよいことが分かります。

 実作業は、フェールオーバー クラスター マネージャーから該当するリソースのプロパティを開き、「静的」にユニークなIPアドレスを指定します(*2)。重複がなくなれば、クラスタIPアドレスリソースがオンラインになります。この作業を行うことで、依存関係を結んでいるSQL Serverも起動できるようになります(図5-4)。


photo 図5-4 フェールオーバー クラスター マネージャーより、ユニークな静的IPアドレスを指定することで解決できる

「SQL Serverサービスの起動までに到達しない」場合のチェック手順

  1. Windowsイベントビューアー(「Windows ログ」→「システム」)を確認して、エラーの内容や原因を調べる
  2. SQL Serverと依存関係が結ばれているリソースを、全てオンラインにする
  3. (本例の場合は)フェールオーバー クラスター マネージャーより、一意のIPアドレスを割り当てる


本トラブルシューティングの対応バージョン:SQL Server 全バージョン

筆者紹介

内ヶ島 暢之(うちがしま のぶゆき)

ユニアデックス株式会社所属。Microsoft MVP Data Platform(2011〜 )。OracleやSQL Serverなど商用データベースの重大障害や大型案件の設計構築、プリセールス、社内外の教育、新技術評価を行っていた。2016年4月よりIoTビジネス開発の担当となり、新しい仕事に奮闘中。ストレッチをして柔らかい身体を手に入れるのが当面の目標。

椎名 武史(しいな たけし)

ユニアデックス株式会社所属。入社以来 SQL Serverの評価/設計/構築/教育などに携わりながらも、主にサポート業務に従事。SQL Serverのトラブル対応で社長賞の表彰を受けた経験も持つ。休日は学生時代の仲間と市民駅伝に参加し、銭湯で汗を流してから飲み会へと流れる。


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