技術の壮大な無駄遣いはIoTや人類の未来を示すのか〜「おばかIoTアプリ選手権2016 Summer」レポート(4/4 ページ)

» 2016年08月31日 05時00分 公開
[吉村哲樹@IT]
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おならの音を出すためだけに「壮大な遠回り」を

 9番目に登場したのは、芳和システムデザインの鈴木直康さん。

 普段から業務でIoT関連のシステム開発に従事する鈴木さんは、忙しい仕事の合間を縫って何と開発工数わずか30分、動画の撮影作業45分で今回の作品を開発したという。それが「壮大に遠回りなおばかIoTブーブークッション」だ。

 仕組みは一見すると、すごい。デバイスに取り付けられたセンサーが発したデータを、Bluetoothで接続したIoTゲートウェイを通じてLTE経由でMicrosoft Azureのクラウド環境へ。そこから踏み台サーバを介して、SIPサーバへ。そして電話回線を通じて発呼し、最終的には音声電話としてスマホに着信するという仕掛けだ。何でも、たまたまMicrosoft Azureのサーバリソースが社内で余っていたところから、今回のこの壮大な仕掛けを思い付いたという。

「壮大に遠回りなおばかIoTブーブークッション」の構成図

 しかしスタート地点の圧力クッションから壮大な仕掛けにデータが送られてどうなるかというと……何とただのブーブークッション。そして、最終的にスマホに着信して聞こえるのは……「ぷぅ」という音だけ。

 ただブーブークッションの音を鳴らすためだけに、これだけのインフラリソースを無駄遣いし、壮大な遠回りをして見せるという見事なおばかっぷりに、会場は大爆笑! 審査員のアンドレさんも「無駄に余っていたMicrosoft Azureのリソースを、さらに無駄なことに使うという、『無駄に無駄を重ねる』ところがいかにもおばかっぽい!」と大絶賛だった。

IoTを使って迷子を発見するつもりが、なぜか……

 最後に紹介されたのは、森谷英一郎さんと砂川寛行さんによるアプリ「迷子発見支援装置」。

 森谷さんいわく、「2016年5月に北海道で山菜取りの7歳男児が行方不明になった事件をきっかけに、IoTを使って迷子をすぐ発見できる仕組みができればと思い立ち、開発に着手した」という。

 その仕組みはこうだ。わが子が迷子になってしまったら、まずは迷子発見センターに電話をかける。すると自動音声応答システムが自動的に子どもが持つデバイスにメールを送信する。デバイス側ではメールを受信すると、自身の位置を親に知らせる仕掛けを発動する。

「迷子発見支援装置」のデバイス設計(森谷英一郎さんの講演資料より)

 ここまでを聞くと、開発に至った経緯やシステムの仕組みは至って正統派のように見えるが……やはりおばかの性というべきか。最終的に自身の位置を知らせる手段というのが、麦わら帽子のてっぺんが開き、中に仕掛けてあったクラッカーが「パン!」と鳴るという、コントのオチのようなズッコケぶり……。

 このオチには審査員の野崎さんも「夏休み中の海や遊園地で、そこら中で子どもたちの頭上でクラッカーがパンパン鳴っている様子を想像すると、なかなかシュールですね」と若干戸惑い気味ながらも、最後まで表情ひとつ変えずにコメントを続けていたのがひときわ印象的だった。

デモ後の「迷子発見支援装置」

表彰式――果たして優勝は誰の手に?

 こうして決勝に進出した10のアプリのプレゼンが全て終了した後、来場者と審査員による投票が行われ、栄えある受賞者が決定した。ちなみに、優勝・準優勝以外の結果は、以下の通り。

皆の力を結集で賞:「変態ベルト」左から、小暮敦彦さん、鈴峰きりさん、林博さん
公務員だったで賞:「UFOピッチャー」斉藤之雄さん
どきどきしたで賞:「パルス診断」市川雅明さん
さぼるで賞:「さぼろう君(仮)」大道寺寿文さん
ハートウォームで賞:「迷子発見支援装置」左から、砂川寛行さん、森谷英一郎さん
実用になりそうで賞:「WatchRoll」谷口慈行さん
ウェーイ!で賞:「NOTTERU」左から、斎藤佑樹さん、中村師さん
スケキヨ賞:「小学4年生の夢」野崎錬太郎さん

 「賞の名前、そのまんまじゃないか!」「絶対、その場で考えただろ?」。そんな疑問が来場者全員の脳裏をよぎるも、華麗にスルーして準優勝者の発表へ。

準優勝:「イケメンドミネーター」がりっちさん

 がりっちさんには、DMM.make AKIBAから「Drop-in」(1回利用)の50%引きチケットが贈呈された。そして栄えある優勝者は……。

優勝:「壮大に遠回りなおばかIoTブーブークッション」鈴木直康さん

 優勝者の鈴木さんには何と、2016年8月6〜7日に東京ビッグサイトで開催された展示会「Maker Faire Tokyo 2016」のブースへ出展権が贈呈された。

 最後に、各審査員から今回の選手権について総評が行われた。

 「コンテストやハッカソンに参加する際、通常なら「このテーマならこういうものを作れば高く評価されるのではないか」と作戦を練って作品を制作すると思うのですが、今回の「おばかなIoT」というテーマは、実質的にはほとんど縛りがなかったように思います。その分、プレゼンでは各参加者の素の姿がそのまま出ていて、とても面白かった。次回はぜひ僕も参戦してみたいですね!」(大和田さん)

 「僕は普段、アート分野で作品を発表したり、ハッカソンに参加したりしているのですが、今回はいつもと異なる分野の作品をいろいろ見ることができてとても楽しかった。アート系のコンテストでは、作品の評価基準がいまいちはっきりしないことが多いのですが、今回のおばかIoTアプリ選手権は直感的で分かりやすい作品が多く、参加者の皆さんの“ピュアさ”を感じられたのが、とても印象に残りました」(アンドレさん)

 「これまで、数々のおばかアプリ選手権に参加したのですが、そのたびに思うのは、「このイベントは、参加者と観覧者の優しさで成り立っているな」ということです。今回も同様に、皆さんの優しさが感じられる、とても良いイベントだと感じました。また次回も、ぜひ参加したいと思います!」(野崎さん)

開催後に行われた参加者全員による記念撮影
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