Python Tools for Visual Studioを使うと、高度な開発者支援機能を活用して、Pythonプログラミングが行える。今回はその概要について見ていこう。
Visual Studio(以下、VS)が.NET開発者だけのものだった時代はもう終わっている。現在では、.NET言語に加えて、JavaScriptやTypeScriptなど、さまざまな言語がサポートされるようになった。本特集では、そうした言語の中でもPythonに焦点を当て、VSでPythonプログラミングを始めるための基礎知識を何回かに分けて紹介していこう。
VSでPythonを利用するには「Python Tools for Visual Studio」(以下、PTVS)が必要になる。PTVSは、マイクロソフトとコミュニティーによりオープンソースソフトウェア(OSS)として開発が行われているVS用のPythonプラグインである。2016年9月8日時点の最新バージョンは2.2.5で、サポートしているVSのバージョンはVS 2015のみとなっている(PTVS 2.2.2ではVS 2013が、PTVS 2.1.1ではVS 2010/2012がサポートされている)。
PTVSのインストールには、VSのインストーラーで[プログラミング言語]の下にある[Python Tools for Visual Studio]にチェックを入れるか、PTVSのリリースノートページなどからインストーラーをダウンロードして実行する。
PTVSとは別にPythonの処理系をインストールする必要もある。PTVSはその名の通り、VS用のPythonサポートツールであって、Python自体は含まれていない。逆にPython処理系を含んでいないことから、PCへ複数のPython処理系をインストールして、それらをVS環境内で簡単に切り替えられるようになっている。多くの処理系は、それらをインストールすることでPTVSが自動的に認識してくれる。例えば、「PTVS Installation」ページでは以下の処理系が挙げられている。
AnacondaとCanopyはデータサイエンス/データ解析系の技術者向けにPython処理系に加えて多くのライブラリ/フレームワークをあらかじめパッケージングしてあるものだ。Pythonのパッケージのインストールで苦労したくないのであれば、これらを最初から使ってしまうのも1つの手だ。
この他にもJython(PythonのJVM実装)などもPTVSではサポートされているが、ドキュメントによるとデバッグなどの機能は使えない。
本稿ではCPython 2.7/3.5(32bit)とAnaconda 4.1.1(Python 3.5/64bit)を例としてインストールした(インストール手順は省略する)。
PTVSおよび各種のPython処理系をインストールすることで、VSでPythonプログラミングが可能になる。PTVSはインストールされているPython処理系を(多くの場合)自動認識してくれ、どれをデフォルトの環境とするかを指定したり、それぞれの環境の構成を行ったりできる。これを行うための入口となるのが[Python Environments]ウィンドウだ。
3つのPython処理系(環境)が認識されていることが分かる。そして、ボールド書体で表示されているものが現在デフォルトで使用される環境となる(ここでは[Python 64-bit 3.5]=Anaconda 4.1.1になっている。下に「This is the default environment for new projects」と表示されていることに注意)。
デフォルトの環境を変更するには、対象の環境を選択して、その下にある[Make this default environment for new projects]をクリックする。また、[Go online and help me find other environments]をクリックすると、「Selecting and Installing Python Interpreters」ページがVS内で表示される(どんな処理系をインストールできるかを知りたい人は英語のドキュメントだが一読しておこう)。
[Python Environments]ウィンドウでは各種の構成も行えるが、以下では[Open interactive window]をクリックして、VS内でPythonを対話的に使ってみよう。
[Open interactive window]をクリックすると、VS内に[Interactive]ウィンドウが表示される。インストールされている環境ごとに別々のタブを開くことも可能だ。以下に例を示す。
まずはPythonにデフォルトで組み込まれているモジュール「os」をインポートしてみよう。「import os」と入力すると、IntelliSenseが働いて、概要が表示される。
osモジュールはOS依存の機能に対する統一的なインタフェースを提供する。そこで次に「os.name」と入力してみよう。Windowsで実行している場合、その結果は「'nt'」になる(Windows NTの「nt」)。同様にしてsysモジュールをインポートして、今度は「sys.version」と入力してみる(sysモジュールはPythonインタープリタ=[Interactive]ウィンドウに関連するシステムパラメーターや関数を管理するモジュール)。以下は「Python 64-bit 3.5」環境での実行結果だ。
os.nameの値は今回インストールしている3つの環境全てで「'nt'」になるが、sys.versionの値は環境ごとに異なる(興味のある方は、ご自分でも幾つかの環境をインストールして実行してみよう)。このように、PTVSは環境ごとに独自のコンテキストを持つ[Interactive]ウィンドウを通してPythonの対話的実行が可能になっている。
モジュールをインポートして、そこで定められている値を表示するだけではつまらないので、今度はfor文とリストを使ってみよう。以下に例を示す。
>>> lst = list(range(3))
>>> lst
[0, 1, 2]
>>> for n in lst:
... print(n * 2)
...
0
2
4
最初の行では「0〜2の範囲」を表すrange型のオブジェクトを作成して、それを基にリストオブジェクトを作成している。そして、リストを反復して、各要素の値を2倍してコンソールに出力している。
関数も定義できる。これについては説明の必要もないだろう。
>>> def hello(to):
... print("hello " + to)
...
>>> hello("Insider.net")
hello Insider.net
キーワードで始める各文の末尾にあるコロン(:)とインデントによるブロックの指定はPythonコードの見た目における特徴的な要素といえる(Pythonの文法については次回以降で簡単に取り上げる)。
ここまではPTVSをインストールしたVSの中で特にプロジェクトを作成することもなく、Pythonの対話的実行を試してきた。次ページではPythonのコンソールアプリプロジェクトを作成して、これを実行してみよう。
Copyright© Digital Advantage Corp. All Rights Reserved.