Jクリエイティブワークスの市川吾郎氏は、10年以上、デザイナー/ディレクターとして、Webサイトを受託制作してきた経験を持つ。ライトニングトークでは、Web制作会社のデザイナーやエンジニアが、つい陥ってしまう「奴隷思考」とその克服法をユーモアを交えて語った。
市川氏は「良いUXを作るには、まず組織内に巣くう悪しき習慣や考え方を変える必要がある」と述べる。
受託制作において、ついクライアントを神とあがめて、その要望にただただ従う中で、デザイナーやエンジニアが自ら考えることを放棄してしまいがちになってしまう。しかし、最終的なクリエイティブを制作しているのは、やはりデザイナーやエンジニアだ。
市川氏は、自らの意見を持ち、現場からのボトムアップができる体制作りの重要性を語り、そのための施策として、まずは「脱コミュ症」から始めることを挙げる。
現場では、「関わるプロジェクトが何のために、誰のためのものなのかを納得できるまで聞く」ことが大事であり、それを理解しながら制作することで、本当にユーザーが求めている体験を作ることができるとして、デザイナーにエールを送った。
GUIデザイナーの佐々木康嗣氏は、良いUXを作り出す上で「反復プロセス」が重要であると語った。
佐々木氏は、デザイン思考、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルやモトローラが開発した「シックスシグマ」、また、プロトタイプを使いテストを繰り返す手法などを紹介し、世の中に存在するそれらのさまざまな改善手法には、「反復プロセス」が用いられていることを指摘。身近な例として、「自転車に乗りにくい!」と子どもが言い出したときに、反復プロセスでどう解決するか、という流れを紹介した。
課題や原因を明確にせず、調査をきちんと行わないと、問題点を解決しない案が出てきてしまう。佐々木氏は、「反復プロセスは身近に用いる方法論であり、問題解決において重要な手段である」と結んだ。
Seven Richの井澤健介氏は、『明日のプランニング 伝わらない時代の「伝わる」方法』(佐藤尚之著、講談社刊)のデータから実は20代の約20%を占めているという「マイルドヤンキー」の存在に触れ、「彼ら彼女らを無視したUIを作ってはいけない!」と警鐘を鳴らした。
「いま主流であるフラットデザインやアコーディオンを使ったUIは、マイルドヤンキーにとって大変扱いづらいものであることを理解する必要がある」と井澤氏は強く語る。マイルドヤンキーを無視することは多くのユーザーを失うとのことだ。
自分たちはふだんWebに慣れ親しんでいるため、いま流行のデザインが当然と思ってしまいがちだ。だが、それに馴染めないユーザーもいる。サイトやアプリを開発する際にはターゲットとなるユーザーを考え尽くさなければいけない。独特な視点と正論に会場は爆笑に包まれた。
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