サイボウズ フェロー 野水克也氏に聞く、IoTとワークシェアリングの幸せな関係特集:テクノロジーが支援する1億総ワークスタイル変革時代(3)(2/3 ページ)

» 2016年09月27日 05時00分 公開

Uberは、ワークシェアリングのお手本

 もはやワークスタイルの変革「待ったなし!」の状況になっている中、その変革を促す重要なカギを握っているのがIoT活用だ。野水氏は、IoT活用によって実現されるワークスタイル変革の具体例として、「マッチング」「ワークシェア」「ナレッジシェア」の3つを挙げる。

 「IoTを活用すると、時間と場所を越えて『労働力』や『能力』をマッチングさせられます。例えばコンビニチェーン店なら、『A店舗では○時から○時まで人が余っている』『B店舗では×時から×時まで人が足りない』という情報をIoTによってマッチングさせれば、労働力を無駄にすることなく、的確に配置させられます。

 ワークシェアという点では、1人で長時間行っていた仕事を複数人で分担することが可能になります。1日2時間しか働けないという人でも、3人集まれば6時間分の仕事をこなせるようになります。3人が全く別の場所にいたとしても、IoTを活用すれば、コミュニケーションを取りながら仕事を進められます。

 そして、ナレッジシェアという点では、専門知識を持った人たちをつなげて、全体としてフル活用できます。IoTを活用すれば、場所に関係なくスキルや知識を武器にして仕事ができるようになります」

 このIoT活用によるワークスタイル変革を具現化しているのが、GPSセンサーを使って、タクシーに乗りたい人とタクシーのドライバーをマッチングさせる、配車サービスの「Uber(ウーバー)」だ、と野水氏は話す。Uberは乗客にとってのメリットが分かりやすいが、実はドライバーにとってもメリットのある仕組みなのだ。

 Uberに登録したドライバーは、従来のように長時間働いたり、乗客が見つかるまで車を流し続けたりする必要がなくなり、自分の都合に合わせてドライバーとして働けるからである。

乗客が必要なときに利用できるだけでなく、タクシー乗務員も待機時間のロスなく働けるのが、Uberの利点だ

適切なマッチングには、見える化が必要

 一方で、野水氏は、IoTを活用したワークスタイル変革を実現するためには“見える化”が必要不可欠になると訴える。

 「UberがIoT活用によって料金や働き方も自由化できるのは、サービスを使う側も、提供する側も、目的が明確である点が大きいと思います。車に乗りたい人に対して車を運転する人をマッチングするという、単純で分かりやすい仕組みになっているのです。このように単純な業務ではない場合は、『自分の状況』と『相手の状況』を、いかに“見える化”するかがポイントといえます」

 自分の状況とは、「自分が何者」で「どんな仕事を依頼したいのか」を“見える化”すること。例えば、「山のような領収書を伝票に入力してほしい」と依頼しても、仕事の内容が抽象的で相手に伝わりにくい。しかし、たまっている領収書をデジカメで撮影して、伝票の形式と共に相手に伝えれば、仕事の総量を見積もりやすくなり、マッチングやワークシェアがスムーズになる。

 「相手の状況」の“見える化”を野水氏は、コピー機の修理対応を例に取って説明した。

 通常コピー機の修理作業は、ユーザーからの連絡を受けて、担当者が現地に赴いて対応する。しかし、コピー機の各ポイントにセンサーを仕込み、状態をリアルタイムに確認できるようにすれば、担当者が現地に行かなくても故障の状況を把握でき、修理作業もリモートで対応できるようになる。

 そうすれば移動の時間を削減できるし複数の現場を同時に対応できるので、修理担当者が専門知識を生かす時間の割合を総労働の時間の中で増やせるようになり、業務効率を大幅に改善できる、ということだ。

 「自分と相手の状況が“見える化”できれば、業種を問わず、ワークスタイル変革の可能性は広がります。例えば先ほど例に挙げたように、コンビニのスタッフを店舗ごとに管理するのではなく全体で把握できるようになれば、地域レベルでスタッフを統合管理することも可能になります」

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