日立、IoTプラットフォームを中心にデジタル化時代の製造、金融、流通、公共などの事例を紹介Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO(1/2 ページ)

日立製作所は2016年10月27〜28日、「Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO」を開催。IoTプラットフォーム「Lumada」やヒューマノイドロボット「EMIEW」、デジタル化時代の製造、金融、流通、公共などの事例を紹介した。

» 2016年11月01日 19時50分 公開
[丸山隆平@IT]
日立製作所 執行役社長 兼 CEO 東原敏昭氏

 日立製作所は2016年10月27〜28日、東京・有楽町の国際フォーラムで「Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO」を開催した。

 日立製作所 執行役社長兼CEOの東原敏昭氏は基調講演「デジタル技術と協創で加速する社会イノベーション」において、日立製作所の社会イノベーション事業について、具体的なソリューション事例や新しい取り組みを交えて紹介した。

11分野でシステム開発を先行的に進める

 東原氏はまず、「世界各地で社会インフラを中心に新たなイノベーションを創出する取り組みが加速している」と切り出した。

 「デジタル化の進展に伴いさまざまなパラダイムシフトが起きている。日立製作所は、ここに掲げる11分野のシステム開発を先行的に進め、企業のみならず、皆さま1人1人がこれに参加することで、社会課題の解決と経済発展を同時に実現することを目指している」(東原氏)

11分野のシステム開発

 その原動力は、「オープンイノベーション」と「デジタル技術で裏打ちされたデータの利活用」にあると東原氏。ビッグデータを活用し、課題を見える化し、解決策を構築、新たな価値創出につなげていくという。

キーワードは「共創」と「コネクト」

 さらに「新たな価値を創出していく際に皆さまと共有したい日立製作所の思い、キーワード」として東原氏は「共創(Collaborative Creation)と「つなぐ(Connect)」を挙げた。

「共創」を実現するエスノグラフィー調査とデジタルシミュレーションツール

 「共創」は、顧客の課題やビジョンを共有し、見える化、ビジネスモデルをデザインし、検証/シミュレーションを通じて具体化していくプロセスのことを指す。東原氏は「日立製作所では、この一連のプロセスを『NEXPERIENCE』というフレームワークとして体系化し、お客さまと共に活用している」と述べ、その具体的な手法である、「エスノグラフィー調査」の取り組みを紹介した。

事業価値を見えるか、検証

 「エスノグラフィー調査」はビジネスやサービスの現場で、実際の行動をつぶさに観察して、隠れたニーズや本質的な課題を明らかにする手法だ。

 「顧客と日立製作所のコンサルタント、デザイナー、エンジニアなどの異なる分野の専門家を交えたワークショップを通じて課題を共有し、ビジョンを定めた上で解決策としてのビジネスモデルやサービスを考えていく」(東原氏)

 エスノグラフィー調査は現場の本質的な課題を把握するために、徹底した観察を行い、潜在的な課題やニーズを深く理解する手法として2003年から導入されている。エネルギーや鉄道など、大規模な社会インフラの現場、製造業の現場、駅、街づくりなどあらゆるフィールドを対象としており、既に実績を積んでいる。

 またエスノグラフィー調査では、現場の作業員と同じ服装をしたリサーチャーやデザイナーが朝から晩まで行動を共にし、現場のチームの一員として信頼関係を築き上げ、作業を成立させているメンタリティーまで把握するようにしている。この手法は、「企業の調査やアンケートでは得られない本質的な知見を現場から抽出する手法として、世界中で活用している」という。

エスノグラフィー調査

 課題やビジョンを共有し、ビジネスモデルを構築した後は、それがしっかりと機能し、適切なリターンが得られるモデルかどうか、事前の効果検証が必要となる。これをサイバー空間上で行うのがデジタルシミュレーションツールだ。「投資コスト、投資対コストのKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)や事業価値を日立製作所のシミュレーション技術により見える化し、迅速な経営判断につなげる」というものだ。

 このデジタルシミュレーションツールはエネルギー、ロジスティクス、駅の構内、病院経営などさまざまな分野で活用されている。講演では駅構内での人の流れを解析し混雑緩和につなげた駅構内ソリューションが動画で紹介された。カメラの視角となる部分についてもセンサーと活用した可視化ソリューションの導入により、駅全体の人の流れを推定。駅構内で起きている問題を把握し、その解説策を模索し、混雑緩和につなげるというものだ。

駅構内ソリューションの例:人流解析で混雑緩和を見える化

「つなぐ」を実現するIoTプラットフォーム「Lumada」

 次に東原氏は2つ目のキーワード「つなぐ」について解説した。デジタル化が進展する中で、「共創」のプロセスを迅速に回していくためには、多くのステークホルダーがより多くのデータやアイデアを持ち寄ることのできる、オープンで、安全なプラットフォームが欠かせない。そこで日立製作所は、IoT(Internet of Things)プラットフォーム「Lumada」を立ち上げ、2016年5月からサービスを開始した。Lumadaは顧客との課題共有や分析、見える化、ビジネスモデルデザイン、現象のシミュレーション、サービスの提供に至るまで一貫した共創を可能にするプラットフォームだ。

IoTプラットフォーム「Lumada」

 また、「Lumadaは顧客のデータ」に光を当てると言う東原氏は、その特徴として(1)オープンアーキテクチャ、(2)アダプタブル:業種を超えてさまざま分野とつながること、(3)高い信頼性――の3つを挙げた。

 「将来的に皆さまにLumadaのプラットフォームに参加していただき、資材調査、財務、人事、コミュニケーションなど企業活動に不可欠なオペレーションを含めたデジタルソリューションとして利用できる形に発展させていきたい」(東原氏)

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