「Any Developer, Any App, Any Platform」 ―― Visual Studio 2017が目指す世界とは?特集:Visual Studio 2017の全貌を探る(4/5 ページ)

» 2017年03月24日 05時00分 公開
[山本康彦BluewaterSoft/Microsoft MVP for Windows Development]

3. クラウド開発

 WebアプリやWebサービスの開発では、ASP.NET Coreが標準でサポートされた(次の画像)。.NET CoreはWindowsだけでなく、macOS(OS X)Linuxでも動作する。「ASP.NETはWindows ServerのIISで動かすもの」という話は過去のものとなった。また、Dockerコンテナもサポートされている。

.NET Coreを解説している記事


プロジェクトを作るときのダイアログ。プロジェクトテンプレートの分類に[Cloud]がある(赤丸)
上のダイアログで[ASP.NET Core Web アプリケーション (.NET Core)]を選ぶと、この画面になる ASP.NET Core 1.1
上: プロジェクトを作るときのダイアログ。プロジェクトテンプレートの分類に[Cloud]がある(赤丸)。テンプレート8個の半分は「Azure」で始まっている(一番下の「Service Fabric」というのもAzureだ)。旧来のWeb Formsを使ったASP.NETは[ASP.NET Web アプリケーション (.NET Framework)]プロジェクトテンプレートだけでサポートされている(ASP.NET Coreではサポートされない)。なお、この画像では対象フレームワークに[.NET Framework 4.7]と表示されているが、これはプレビュー版の.NET Frameworkをインストールしてあるためだ(Windows 10 SDK Previewに含まれている)。
下: 上のダイアログで[ASP.NET Core Web アプリケーション (.NET Core)]を選ぶと、この画面になる。RESTfulなサービスと、ASP.NET MVCによるWebアプリだけのシンプルな選択肢になっている。認証にはWindows認証だけでなく、Azure Active Directoryの認証も使える。左下にDockerサポートのチェックボックスも見える。
なお現在のところ、ASP.NET Coreのプロジェクトテンプレートが用意されているのはC#だけのようだ。

 また、上の画像に見えるように「Azure クラウド サービス」や「Azure Mobile App」といったAzure上で稼働させるサービスを作るプロジェクトテンプレートも充実している(ASP.NET CoreもAzure上で動作する)。

 Azure自体もどんどん進化している。上述のDockerコンテナなどが使えるのはもちろんだ。Linuxだって使えるし、データベースもSQL Serverだけでなく今やOracleMySQLなども利用できる(次の画像)。もはやインターネット上のサーバは、どうしても自前で管理運営したいというのでもない限り、Azureで全て事足りることだろう。また、Azureは20,500円(契約内容にもよるが、Visual Studioサブスクリプション契約者は最大でプラス186,000円/年)相当までの利用なら無償で使えることも覚えておきたい(有償でなければ利用できない機能もある)。

アプリケーションコンテナの新規作成画面
データベースの新規作成画面 Azureの新規作成画面(Edge)
上: アプリケーションコンテナの新規作成画面。Azure Container Service、Dockerなど、さまざまなコンテナサービスがサポートされている。
下: データベースの新規作成画面。主要なもの(一番左の列)にはSQL Serverがメインに置かれているが、全てを表示させてみるとOracleやMySQLなど実に豊富なデータベースが利用できるようになっている(一番右の列)。この画像は「MySQL」で絞り込んだ状態である。
なお、この画像は本稿執筆時点のものである(AzureのWebサイトは頻繁に更新される)。

 ちなみに、筆者のごく簡素なWebサイト(2016年3月にリニューアル)は、VS 2015とASP.NET Core 1.0で開発してAzure上で運用している。

4. ゲーム開発/MR開発

 VS 2017はゲーム開発エンジンとして、DirectXだけでなくUnityUnreal EngineCocos2Dもサポートしている。前バージョンでも利用できたが、VS 2017ではインストーラーから簡単に導入できるようになっている(次の画像)。

 これら3つの開発エンジンはいずれもクロスプラットフォーム対応で、iOSやAndroidなどのスマートフォン用ゲームも作成できる。UnityはC#で、Unreal EngineとCocos2DはC++で開発する。

VisualStudio.comのゲーム開発のサイト
Unity/Unreal Engine/Cocos2Dは、Visual Studio 2017のインストーラーから簡単に導入が可能(Enterpriseエディションの画面) Visual Studioが標準でサポートしているゲーム開発エンジン
上: VisualStudio.comのゲーム開発のサイト(Edgeで表示)。DirectXだけでなく、Unity/Unreal Engine/Cocos2Dも並んでいる。
下: Unity/Unreal Engine/Cocos2Dは、Visual Studio 2017のインストーラーから簡単に導入が可能(Enterpriseエディションの画面)。

 Unityは、HoloLens用のMR(Mixed Reality、複合現実)アプリ(「ホログラフィックアプリ」ともいう)の開発もサポートしている(次の画像)。ホログラフィックアプリの開発はDirectXだけでも不可能ではないというものの、現状はUnity一択という状況だ。

 また、VS 2017リリース直前の3月1日に発表された「Xbox Live Creators Program」が正式に開始されれば、一般の開発者でもXbox向けのゲームを出しやすくなることも覚えておこう。

ホログラフィックアプリ開発もサポートするUnity(Edge) ホログラフィックアプリ開発もサポートするUnity(Edge)
UnityのWebサイトより。

 この通り、VS 2017ではデスクトップアプリ開発に加えて、さまざまなOS上で動作するWebアプリ/クラウド開発や、さまざまなプラットフォームに向けたゲームアプリ、あるいはホログラフィックアプリの開発も可能となっている(このことには、.NET CoreやMonoといったフレームワーク/プラットフォームが大きく寄与している)。もちろん、Windowsデバイス向けのアプリ開発でも、開発者にとって役立つ機能が追加されている。次ページではこれを見てみよう。

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