Apache、そしてHadoopを作ったDoug Cutting(ダグ・カッティング)氏が常に目指すゴールとは――。 ※「お子さんがエンジニアになりたいと言ったら、どうアドバイスしますか?」〜カッティング氏の動画付き
アップルやディズニーなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広が、グローバルを股に掛けたキャリアを築いてきたIT業界の先輩にお話を伺うインタビューシリーズ。第15回は「Hadoopの生みの親」Doug Cutting(ダグ・カッティング)氏に登場いただく。
Lucene、Nutch、Apache、そしてHadoopを作った男が考える、エンジニアの喜びとは――。
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) 最近のHadoopの活用事例を紹介してください。
Doug Cutting(ダグ・カッティング:以降、カッティング氏) 例えば、敗血症の患者を特定する分析用ツールを、米国の電子カルテ企業に提供しています。世界中の病院でHadoopが利用されており、既に何万人もの命を救いました。このようなプロジェクトに関われることを心から光栄に思いますね。
阿部川 テクノロジーが私たちの生活の質を向上させていく好例ですね。
カッティング氏 ええ。あるリサーチャーによると、これからはがん患者1人1人の症状に合わせた治療を効果的にできるようになるのではないか、とのことです。
多くの患者の症状、腫瘍の状態、突然変異の状態がビッグデータとして蓄積されていけば、それが可能になります。まさかデータシステムががん治療に役立つとは考えていませんでしたが、今では非常に有効な手段の1つになりました。
阿部川 「全てにデータあり」ですね。全てのものはスキャンし、データとして情報化が可能である。そこに世の中をより良くしていくためのヒントが隠されているように思います。
カッティング氏 データプロセッサーやセンサーなどの機能はどんどん進化し、しかも安価になったので、多くのデータの作成や集積が可能になりました。そのおかげで私たちは、常に何かしら新しいことを発見したり作り出したりできる。とても良い循環になっていると思います。
阿部川 ところでダグさんは、スタンフォード大学では言語学をご専攻されたとか。
カッティング氏 はい。私は、ワインで有名なカリフォルニア州ナパ郡の小さな町で育ちました。1980年代に地元のカレッジに通い、そこで初めてコンピュータに出会いました。
プログラミングができるようになり、もっとコンピュータのことを学びたいと思ったのですが、当時スタンフォード大学にはコンピュータサイエンスの学部がなく、代わりに哲学科や言語学科のコースの中に、コンピュータサイエンスを学ぶ講座がありました。応用言語学や計算言語学という分野で、言語の論理性や法則性などを研究する必要があるためです。
阿部川 プログラミングも言語の分野の1つではありますね(笑)。
カッティング氏 その通りです。その後大学院で、言語学に関連するコンピュータシステムの構築を専攻しました。音声認識やテキストの検索や細分化、クラスタ化などですね。
どのようにすれば言葉や単語をテキストの中から探し出せるのか、そのための標準的な方法にはどのようなものがあるか、あるいは言語の形態論などについて研究しました。言語学はどちらかというと数学に近く、コンピュータを用いて研究することは理にかなっていました。
阿部川 フィールドは言語学ですが、既にエンジニアだったわけですね。
カッティング氏 言語学の研究は楽しかったですよ、それを職業にしようとは思っていませんでしたが。
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