阿部川 その後、2009年にCloudera(クラウデラ)に移られたわけですね。オープンソースの普及以外に、大切にしていることはありますか?
カッティング氏 多くの人々に実際に使ってもらえるソフトウェアを開発することです。ゼロックスではさまざまな特許を申請しましたが、実は誰もそのソフトウェアを使わなかったということもありました。とても残念で、アップルに移った理由もそこにあります。
アップルではユーザーが使うシステムを開発しましたし、エキサイトでもユーザーが検索エンジンを使っていることが分かりましたので、とても興奮しましたし、「開発して良かった」と思いました。オープンソースもユーザーに使ってもらえるので、「開発してよかった」という実感があります。「実際に使ってもらう」ことは、常に私のゴールです。
多くの人々に使ってもらうことで新しい価値を提供できるようなソフトウェアを開発することが、私の情熱の源です。ですからこうしてHadoopを開発できましたし、多くの人々に使われるようになったのだと思います。「開発のための開発」ではなく、本当に人々が使ってくれるソフトウェアの開発を行い、それによって新しい価値を提供することが大切だと思っています。
阿部川 最後に、日本のエンジニアにアドバイスをいただけますか?
カッティング氏 ソフトウェア開発にとって、オープンソースは非常にすばらしい環境です。多くの人と交流でき、そこで開発された技術も長く利用されるケースが多いので、やりがいも多いと思います。
私はオープンソースを軸にして、多くの人が同時にソフトウェア開発に関わっていくことを強く勧めます。開発の主要言語は英語ですから、日本ではその点が重荷になることは承知していますが、英語もプログラム言語も言ってみれば単なる言語です(笑)。
多くの日本のエンジニアがオープンソースプロジェクトに参加していることに、とても感動しましたし、励まされもしました。ぜひ、やり続けてください。オープンソースが、どんな技術よりも常に優れているとはいいませんが、少なくともオープンソースの環境での開発に携わっていれば、学べることはたくさんあるし、多くの利点も享受できると思いますよ。
背がとても高く、スマートで、身のこなしもしなやかだ。颯爽(さっそう)とインタビューにあらわれた「Hadoopの生みの親」は、しかし人懐こい笑顔で早口に話し出した。
コンピュータが、なかんずくプログラミングが何よりも好きなこと。そして出来上がったソフトウェアは、多くの人々に使ってもらってこそ価値を発揮するものであること。この2つが彼の本質であり、その精度をひたすら研ぎ澄ましてきた道のりが、今の彼を作り上げた。
「コードを書くことは、どんどん少なくなってきているけどね」――そう言ったとき、いかにも残念という表情で頭を掻いた。「エンジニアが世の中に貢献しないといけないことはやまほどある。そしていまがその1番のとき」と目を輝かせて話してくれたとき、大組織のチーフアーキテクトは、夢を追う若きプログラマーに戻った。
アイティメディア グローバルビジネス担当シニアヴァイスプレジデント兼エグゼクティブプロデューサー、ライター、リポーター
コンサルタントを経て、アップル、ディズニーなどでマーケティングの要職を歴任。大学在学時より通訳、翻訳なども行い、CNNニュースキャスターを2年間務めた。現在は英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座、講演を行うほか、作家として執筆、翻訳も行っている。
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