システム開発に先立ってユーザーがベンダーに提出する「提案依頼書(RFP)」。ここであいまいな表現やヌケがあると、後々トラブルになることもあります。連載「エンジニアのためのビジネス文書作成術」、第3回目は「RFP」の書き方と、Wordの「スタイル」を活用して「RFP」を見やすくするコツを伝授します。
連載「エンジニアのためのビジネス文書作成術」は、書籍「外資系コンサルのビジネス文書作成術」(吉澤準特著 東洋経済新報社)を基に、出版社の許可を得て、筆者自身が@IT読者向けに再構成したものです。画像はWindows 7 + Word 2013上のものです。機能はWord 2013、2016のいずれでも使用できます
連載「エンジニアのためのビジネス文書作成術」、第1回は「議事録」の書き方を、第2回は「要件定義書」の書き方を学びました。第3回は「提案依頼書(RFP)」をWordで作ります。
提案依頼書(RFP)とは、発注者(ユーザー)が、自分たちが提案してほしいことを具体的な「内容(要件)」にまとめた文書です。受注者(ベンダー)が「提案書」を作成するためのインプット(材料)になります。
RFPはシステムの「実装内容」だけでなく、自社とベンダーの「責任関係」を決める文書です。「役割分担」は、そのまま契約内容に跳ね返ります。曖昧な表現や適切ではない割り振りは厳禁です。
以下は、RFPが曖昧だったために、発注者の意図と違うものが作られた例です。
提案依頼内容 | ⇒ | ベンダーの考えたもの | ⇒ | その結果 |
---|---|---|---|---|
アジャイル開発で多段階リリースすること by開発部長 | ⇒ | アジャイルだから設計書を作らなくてもよい | ⇒ | メンテナンス大混乱 |
稼働後障害を起こさないシステムを構築すること by金融機関CEO | ⇒ | バグゼロにするからテスト工数「4万人月」 | ⇒ | プロジェクトコスト青天井 |
敵モビルスーツの攻撃を防ぎつつ反撃できる武器を開発すること byオデッサ基地司令 | ⇒ | 防御中に攻撃するから盾の中にミサイルを搭載 | ⇒ | 相手の攻撃で盾内のミサイルが誘爆 |
こうした思い違いを防ぐには、ユーザー、ベンダー双方が「委託範囲」をよく理解しなければなりません。「何がベンダーからユーザーへ引き継がれ」「どういった体制・スケジュールの下で行われるか」も明確にする必要があります。「提案ルール」も一緒に提示すれば、ユーザーの期待した形でベンダーは提案できます。
RFPは次のような章構成で作成しましょう。
サンプルとして、ITコーディネーター協会が発行する「RFPのドキュメント見本(開発編/運用保守編)」を参照すると良いでしょう。
ベンダーはこのフォーマットに慣れ親しんでいますので、似たような形でRFPを示せばベンダーの提案負荷を減らせます。また、「検討漏れ」を未然に防ぐことも期待できます。
次ページから、各章の内容を見ていきます。
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