ミスには、引き起こした「直接原因」とは別に、その原因を招くに至った「真因」というものが存在します。
先述のミス「ケーキの発注数を1桁間違えた」の直接原因は、「桁入力を間違えた」です。しかしその背景には、「発注数をチェックする人がいなかった」という事情があります。
その場合、同じミスを繰り返さないために、「今後は必ず2人以上で発注数をチェックするという仕組みを設ける」必要があるでしょう。「誤発注した人は日ごろから業務ミスが多かった」のならば、「発注作業は別の人に担当させる」と良いかもしれません。
目に見える原因だけでは、適切な「再発防止策」を示すことは難しいでしょう。ミス発生を防ぐための「原因分析」は少なくとも二段構えで整理すべきです。
このアプローチは「ルートコーズ分析(真因分析)」と呼ばれる、「根本原因」を突き止めるオーソドックスな手段です。
「図2」のように、表面上の「原因」、その裏に潜む「真因」、真因に対する「再発防止策」を整理すると、「二度と同じ過ちを繰り返さない」という「強い反省」を相手に示せます。
謝罪報告書のコアコンテンツは「事象、経緯」と「原因、再発防止策」です。しかし、これだけではぶっきらぼうな印象を謝罪相手に与えます。
最初に述べた「真摯な態度」は、謝罪の成功率を高める最大のポイントです。謝罪報告書の「冒頭」に、真摯な態度を「文章」で示しましょう。
今までのポイントをまとめた謝罪文全文のサンプルを載せます。下の画像をクリックするとダウンロードできます。
この文書に含まれるスタイルは、前回までに取り上げた設定方法に加えて、新たに「表スタイル」を用いています。
標準的な表スタイルは見栄えが悪いため、外枠線を無くし、表内の仕切り線を灰色かつ点線にし、表の中身に注意が集まるようにアレンジしました。また、同じ内容が当てはまるセルを結合させて、セルの範囲から意味が読み取れるようにしました。「図4」は設定方法です。
連載第1回から4回まで、エンジニアが苦手とするWordを使って文章を作成する場面を取り上げました。これまでWordと悪戦苦闘してきた方も、存在自体から目を背けてきた方も、Wordの活用余地に気付いてもらえたのではないかと思います。
システム開発に携わる方は要件定義書と提案依頼書の作り方を、それ以外の人も議事録と謝罪報告書の作り方を参考に、是非ビジネス文書作成にチャレンジしてください。
連載「エンジニアのためのビジネス文書作成術」、今後はPowerPointやExcelでの文書作成法もお伝えします。お楽しみに!
吉澤準特著 東洋経済新報社 1944円(税込み)
大手コンサルティングファームでドキュメンテーションスキルを指導する著者が、ロジックの組み立てと効果的な表現をWord上で思い通りに実現するテクニックを解説する。
※書籍では本記事の内容を図解しています。是非ご覧ください。
吉澤準特
ITコンサルタント
外資系コンサルティングファーム勤務。ビジネスからシステムまで幅広くコンサルティングを行う。専門分野はシステム運用改善をはじめとするインフラ領域だが、クライアントとの折衝経験も多く、ファシリテーションやコーチングにも造詣が深い。
著書『資料作成の基本』『フレームワーク使いこなしブック』(以上、日本能率協会マネジメントセンター)『外資系コンサルの仕事を片づける技術』(ダイヤモンド社)など。
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