馬場さんはそれまでプログラミングを学んだことがなく、せいぜい研究の一環で解析ツールを利用する程度だった。しかし大学院1年の前期に英国留学し、初めてFacebookに触れ、Webサービスというものに興味を持ったという。
「『ITもいいな』と思いました」
DeNAを選んだのは、未経験からのエンジニア育成がしっかりしていたこと、そしてゲームに興味を持ったことだった。普段からあまりゲームをしないという馬場さんは「何でこんなに大勢の人が遊ぶのだろう」と、ゲームのビジネス面に興味が湧いたのだという。
DeNAに入社し、4カ月間の新入社員研修でプログラミングを学んだ。
「最初の配属は、モバゲーのゲームタイトルを開発、運用する部署でした」
『夕暮れのバルキリーズ』『戦国ロワイヤル』などの開発・運用を担当。『戦国ロワイヤル』ではリードエンジニアやプロジェクトマネジャーも務めた。コードをバリバリ書いていくのが楽しくなってきた馬場さんは「工数の30〜40%はコーディング時間として死守」という信念を持つようになった。
そうして2年ほどがたち、馬場さんに転機が訪れた。
DeNAは数年前から、ゲームに次ぐ事業の柱として、中長期的な視点で市場に大きなインパクトを与える事業にも力を入れていた。2014年にスタートした遺伝子検査サービス『MYCODE』などのヘルスケア事業も、そうした取り組みの一環として進出したのだった。
日ごろから同期のメンバーと「何か面白いことをやりたいよね」と話していた馬場さんは、「さらにもう1つ何か新しい試みを」と考え、オートモーティブ事業の担当役員に新規事業案を提案した。それが『Anyca』だった。
アイデアのきっかけとなったのは、自らのニーズ。
「入社2年目にクルマを購入したのですが、維持費が高いのが悩みでした。何か維持費を軽減させる仕組みはないだろうかと考えました」と、馬場さんは語る。
それに、「自分がもっといろいろなクルマに乗ってみたい」というのも理由の1つだったと教えてくれた。
『Anyca』に至るまでには、たくさんの企画候補があったそうだ。「生活にタッチポイントのあるもの」から「ニーズの芽」を探り、興味を持てるか持てないかで絞り込んでいく。そのやり方は、就活時に業界や会社を選んだときと似ていた。
そして『Anyca』の企画にGoサインが出され、馬場さんは同社CTOの川崎修平氏と共に開発を担当することになった。
川崎氏がメインサービスの部分を設計、開発し、馬場さんは外部連携システムおよびサーバ全般、さらには、内部で開発しない外部システム(保険、決済、SMSなど)についての、会社調査、アポ取り、交渉、契約、設計、開発、リリースの全行程を担当した。
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