最初からターゲットを決めてまい進するのではなく、興味を持ったものは全て検討対象としてみる。開発以外の業務もあえてやってみる。ある意味「非論理的」な手法は、自らの可能性を狭めない生き方なのかもしれない。
ゆくゆくはザッカーバーグのように新たなネットサービスを企画、開発、運営してみたいと夢見ている人は多い。
そのために、今からプログラムをゴリゴリ書き、Webサービス開発の知識を磨いて……、と考えている人もいるだろう。だが、待ってほしい。それは本当に正しいアプローチなのだろうか?
今回、お話を伺う馬場光さんは、「DeNA」入社3年目に『Anyca(エニカ)』というサービスのアイデアを出し、開発に参画。現在は同サービスのプロジェクトリーダーを務めているキラキラな29歳だ。
『Anyca』は、DeNAが2015年9月に提供を開始したCtoCのカーシェアリングサービスだ。クルマの所有者(オーナー)と、クルマを使いたい利用者(ドライバー)とを結び付けるだけでなく、東京海上日動保険の「1日自動車保険」との連携など、新しい試みも行われている。
レンタカーショップではなかなか借りられないようなこだわりの車も多数登録されており、いろいろなクルマに乗れる点や、シェア料金がオーナー次第で決められるため格安で利用できるケースもある点などが好評で、着実にユーザー数を増やし続けている注目のサービスだ。
しかし、DeNA入社時点における馬場さんのプログラミングスキルは、ほぼゼロ。それどころか就職直前まで、業界をITに絞り込んでさえいなかったという。
馬場さんが『Anyca』を企画したのは、新人研修を終え、2つほどプロジェクトをこなしたばかりの、まだ駆け出しのエンジニアだった時期。プログラミング未経験者が、いかにして入社数年でプロジェクトリーダーにたどり着いたのか、その道程を聞いてみた。
子どものころから飛行機のパイロットになりたかったという馬場さんが大学の進学先に選んだのは、なぜか機械工学科だった。
理系を選んだのは、高校が理系だったことも影響しているというが、パイロットと機械工学科というのが結び付かない。「飛行機を設計、製造するならともかく、操縦するのに、なぜ?」と思って尋ねたら、答えは意外なものだった。
「たまたま目にした雑誌に出ていた航空会社のパイロットたちが、早稲田大学機械工学科卒が多かったので……。もっとよく調べていれば、他の大学や学部を選んでいたかもしれませんね」と、馬場さんは恥ずかしそうに話してくれた。
大学では熱力学や流体力学などを学んだという。航空機メーカーに就職しそうな専攻だが、それでもやはり目標はパイロット。大学3年時に、パイロットになるための試験を受けた。
しかし、結果として「自分はパイロットになれないということが分かった」という。パイロットになるには視力や聴力などに一定の基準が設けられているが、それを満たしていなかったのだ。
失意の馬場さんは就職を回避し、大学院に進学することに。大学院では制御工学を専攻した。コージェネレーションシステムなど、燃料電池における発電効率を最大化するための機構を研究したという。
「当時エネファームなどが注目を浴びていた時期でもありました。そのままなら、ガス会社などに就職していたかもしれませんね(笑)」
それまでパイロット一筋だったのが、一気に視野が広がったためだろうか。「いろいろなことをやってみたいと考えていた」と当時を振り返る馬場さん。就活では、商社、コンサルティングファーム、ガス会社、メーカー――ジャンルを問わず「気になる」企業や業界の説明会に行き、「合いそう」だと思う企業にエントリーしたという。
そんな馬場さんが最終的に就職先として選んだのが、DeNAだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.