Windows 10からの挑戦状、EducationエディションでWindows To Goワークスペースを作成せよ!山市良のうぃんどうず日記(111)(1/2 ページ)

Windows 10 Educationは、企業向けの最上位エディションであるWindows 10 Enterpriseをベースにした教育機関向けのエディションです。企業や一般ユーザーが利用する機会はなく、商用エディションに比べて公開されている情報も少ないため、その存在はベールに包まれている感がありますが、実際はそれほど特別なものではありません。しかし、実際に触れてみたところ、1つの挑戦状を受け取ることになりました。

» 2017年11月15日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]
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山市良のうぃんどうず日記

ちょっと古い話ですが、Creators UpdateでWindows 10 Educationの「Cortana」が復活

 世の中、Windows 10 Fall Creators Updateの話が中心になっていると思いますが、今回はWindows 10 Creators Updateとそれ以前の話です。

 「Windows 10 Education」は、企業向けの最上位エディションであるWindows 10 Enterpriseをベースに構築された、Windows 10の教育機関向けエディションです。Windows 10 Educationが備える機能は、Windows 10 Enterpriseと同等です。ただし、教育機関向けに既定の設定が調整されています。さらに、Windows 10 バージョン1607(Anniversary Update)からは、Windows 10 Proをベースにした「Windows 10 Pro Education」のOEM提供も始まりました。

 “機能的には同等”とはいいましたが、実はWindows 10 バージョン1607では、音声アシスタントの「Cortana(コルタナ)」が、EducationおよびPro Educationから削除されました。Windows 10 EducationおよびPro Educationでは、Cortanaが既定で「無効化」されているわけではなく、プログラムそのものが削除されています。この件については以下のMicrosoftのサポート技術情報に記載されていますが、削除された理由については明確に説明されていません。

 ただし、Cortanaの削除はWindows 10バージョン 1607限りだったようで、Windows 10 バージョン1703(Creators Update)では復活しています。この点については、以下のドキュメントに記載されています。復活した理由は説明されていませんが、とにかく復活しました。

 Windows 10 バージョン1607からは、64ビット版のWindows 10 ProおよびEnterpriseにHyper-Vコンテナをサポートする「コンテナー」機能が追加されましたが、筆者が確認したところ、Windows 10 Educationには搭載されていませんでした。この「コンテナー」機能もまた、Windows 10 バージョン1703のEducationで利用可能になっていました。おそらく、Windows 10 Pro Educationでも同様だと思います。

 教育機関向けに既定の設定が調整されているものの、最新のWindows 10ではEnterpriseとEducation、ProとPro Educationに機能差はなくなったようです(画面1)。

画面1 画面1 Windows 10 バージョン1607からはCortana(およびコンテナー)は削除されたが、Windows 10 バージョン1703で復活。教育機関向けに既定の設定が調整されていることを除き、Enterpriseと機能的には同じになったらしい

EducationでWindows To Goワークスペースが作成できない?

 Windows 10 バージョン1607の例外を除き、Windows 10 EnterpriseとWindows 10 Educationに機能差はありません、と断言したかったのですが、1つ大きな機能差を見つけてしまいました。Windows 10 Educationで「Windows To Goワークスペース」をセットアップしようとしたところ、「Windows To Goワークスペースの作成」ツール(pwcreator.exe)が、Windows 10 Educationのイメージを受け付けてくれませんでした(画面2)。

画面2 画面2 Windows To Goは、Windows 10 Educationでもサポートされるはず。しかし、作成ツールにWindows 10 Educationのイメージの使用を拒否されてしまった

 「Windows To Go」は、Windows 8 Enterpriseで初めてサポートされたEnterpriseエディションの機能であり、USBリムーバブルドライブに準備したWindows To Goワークスペースで物理PCを起動し、Windows 10のデスクトップ環境を利用可能にするものです(写真1)。

写真1 写真1 USBリムーバブルドライブ内のWindows To Goワークスペースを使用して、PCを起動したところ。PCのローカルディスクは安全のためマウントされない

 Windows To Goは、Windows 10 EnterpriseおよびWindows 10 Educationでサポートされます。正確には「ソフトウェアアシュアランス(SA)」とも呼ばれる、Windows 10 Enterprise E3(旧称、Windows 10 Enterprise with SA)、Windows 10 Enterprise E5、Windows 10 Education E3(旧称、Windows 10 Education)、Windows 10 Education E5のサブスクリプションライセンスに含まれる“SA特典の権利”の1つです。これらのライセンス、SA特典、Windows To Goの使用権については、Microsoftの最新の製品条項(PT)で確認してください。

 これまで、「Windows To Goワークスペースの作成」ツールは、Windows 8以降のWindows To Goをサポートするエディションにのみ提供されてきました。この作成ツールは、コントロールパネルの「Windows To Go」から、あるいは「pwcreator.exe」を実行して開始することができます。

 Windows 10 バージョン1703からは、Windows 10 Proにも「Windows To Goワークスペースの作成」ツールが提供されています。ただし、作成ツールが提供されるだけで、Windows To Goを利用するにはWindows To Goをサポートするエディションのインストールメディア、またはカスタムイメージと、SA特権を含むライセンスが必要になります(画面3)。あるいは、Windows To Goワークスペースを利用して、Windows 10 Enterprise評価版(90日)を評価してみるのに、この作成ツールを利用することができます。

画面3 画面3 Windows 10 バージョン1703からは、Windows 10 Proにも作成ツールが搭載されたが、Windows To Goをサポートするようになったわけではない

カスタムイメージでも作成に失敗……

 以下の「組織でのWindows To Goの展開」ドキュメントでは、「Windows To Goワークスペースの作成」ツールに“sysprepを使って一般化された有効なWindows 10 EnterpriseまたはWindows 10 Educationイメージ”を指定することで、作成できると説明されています。

 このドキュメントはカスタムイメージ(.wim)を使用する前提で記述されていますが、Windows 10 EnterpriseまたはWindows 10 Educationのインストールメディアに収録されている「Sources\Install.wim」ファイルを使用するのが最も簡単な方法です。しかし、実際にやってみると、Windows 10 Educationイメージを受け付けてくれません。そこで、カスタムイメージで試してみることにしました。

 カスタムイメージの作成方法は幾つかあります。Hyper-Vの仮想マシン環境を利用できるのであれば、仮想マシンにWindows 10 Educationを新規インストールし、それをSysprepで一般化した後、VHD(またはVHDX)の内容をキャプチャーしてイメージ化する方法が簡単です。筆者は、次の手順でカスタムイメージを作成しました。

カスタムイメージの作成手順

(1)Hyper-V仮想マシンにWindows 10 Educationを新規インストールします。Microsoftアカウントではなく、ローカルアカウントを作成してインストールを完了し、Windows Updateを実行して最新の状態に更新します。

(2)コマンドプロンプトを管理者として開き、次のコマンドラインを実行して、Windowsインストールを一般化します。

C:\Windows\System32\Sysprep\Sysprep.exe /oobe /generalize /shutdown


(3)仮想マシンが停止したら、仮想マシンのVHD(またはVHDX)をエクスプローラーでダブルクリックします。

(4)VHD(またはVHDX)が自動マウントされるので、Windowsインストール(Windowsディレクトリ)を含むドライブのドライブ文字を確認します。

(5)コマンドプロンプトを管理者として開き、以下のように「DISM」コマンドを実行してWindowsインストールをキャプチャーし、カスタムイメージ(.wim)を作成します。

DISM /Capture-Image /ImageFile:D:\Work\win10edu1703customforwtg.wim /CaptureDir:K:\ /Name:"My Windows 10 Edu 1703 custom image"


 この例では、K:ドライブにマウントされたWindowsインストールを、「D:\Work\win10edu1703customforwtg.wim」に保存しています。

 なお、カスタムイメージのキャプチャーにはDISMコマンドの他、Windows PowerShellの「New-WindowsImage」コマンドレットや「ImageX」ツールも使用できます。DISMとNew-WindowsImageは、Windows標準のコマンド/コマンドレットです。ImageXは「Windowsアセスメント&デプロイメントキット(Windows ADK)」の展開ツール(Deployment Tools)に含まれています。

 上記の作成手順で準備したWindows 10 Educationのカスタムイメージを「Windows To Goワークスペースの作成」ツールに指定しました。しかし、インストールメディアの「Source\Install.wim」を指定したときと状況は変わりません(画面4)。

画面4 画面4 カスタムイメージを指定しても受け付けてくれなかった。イメージのエディション情報をチェックしているらしい

 実は、この結果は予期していました。「Windows To Goワークスペースの作成」ツールは、“イメージに含まれるエディション情報をチェックしている”と予想していたからです。イメージのエディション情報は、次のDISMコマンドの「エディション」の値、またはWindows PowerShellのGet-WindowsImageコマンドレットの「EditionId」の値で確認できます。

DISM /Get-WIMInfo /ImageFile: /Index:1


Get-WindowsImage -ImagePath -Index 1|Select EditionId


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