IDC、2018年のブロックチェーン支出、前年比2倍以上の21億ドルになると予測2021年まで年平均81.2%のペースで急成長

IDCの予測によると、ブロックチェーン市場は2018年に前年比2倍以上の21億ドルとなり、2021年には92億ドルに拡大する見通しだ。

» 2018年01月26日 08時00分 公開
[@IT]

 IDCは2018年1月24日(米国時間)、世界のブロックチェーンソリューションへの支出動向に関する最新の予測を発表した。それによると、2018年は21億ドルに達し、2017年の9億4500万ドルから2倍以上に増える見通しだ。またIDCは、2016〜2021年にブロックチェーン市場が年平均81.2%のペースで急成長し、2021年の市場規模が92億ドルになると予想している。

 IDCはブロックチェーンを、「取引や記録のデジタル分散台帳」と定義し、次のように説明している。

 「この台帳は、取引や記録の情報やデータを保存するもので、ピアツーピアネットワーク上の複数の参加者間に存在する。台帳を保存する単一の中央リポジトリはない。分散台帳技術(Distributed Ledgers Technology:DLT)では、安全なデジタルまたは暗号署名を使って、既存の取引チェーンに新しい取引を追加できる」

 IDCは、ブロックチェーンやDLTを利用する各種暗号通貨(ビットコインなど)に関連する支出は、この調査のブロックチェーン支出に含まないとしている。

 地域別にブロックチェーン市場を見ると、予測期間の2016〜2021年を通じて、米国のブロックチェーン支出が最も多く、世界全体の40%以上を占める見通しだ。以下、西欧、中国、アジア太平洋(日本と中国を除く)が続いている。ブロックチェーンの支出動向予測でカバーされる9つの地域は、いずれも2016〜2021年に急激に支出が伸びると予想されており、中でも予想年平均成長率が高いのは、中南米(152.5%)と日本(127.3%)だ。

地域別で見るブロックチェーン支出の状況(出典:IDC)

 業種別に見ると、2018年に多額のブロックチェーン支出を行うと予想されている業種の上位は、「金融」(7億5400万ドル)、「流通およびサービス」(5億1000万ドル)、「製造と資源」(4億4800万ドル)だ。米国でブロックチェーン支出が最も多いと予想される業種は流通およびサービスで、西欧、中国、アジア太平洋(日本と中国を除く)では金融サービスだ。予想年平均成長率が高い業種は、「専門サービス」(85.8%)、「組み立て製造」(84.3%)、「資源」(83.9%)となっている。

 また、2018年のブロックチェーン支出が多いと予想されているユースケースの上位は、「国際支払いと決済」(2億4200万ドル)、「ロット/系統履歴調査」(2億200万ドル)、「貿易金融および取引/取引後決済」(1億9900万ドル)。この3つは、2021年も最上位を占める見通しだ。

 技術的に見ると、予測期間を通じて、ブロックチェーン支出全体のうち、ITサービス支出とビジネスサービス支出の合計が75%程度を占めると予想されている。各サービスの割合は均等になるという。これらのサービス以外では、ブロックチェーンプラットフォームソフトウェアの割合が最も多い。このソフトウェアとセキュリティソフトウェアが、予想年平均成長率が最も高いカテゴリーとなっている。

 IDCのワールドワイドブロックチェーンストラテジー担当リサーチディレクター、ビル・ファーンリー氏は、ブロックチェーンの現状を「ブロックチェーンやDLTへの関心が急速に高まり、投資も急拡大している。企業が安全かつシーケンシャルで不変のブロックチェーンにデータを集約し、ビジネスや業務の変革を進めているからだ」と解説している。

 「多くのITベンダーやサービスプロバイダーが協力し、Enterprise Ethereum AllianceやHyperledger Projectといったコンソーシアムと連携して、さまざまなプロセスを改善するソリューションを開発している。これらのプロセスには、取引後の処理や、サプライチェーンにおける出荷の追跡、監査やコンプライアンスのための取引記録などが含まれる。また多くの規制当局や中央銀行が、ブロックチェーンやDLTについて肯定的なコメントをしており、これは金融サービスやヘルスケアなどの規制対象業種で需要拡大を後押しするだろう」(ファーンリー氏)

 また、IDCのカスタマーインサイト&アナリシス担当リサーチマネジャーを務めるステーシー・スーフー氏は、「企業は2017年に実験的な取り組みを行い、ブロックチェーンのメリットと課題を理解した。2018年は、企業がブロックチェーンの概念実証(Proof of Concept:PoC)プロジェクトから、本格的な導入へと大きく飛躍する年になるだろう」と予測する。

 「ブロックチェーンのイノベーションと統合をリードしている米国は、予測期間を通じてブロックチェーンに積極的に投資するだろう。特に活発に投資を行うのが、金融サービスと製造などの業種だ。その狙いは、既存業務の効率向上や、新しい収入源の創出、新市場の開拓だ。他の地域も、加速するイノベーションのペースについていくために、投資を増やし、ブロックチェーンプロジェクトを推進するだろう」(スーフー氏)

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