コミュニケーションロボット+クラウド型AIで、サービスを創ろう!羽ばたけ!ネットワークエンジニア(2)(2/2 ページ)

» 2018年03月26日 05時00分 公開
[松田次博情報化研究会主宰]
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コミュニケーションロボットの活用事例

 筆者が使っているPaPeRo iを例に、コミュニケーションロボットによるサービスの実際を紹介しよう。なお、以下のサービスで利用しているソフトウェアは筆者のプロジェクトのパートナーであるコンロッド(福岡市)の松山友一社長が開発したものである。

 図4にPaPeRo iの外観と基本仕様を示す。座布団に乗った据え置き型であり、動くのは頭だけである。うなずいたり、首を回したりできる。右目は撮影用のカメラ、左目は顔認識用のカメラだ。アプリケーションから使える数種類のセンサーや複数のボタン、表情を表すLEDランプを持っている。身長に対する頭部の比率は3分の1である。開発者によればこれは赤ちゃんと同じ比率で、見た人にかわいらしい印象を与えるのだという。簡易な音声認識や音声合成(テキスト読み上げ)機能がある。

図4 図4 PaPeRo iの外観と基本仕様

 図5はPaPeRo iの背面のカバーを外した写真である。内蔵拡張シャシーがあり、ここにRaspberry PiやArduinoなどのボードコンピュータを組み込んで使用できる。本体との接続には内部接続LANポートを使用する。現在、多くのサービスではRaspberry Pi上で動作するアプリを作成し、そのアプリから本体のAPIを使うという構成で作られている。本体だけでアプリを作成するより拡張性が高いためである。

図5 図5 PaPeRo iの内部

 このPaPeRo iを使った一人住まいの高齢者の見守りサービスが図6である。一人住まいのお年寄りを離れたところに住む家族が見守るのが第一の目的である。加えて家族とお年寄りのコミュニケーションを活性化したり、ロボットが声を掛けたりすることでお年寄りの孤独感をやわらげ、生活に楽しさを提供するのが第二の目的だ。

図6 図6 見守りサービスの全体像

 構成はPaPeRo iとSNS機能を持つ見守りサービスクラウド、PaPeRo iに話し掛けた音声を認識するクラウド型AIのGoogle Cloud Speech、PaPeRo i内蔵のRaspberry Pi、Raspberry PiのHDMIポートに接続したディスプレイだ。

 「見守り」と「コミュニケーション」「音声リクエスト」という3種類のサービスがある。見守りサービスは毎日、朝昼夕方の3回、お年寄りがPaPeRo iの前に来たときに働く。PaPeRo iがあいさつして、「写真撮っていい?」と問い掛ける。お年寄りが了承すると写真を撮ってクラウド(見守りサービス)に送る。そうでない場合は「忙しいみたいです」というメッセージを送る。家族はスマートフォンやPCでいつでも、送られた写真やメッセージを確認できる。見守りは家族である必要がない。ケアマネジャーやご近所の人など、見守りに協力する方を最大20人まで登録できる。

 コミュニケーションサービスは、高齢者と家族の間にコミュニケーションの活性化を図るメニューである。見守りサービスクラウドのSNS機能を使って、家族が撮った写真やビデオを送ったり、高齢者の音声メッセージを家族に送ったりできる。家族から写真やビデオがSNSで届くと、お年寄りがPaPeRo iの前に来たときに「ビデオが届いたよ」と声を掛ける。「ビデオを見せて」と言うとビデオが再生される。高齢者の音声メッセージもSNSで送られる。

 音声リクエストサービスは、高齢者が「明日の天気は?」だとか、「ニュースを教えて」と言うとPaPeRo iがインターネットから情報を取って答える機能である。

 この見守りサービスを使っている高齢者からは「家族とのコミュニケーションやロボットとのやりとりがいい気分転換になる」、家族からは「一人暮らしのお母さんの様子が見られて安心」といった声が寄せられている。コミュニケーションロボットの目的である価値のあるUXの提供という面で、ある程度成功しているようだ。

ネットワークエンジニアの役割

 このプロジェクトにおいて、ネットワークエンジニアである筆者が果たしている役割はプロジェクトマネジャーである。このサービスは複数の要素をネットワークでつなぎ、広い意味でのコミュニケーションを実現するものだ。ネットワークエンジニアがまとめ役をするのは自然なことである。

 連載第1回で解説した通り、これからのネットワークエンジニアは守備範囲を広げるべきだ。自分にスキルがないソフトウェアはそれが得意なパートナーに協働してもらえばよいだけのことだ。「ネットワークエンジニア」という名前で自分を狭く定義せず、ネットワークの得意なプロジェクトマネジャーとして仕事の幅を広げよう。

筆者紹介

松田次博(まつだ つぐひろ)

情報化研究会主宰。情報化研究会は情報通信に携わる人の勉強と交流を目的に1984年4月に発足。

IP電話ブームのきっかけとなった「東京ガス・IP電話」、企業と公衆無線LAN事業者がネットワークをシェアする「ツルハ・モデル」など、最新の技術やアイデアを生かした企業ネットワークの構築に豊富な実績がある。企画、提案、設計・構築、運用までプロジェクト責任者として自ら前面に立つのが仕事のスタイル。『自分主義-営業とプロマネを楽しむ30のヒント』(日経BP社刊)『ネットワークエンジニアの心得帳』(同)はじめ多数の著書がある。

東京大学経済学部卒。NTTデータ(法人システム事業本部ネットワーク企画ビジネスユニット長など歴任、2007年NTTデータ プリンシパルITスペシャリスト認定)を経て、現在、NECスマートネットワーク事業部主席技術主幹。


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