ICTの世界は「CMA」、つまりクラウド、モバイル、AIの3要素を中心に急激に進化している。私たちネットワークエンジニアは単にネットワークのことだけを分かり、狭い領域の仕事をしていたのではもはや大きな付加価値を生むこと難しくなっている。連載第2回はコミュニケーションロボットを用いたサービスを紹介する。
「コミュニケーションロボット」とは音声認識機能やカメラ、センサーなどを備えた小型ロボットだ。音声を用いたリクエストに応えてニュースや天気予報を伝えたり、簡単な会話の相手になったりする。
コミュニケーションロボットとクラウド型AI、クラウドサービスをネットワークで連携させると、独居老人の見守りサービスや店舗における商品説明など、これまでにないUX(User eXperience)を実現するサービスを簡単に創出できる。
コミュニケーションロボットの利用は、今まさに家庭や企業に広がり始めている。図1は高島屋新宿店9階のロボティクス スタジオで販売されているヴイストンの「Sota」である。高さ28センチでクラウドによる音声認識、合成を使うロボットだ。価格は約15万円である。ロボティクス スタジオには手のひらサイズのものから、高さ60センチ程度のものまで約20種類のロボットが展示されている。その多くがコミュニケーションロボットだ。
図2は2018年1月に東京ビッグサイトで開催された第2回ロボデックス展に展示されたスマートロボティクスの「NAO」である。高さ約60センチ、価格は約120万円という高級機で用途はイベントの集客やプロモーション、変わったところでは認知症患者のリハビリ、などである。
このように家庭で使える手軽なものから、企業向けの高性能なものまでコミュニケーションロボットは実用段階を迎えている。
コミュニケーションロボットに「天気予報を教えて」と言うと天気予報を、「ニュース」と言えばニュースをしゃべる。AIスピーカーと似ているではないか。コミュニケーションロボットとAIスピーカーの違いは何だろう? それはUI(User Interface)とUXの違いである。
コミュニケーションロボットは新しいUIだ。PCやスマートフォン、AIスピーカーはユーザーがサービスを使うためのインタフェースである。これらのUIが機能本位で無機的であるのに対し、コミュニケーションロボットは親しみを持てる姿かたちで、表情や動きを備えており、高齢者や子供でも近づきやすい。音声やボタンで簡単に操作できるので、キーボードやマウスが使えなくても大丈夫だ。
単にサービスを使えるだけでなく、ロボットとのコミュニケーションを通じて、一人住まいのお年寄りの孤独感をやわらげることもできる。スマートフォンやAIスピーカーでは得られないUXがコミュニケーションロボットの価値なのだ。
例えば後ほど紹介するお年寄りの見守りサービスは、監視カメラとAIスピーカーの組合せでも実現できる。しかし、お年寄りに限らず人間は監視されプライバシーが侵されることを嫌う。コミュニケーションロボットならそんな不快感を与えることなく、コミュニケーションを通じてやさしい見守りができる。
図3は、コミュニケーションロボットの主な用途と使われる機能要素である。発話はテキストを基に発声する機能で、会話は相手の発言の意味を理解して適切な答えを返す機能だ。コミュニケーションロボットを活用するには、実現したいサービスに応じて必要な機能を備えたものを選択する。
サービスを実現するアプリケーションソフトの開発のしやすさも、ロボットの選択をする上で重要だ。例えばNECプラットフォームズの「PaPeRo i」はアプリ開発のためのさまざまなAPIを用意している。そのうちの1つ「顔検知」APIはロボットの前に人が来たら検知し、それをトリガーに発話してサービスを始めるためのAPIだ。AIスピーカーではウェイクワード(Wake Word)で呼び掛けないとサービスが始まらない。顔検知を使えば声を掛けたり、ボタンを押したりしなくてもサービスが始まる。このようなAPIを活用することで、サービスをごく短期間に開発できる。
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