MicrosoftのRalph Haupter氏はAIが雇用に与える影響について述べた。急速に変化するAIの未来に適合するには、あらゆる利害関係者がより多くの時間をかけて互いの意見に耳を傾け、共に新たな知識とスキルを継続的に学んでいく必要があるとしている。
Microsoftのバイスプレジデントで、Microsoft Asiaのプレジデントを務めるRalph Haupter氏は2018年5月2日、AI(人工知能)が雇用に与える影響についてLinkedInで述べた。同氏は、「AIの未来は明るくも、暗くもなり得るとしており、破壊的変化は常に起こるもので、それに対応することを当然と捉えるべきだ」と述べた。急速に変化するAIの未来に適合するには、あらゆる利害関係者がより多くの時間をかけて互いの意見に耳を傾け、共に新たな知識とスキルを継続的に学んでいく必要があるとしている。
Haupter氏によれば、AIは企業の生産性向上とイノベーションを加速させ、疾病や飢饉、気候変動、自然災害の解決につながると期待されている。既にアジア太平洋地域では、明確な経済的な恩恵をもたらしている。
Haupter氏はAIについて、そうした恩恵だけでなく、雇用への影響も考慮すべきだという。これまで250年にわたる技術の変化は、雇用の創出や減少、進化に大きな影響を与えてきた。例えばHaupter氏が初めて就職したときには、オフィスにたくさんのタイピストがいたが、今ではその姿を見なくなった。
MicrosoftがIDCと共同で、アジア太平洋地域でのデジタルトランスフォーメーション(DX)の影響を調査したところ、今後3年間でアジア太平洋地域の雇用の85%が影響を受けることが分かった。それによると、現在の雇用の27%が自動化やアウトソースによって余剰人員化されるのに対して、26%がDXによって新たな雇用が創出されるという。つまり、余剰人員化分は新たな雇用と相殺され、全体への影響は中立だ。
ただしHaupter氏は、企業の組織作りや人々の求職方法、求められるスキルは劇的に変化し、今後10年間にこの変化がさらに加速すると予測する。AIによって仕事の特性が変化する中で、人々は将来の職業に向けて準備し、企業は必要な人材にアクセスできるようにする必要がある。
日本マイクロソフトでは、AIがもたらすこうした難題を理解するために、同社プレジデント兼最高法務責任者のBrad Smith氏と、Microsoft AI and Research Group担当エグゼクティブバイスプレジデントのHarry Shum氏が監修した「Future Computed:AIとその社会における役割」の日本語版の無償ダウンロード提供を始めた。
同書では、AIが雇用に与える影響について、3つの結論を述べている。1つ目は、AIの競争で最も有利になる組織や国家は、初期導入者であること。2つ目は、AIを最大限に利用するには、倫理基準や法制度の改定、新スキルの教育、労働市場の改革が必要であること。3つ目は、AIの恩恵を最大化し、負の影響を最小化するには、テクノロジー企業や官民の組織の共同責任による対応が必要であることだ。
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