「品質更新プログラム(Quality Updates)」は、Windows 10の各バージョンに対して毎月1回以上提供される更新プログラムであり、セキュリティ問題や製品の不具合を修正するための更新プログラムです。
品質更新プログラムは、さらに「累積更新プログラム(Cumulative Update)」「更新プログラム(Update)」「セキュリティ更新プログラム(Security Update)」の3つに分類できます。
「累積更新プログラム(Cumulative Update)」は、Windows 10の各バージョンを最新状態に保つ重要な更新プログラムであり、毎月1回以上配布されます。累積更新プログラムのインストールは再起動を伴い、インストールによって、OSビルドのマイナー番号(16299.xや17134.yの.xや.yの番号)が更新されます。
累積更新プログラムは、過去にリリースされた累積更新プログラムの内容が累積されており、以前の累積更新プログラムが未インストールであっても、最新の累積更新プログラムをインストールすれば最新状態になるという特徴があります。最新の累積更新プログラムのことを、「Latest Cumulative Update(LCU)」と呼ぶことがあります。
毎月第2火曜日(日本ではその翌日の水曜日)のリリースは固定であり、Windows Updateで直接Microsoft Updateから更新する場合(WSUSクライアントでない場合)は、ダウンロードとインストールが自動で行われます。
Microsoftの内部では、これを「“B”リリース」と呼んでいるそうです。累積更新プログラムは第3週、第4週にもリリースされることがあり、通常、それらのリリースには新たなセキュリティ問題の修正は含まれません。翌月の“B”リリース向けのプレビューリリース的なものです。
Microsoftでは第3週を「“C”リリース」、第4週を「“D”リリース」と呼んでいるそうです。この他、“B”リリースの不具合に緊急に対応するために、数日後に(“C”や“D”リリースとしてではなく)その不具合を修正しただけの累積更新プログラム(“out-of-band”リリース)が提供されることもあります。
“B”リリースは自動でダウンロードおよびインストールされますが、それ以外のタイミングでリリースされる累積更新プログラムは「設定」アプリの「Windows Update」のページで「更新プログラムのチェック」ボタンをクリックしないと検出されない場合があります(画面3)。
どちらであるかは、更新プログラムのサポート情報ページ「How to get this update(この更新プログラムの入手方法)」で次のように説明されています。ただし、このサポート情報の記述が誤っていることもあるので注意してください。
Windows 10 バージョン1703以降でWUfBポリシーが構成されている場合は、“B”リリース以外の累積更新プログラムは配布されません。Windows 10 バージョン1703では「更新プログラムのチェック」ボタンをクリックすることで検出できる場合がありましたが(2018年9月と10月の状況を見た限り、現在は検出しなくなったように見えます)、Windows 10 バージョン1709からは「更新プログラムのチェック」ボタンをクリックしても検出されないようになりました。
これらのリリースはプレビュー扱いであり、修正される問題は、翌月の“B”リリースに盛り込まれることになります。それまで待てない場合は(例えば“B”リリースの不具合を修正するために緊急でリリースされた累積更新プログラムなど)、Microsoft Update Catalogサイト(http://www.catalog.update.microsoft.com/)から「累積更新プログラム」のMSUファイル(*.msu)をダウンロードしてインストールしてください。
Windows Updateで累積更新プログラムをインストールする場合、前回の累積更新プログラムとの差分をまとめてダウンロードするのではなく、インストール済みのコンポーネントをスキャンして、更新が必要なファイルだけをダウンロードする「高速(Express)インストール」という方法で更新プログラムがダウンロードされ、インストールされます。
Microsoft Update Catalogサイトでは、全ての更新内容を含む「累積更新プログラム」のMSUファイルと、1つ前の累積更新プログラムとの差分の更新内容を含む「差分更新プログラム」のMSUファイルがダウンロード提供されますが、高速(Express)インストールとこの「差分更新プログラム」は全く別のものであることに注意してください。
Microsoftは“B”リリースについては「差分更新プログラム」のMSUファイルを作成、提供していますが、それ以外のリリースについては作成していません。また、2019年2月以降は「差分更新プログラム」が提供されなくなる予定です。
なお、Windows 10 バージョン1607およびWindows Server 2016以前は、WSUSで制御していない限り、Windows Updateは“B”、“C”、“D”リリースの全てを検出してインストールします。また、Windows Server 2016については、2017年10月以降、高速(Express)インストールは提供されておらず、毎回1GB以上のフルパッケージをダウンロードする状況になっています(※1)。
【※1】最新情報:2018年11月の定例更新からWindows Server 2016に対する高速インストールの提供が再開されます。
“B”リリース、“C”リリース、“D”リリース、“out-of-band”リリースについては、以下の公式ブログで説明されています。簡単にまとめると、表1のようになります。
リリース時期 | 検出とインストール | 備考 | |
---|---|---|---|
“B”リリース | 第2火曜日(時差の関係で日本では翌水曜日) | 自動または「更新プロクラムのチェック」をクリック | 通称、Patch Tuesday |
“C”リリース | 第3週 | 「更新プロクラムのチェック」をクリック | 翌月の“B”リリースに累積される前のプレビュー。WUfBポリシーが有効な場合、検出されない |
“D”リリース | 第4週(その月の最終日の場合、日本では翌月の1日) | 「更新プロクラムのチェック」をクリック | 翌月の“B”リリースに累積される前のプレビュー。WUfBポリシーが有効な場合、検出されない |
“out-of-band”リリース | 随時 | 「更新プロクラムのチェック」をクリック | “B”“C”“D”リリースの修正版。WUfBポリシーが有効な場合、検出されない |
表1 毎月の累積更新プログラムのリリース |
「更新プログラム(Update)」は、製品の不具合の修正やWindows Update関連のコンポーネントの更新など、累積更新プログラムには含まれない個別の更新プログラムです。この分類で重要なものとしては、「サービススタックの更新プログラム(Servicing Stack Update:SSU)」があります。
SSUは、Windows Updateをスムーズに実行するための更新プログラムであり、最新の累積更新プログラム(LCU)をインストールするには、最新のSSU(Latest SSU)が前提とされている場合があります。前提となるSSUがあるかどうかは、累積更新プログラムのサポート情報で確認できます。
Windows Updateで更新する場合は、SSUがリリースされていれば、それがインストールされてから、最新の累積更新プログラム(LCU)がインストールされます。Microsoft Update Catalogサイトから「累積更新プログラム」のMSUファイルをダウンロードしてインストールする場合は、前提となるSSUが存在するかどうかサポート情報で確認し、事前にインストールしなければならないので注意が必要です。
最近では、以下の「Intelのマイクロコードアップデート」が、この種類の更新プログラムとしてWindows Updateで配布されました。
更新プログラムの名前からは判断できませんが、Intelが提供するマイクロコードの更新プログラムを、MicrosoftがWindows向けに配布しているものです。この更新プログラムは、Windows Updateでは自動でダウンロードとインストールが行われません。「更新プログラムのチェック」ボタンをクリックすることで、検出され、インストールされます。インストールを完了させるには、再起動が必要です。
「セキュリティ更新プログラム(Security Update)」は、セキュリティ問題を修正するための、累積更新プログラムに含まれない個別の更新プログラムです。
「Adobe Flash Player」の更新は、この分類の更新プログラムとして、「セキュリティ更新プログラム(Adobe Flash Player対応)」(Security Update for Adobe Flash Player)という名前で、通常、毎月第2火曜日(日本では翌日の水曜日)の累積更新プログラムと同じ日に配布されます。その前後の別の日に配布される場合もあります。
Windows 8以降、「Internet Explorer」(IE)とWindows 10の「Microsoft Edge」(Edge)用のAdobe Flash Playerは、Windowsに同梱される形で提供され、Windows Updateを通じて最新バージョンに更新されます。Adobe Systemsは、これらのWindowsに対してIEやEdge用のAdobe Flash Playerや更新プログラムを直接提供していません。
Windows 10 バージョン1809(October 2018 Update)からは、.NET Frameworkの累積更新プログラムがこの分類で提供されるようになる予定です。Windows 10 バージョン1803までは、.NET Frameworkの更新プログラムはWindows 10の累積更新プログラムに含まれていました。
既に、Windows 7やWindows 8.1では、これらのWindows用の累積更新プログラムである「セキュリティマンスリー品質ロールアップ(Monthly Update)」とは別の更新プログラムとして、「.NET Framework用セキュリティおよび品質ロールアップ」(Security and Quality Rollup for .NET Framework)を提供しています。
インストール済みのMicrosoft製品やMicrosoftのエージェント、ツールなどの更新プログラムも、品質更新プログラムのカテゴリーで配布されます。ただし、「クイック実行版」(Click-to-Run、C2Rとも呼ばれる、ボリュームライセンス製品を除くOffice 2013およびOffice 2016の配布形式、Office 2019はC2Rのみで提供)のOfficeアプリケーションの更新は除きます。クイック実行版のOfficeアプリケーションは、Windows Updateではなく、Officeアプリケーションに組み込まれた更新機能で更新されます。
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