アイティメディアは、2018年9月26日に秋葉原UDXで「AI/ディープラーニングビジネス活用セミナー ビジネス価値は、データに宿る」を開催した。本稿では、マイクロストラテジー・ジャパンの講演「AIの効果を最大化するBIプラットフォーム MicroStrategy」の内容を紹介する。
アイティメディアは、2018年9月26日に秋葉原UDXで「AI/ディープラーニングビジネス活用セミナー ビジネス価値は、データに宿る」を開催した。本稿では、マイクロストラテジー・ジャパンで営業部のセールスエンジニアを務める中村靖雄氏による講演「AIの効果を最大化するBIプラットフォーム MicroStrategy」の内容を紹介する。
MicroStrategyは、1989年に米国で設立された独立系のBIツールベンダーだ。
ツールの特徴としては、全社規模で一貫性のあるデータを扱うエンタープライズBIと、部門や個人単位でアドホックな分析を行うセルフサービスBIの双方を、共通のプラットフォームで扱えることが挙げられる。そのため、全社統一のBI基盤として導入する企業が多いという。ユーザー数は数万から数十万、分析データのサイズは数百P(ペタ)Bにも及ぶ大規模ユーザーが多いことも特徴で、Facebookのデータ分析基盤としても採用されているという。
「AIとBIは補完関係にある。このセッションでは、AIとの連携という観点で、MicroStrategyのBIプラットフォームをどのように活用できるのかを紹介したい」(中村氏)
AIとBIの主な連携パターンとして中村氏が挙げたのは「分析」「インプット」「アウトプット」の3つだ。
「分析」は、AIで扱うデータについて、前処理もしくは後処理をBIツールで行うというもの。必要なデータを多様なデータソースから入手し、AIでの学習が可能な形に整形したり、複数のデータを結合したりといった部分は「前処理」に当たる。一方の「後処理」は、AIによるCSVやJSONといった形式でのアウトプットを、一般のビジネスユーザーにも分かりやすい形でビジュアライズする工程だ。
こうした作業を個別に行うツールはオープンソースソフトウェア(OSS)などにも存在するが、MicroStrategyは商用BIツールとして、データの前処理と後処理に必要となる機能を統合して提供している点が優位性になる。また、それぞれの機能はGUIベースで利用できる。
例えばデータアクセスについては、主要なRDBMS、NoSQLデータベース、クラウドアプリケーション、オフィスドキュメント、ソーシャルメディアなど、約200種のデータソースへの接続機能を備えている。データ整形については「データラングリング」と呼ばれる機能で、外れ値の除外や空白データの一括穴埋め、類似単語の検出やマージなどがGUIベースで行える。また後工程については、標準的なグラフやチャートの作成に加え、より高度なビジュアライゼーションも対話的なUIによって可能だという。
実際に、AIの予測モデルとMicroStrategyを組み合わせて活用している例として挙げたのは、米国の自動車ディーラー向けオンライン販売サイトである「TrueCar」だ。同社では、過去の販売実績データから自動車の販売価格を予測し、その情報を顧客である自動車販売店向けにダッシュボードとして提供している。価格の予測にはR言語によって作成したモデルを利用するが、データの前処理、後処理にはMicroStrategyを採用しているという。
2つ目の「インプット」は、「BIツールのフロントエンドとしてAIを利用する」というもの。具体的には、従来のマウスやキーボードだけではなく、AIによる「画像認識」や「音声認識」などを、BIツールを使うための新たなUIとして活用するアプローチだ。
近年、企業においては、「BIツールを特定のデータ分析担当者だけが使うものではなく、現場スタッフを含む不特定多数が意思決定の支援に活用できるものにしていく」というトレンドがある。
例を挙げると、小売店舗や売り場における在庫管理や需要予測、売上実績の確認や前週との比較といった作業を、最新のデータを基に行っていくものだ。この場合、検索クエリとして音声や画像などを使えることで、ユーザーのリテラシーを問わずに広くBIを活用する「セルフサービスBI」のための環境作りが可能になるという。
最後の「アウトプット」は、ダッシュボードなどで可視化された情報を、AIで「解釈」するという使い方だ。一般的なBIダッシュボードでは、意思決定に役立つデータを可視化して表示するが、それに基づいて「どのようなアクションを行うか」という判断は、見ているユーザーに委ねる。
「指標に基づく意思決定には、ユーザー側に一定のスキルが求められ、解釈も人によって異なる。そのため、次のアクションが属人的になってしまう問題もあった」(中村氏)
そのため近年では、BIによるアウトプットをAIに解釈させ、文章として生成することで、概況把握や次のアクションを直接提示するといったことも行われている。これによって、解釈や意思決定の属人性を排除しようというわけだ。
こうした「BIのアウトプットをAIで自動解釈する」といった連携には、既に実際の事例もある。Cisco Systemsでは、ネットワーク機器から出力されるログの分析結果をダッシュボードとして表示する。それと同時に、その内容をAIで解釈した結果を「ガイドライン」としてユーザーに提示するように取り組んでいる。これによって、ログの分析結果をユーザーが間違って解釈することによる誤操作や、ヘルプデスクへの直接の問い合わせを削減するなどの成果を挙げているという。
中村氏は「今回紹介したAIとBIとの3つの連携パターンが、今後、皆さんの企業でAI導入を進めるためのヒントになれば幸いだ。また、その際には大規模な分析で多くの実績があるMicroStrategyの製品も併せて活用することをぜひ検討してほしい」と述べ、講演を締めくくった。
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