3分の2の企業が2020年までに「5G」を導入、Gartnerが調査企業は5GをIoTとの通信や動画で利用

Gartnerの調査によると、66%の企業が2020年までに「5G」を導入する計画だ。課題もある。サービスプロバイダーが短期的中期的な企業のニーズに向き合わず、5G無線ブロードバンドサービスを優先する可能性が高い。

» 2018年12月21日 11時00分 公開
[@IT]

 Gartnerは2018年12月18日(英国時間)、「5G」(第5世代移動通信システム)の導入希望とインフラの整備状況について動向調査の結果を発表した。

 それによると、66%の企業が2020年までに5Gを導入する計画だという。企業が5Gを導入する大きな動機は業務の効率化であり、5Gネットワークを主にIoT(Internet of Things)機器との通信や、さまざまなサービスの動画用インフラとして使うと予測した。

 ただし、ユーザー企業のニーズを通信サービスプロバイダー(CSP)が十分にくみ取れていないこと、これが5Gの普及に当たっての問題点なのだという。Gartnerのシニアリサーチディレクターを務めるシルバン・ファーブル氏は次のように語った。

 「ユーザー企業には、5Gに関する明確な需要や期待がある。だが、CSPはまだ、5Gの準備が整っていない。CSPの5Gネットワークはまだ提供されていないか、あるいは企業のニーズに十分対応できていない」

 5Gをフルに活用するには、新しいネットワークトポロジーが必要になる。ここには新しいネットワーク要素が含まれている。

 例えばエッジコンピューティングや、コアネットワークスライシング、無線ネットワークの高密度化といったものだ。

 「IoT機器との通信や動画、制御、自動化、固定無線アクセス、ハイパフォーマンスエッジアナリティクスといったユースケースに5Gを利用したいと考える企業は、短期的、さらには中期的であっても、5Gのパブリックインフラを本格的に使用することがまだできない」(ファーブル氏)

5GをIoT機器との通信に使いたい、その理由は?

 調査の結果、5Gの想定ユースケースとして最も人気が高いのはIoT機器との通信だった。回答者の59%が、5GネットワークがIoT向けに広く使用されると予想している。次に人気があるのは動画で、53%が回答した。

 「IoT機器との通信に対する期待の高さは驚きだ。4G経由のナローバンドIoT(NB-IoT)や低消費電力の広域ソリューションなど、実績ある経済的な選択肢が既にあるにもかかわらず、5Gへの期待が高い。5Gにはユニークな特徴がある。エンドポイントの高密度接続を実現できるのだ。1平方キロ当たり最大100万個のセンサーを配置可能になる」と、ファーブル氏は解説する。

 「さらに5Gは、非常に低いレイテンシが要求されるIoTのサブカテゴリーにも適している可能性がある。動画に関しては、ユースケースはさまざまだろう。動画分析からコラボレーションまで幅広い。5Gのスピードと低レイテンシは、4Kや8KといったHD動画コンテンツのサポートにも向いている」(ファーブル氏)

5G無線ブロードバンドサービスが先行する

 Gartnerの予測によれば、2022年には、商用5G環境を構築済みのCSPの半分が、バックエンド技術インフラ投資から収益を得ていない。システムが5Gのユースケース要件を十分に満たさないからだ。

 「ほとんどのCSPでは、パブリックネットワークでエンドツーエンドの完全な5Gインフラを実現できる時期が、2025〜2030年になるだろう。CSPはまず消費者向けの5G無線ブロードバンドサービスにフォーカスし、それからコアスライシングやエッジコンピューティングを整備するからだ」と、ファーブル氏は説明する。

 だが、ファーブル氏は、コアスライシングやエッジコンピューティングの方が、5Gプロジェクトとして有意義であり、高い価値を生むと指摘している。

 Gartnerのアドバイスはこうだ。企業の需要に応えるために、5Gインフラソリューションを計画する技術製品マネジャーは、5G無線サービスだけでなく、プライベートネットワーク向けにコアスライシングやエッジコンピューティングインフラとサービスを提供する5Gネットワークに注力すべきだ。

 なお、5Gをいち早く導入しようとする企業の短期的中期的需要に応えられるのは、CSPだけではないかもしれない。

 「早期に5G機能の恩恵を受けたいと考える企業にとっては、企業向けのプライベートネットワークが最も直接的なオプションになる。こうしたネットワークは、CSPだけでなく、インフラベンダーからも提供されるかもしれない。しかも、従来の大手インフラベンダーだけでなく、クラウドやソフトウェアを手掛けてきたサプライヤーが提供する可能性もある」(ファーブル氏)

 今回の調査の期間は2018年5〜6月。対象はGartner Research Circleの会員企業(85人)と外部の回答者(100人)。

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