日々、2000拠点を超えるネットワークの運用を手掛けていると、OSIの7階層モデルにないレイヤーゼロの話、つまり「回線」をいかに引くかという点をないがしろにできないことが分かる。今回はネットワークエンジニアが意外と知らないレイヤーゼロの基本について述べたい。
企業ネットワークの提案書や設計書にある「ネットワーク構成図」では、回線を1本の直線で表現することが多い。拠点を表す四角い枠に直線を1本引き、そこにルーターを接続する。もうすこし詳細な図では回線終端装置を表す箱をルーターの前に書く。日々、図を描くネットワークエンジニアは、線を1本引けば回線が引けたような気分になるかもしれない。
しかし、回線を現実に開通させるのはそれほど簡単ではない。はっきり言ってとても面倒で、日数もかかる。回線はNTTやKDDIといった通信事業者(キャリア)に動いていただかないと開通しない。申請から開通に至るまでにユーザーとしてやるべきことを押さえ、独特の用語を頭に入れておかなければ回線を引くことはできない。
筆者がプロマネを務める運用中のプロジェクトでは、毎月10本から多いときには20本を超える回線を開通させる。新しい店舗やオフィスの開設に伴うものがほとんどだ。期日までに開通できなければ店舗がオープンできず、大変なことになる。
回線の実体と回線を引くための留意点を順に見ていこう。
図1はNTTコミュニケーションズやKDDIのVPNサービスで使う回線の構成だ。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)、KDDI、ソフトバンク、いずれもラストワンマイルと呼ばれるアクセス部分の光ケーブルをほとんど持っていない。そのためNTT東西が所有する光ファイバーのうち未利用のもの、いわゆる「ダークファイバー」を借用して使うことが多い。
図1ではNTTコムなどのキャリアの光ケーブルを青で、NTT東西のケーブルを赤で示している。中継ケーブルや加入者光ケーブルはユーザーが目にするものではない。その代わり、ユーザーのビル内の設備を知っておくべきだ。図中の丸数字の順に設備を説明する。
図1では地下から光ケーブルを引き込んでいるが、小規模な店舗やオフィスでは電柱から架空で引き込むことが多い。その構成が図2である。
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