アマゾンウェブサービスジャパンは2018年12月、Amazon Web Services(AWS)上のクラウドコールセンターサービス「Amazon Connect」を東京リージョンで提供開始した。同サービスはユーザー企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。
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アマゾンウェブサービスジャパンは2018年12月、Amazon Web Services(AWS)上のクラウドコールセンターサービス「Amazon Connect」を東京リージョンで提供開始した(Amazon Web Services ブログ)。同サービスはユーザー企業にとってどのようなメリットがあるのだろうか。
企業の電話システムには内線電話を主体としたものと、コンタクトセンターがある。コンタクトセンターは顧客からの電話の規模「コール数」の増減が著しいため、Amazon Connectにメリットがありそうだ。
内線電話をつかさどるPBX(Private Branch eXchanger)機能もVoIP(Voice over IP)サーバをAWS上に置くだけで移行できる。Amazon ConnectとVoIPサーバの2通りの電話システムでメリットが得られるか見てみよう。
Amazon Connectの構成は図1の通りである。Amazon Connectの大きな特長は、コンタクトセンターの構築がわずか数分で完了してしまうことだ。電話回線を引く必要はなく、使いたい電話番号を選択するだけでよい。オペレーターのために特別な席を用意しなくても、PCにソフトフォンのアプリをインストールして、インターネットでAmazon Connectにつなげればいい。オペレーターが1カ所に集まっている必要はなく、在宅勤務も可能だ。
IVR(Interactive Voice Response)のフローの設定もコーディング不要で、ドラッグ&ドロップで定義できる。オンプレミスのコンタクトセンターではピークのコール数をさばけるように電話回線やオペレーターの席数を固定的に設けておく必要がある。
だが、Amazon Connectでは回線数を意識する必要がなく、必要なときだけオペレーターのPCを増やせばよい。拡張時のダウンタイムもない。CRM(Customer Relationship Management)をはじめ外部のシステムと連携しやすいことも特長だ。
イニシャル投資が不要でランニングコストは使った分だけの利用料で済む。
良いことずくめのようだが心配な点もある。オペレーターのPCはインターネットで接続する。音声を高品質に保つには遅延が少なく、パケットロスのないことが重要だが、インターネットにこれらを保証する仕組みはない。オペレーター側のインターネット接続回線の帯域幅は無限ではないので、オペレーターを増やしても帯域幅が不足すればたちまち音切れなどの音質劣化につながる。
コンタクトセンターの生産性を上げる上ではオペレーターをサポートする機能が重要だ。そのため、大規模なコンタクトセンターでは問い合わせに対する応答をAIで支援したり、応対メモの作成を助けたりする機能が設けられている。Amazon Connectのオペレーター画面はシンプルであり、大規模ユーザーに求められる機能を作り込めるのか、という疑問が残る。
著者の調べでは2019年3月現在、日本国内でAmazon Connectを大企業が実用化した事例は見つからなかった。ただし、PoC(Proof of Concept:概念実証)の事例は散見された。
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