データグリッドは、GANを用いて、実在しない人物の全身画像を生成する「全身モデル自動生成AI」を開発した。
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データグリッドは2019年4月26日、ディープラーニングの一手法であるGAN(Generative Adversarial Network:敵対的生成ネットワーク)を用いて、実在しない人物の全身画像を生成する「全身モデル自動生成AI」を開発したと発表した。
データグリッドは2018年6月に実在しないアイドルの顔を自動生成する「アイドル自動生成AI」を発表していたが、顔領域のみの画像生成で表現力に課題があったという。そこで、生成される人物の表現力を高めることを目的とした研究開発に取り組み、全身モデル自動生成AIを開発した。
GANはディープラーニングアルゴリズムの一種。近年、手書きのシンプルなイラストをリアルな風景写真に変換する「GauGAN」や、ページを開くたびに実在しない人物の顔の画像を生成する「This Person Does Not Exist」などで注目を集めている。
GANでは主に「Generator」(生成器)と「Discriminator」(識別器)という2つのネットワークを用いて、お互いが敵対して競い合うように学習を行っていく。これは、紙幣の偽造者と、偽造紙幣を見抜く警察の関係によく例えられる。以下、「千円札の画像を生成するAI」を例に、GANの仕組みを説明する。
生成器(以下、偽造者)は本物に似せた偽物の千円札の画像を生成する。識別器(以下、警察)は、本物と偽物の千円札の画像を受け取り、本物である確率と偽物である確率をそれぞれ推測する。
警察の推測を通じて偽造者は、生成した偽物の千円札が本物とどれだけ違うのかを知る。警察は本物である確率と偽物である確率の推測がどれほど正しかったかを知る。この学習結果を基に、偽造者はより本物に近い偽物の千円札の画像を作成し、警察は明らかな偽物を偽物と判断できるようになる。
この学習行為を何度も繰り返して、偽造者が作成した偽物の千円札の画像を、警察が「本物の確率5割、偽物の確率5割」と推測する状態になれば、本物と見分けがつかない偽物の千円札の画像を作成するAIが完成したことになる。
このように、2つのネットワークを敵対的に扱うことで、目的の物をAIに生成させるのがGANという技術だ。
データグリッドでは今後、生成した実在しない人物を広告、アパレル業界でモデルとして利用できるよう全身モデル自動生成AIの性能向上を目指すとともに、広告、アパレル関連企業と実証実験を行うことで実用に必要な機能の開発を行うという。
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