アプリケーションやビジネスインテリジェンスの担当リーダーは、デジタルツインを利用してIoTエコシステムの複雑さを軽減できる。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
今日のトラックは、いわば車輪の付いたコンピュータだ。最新のテレメトリーシステムなどの技術のおかげで、位置、動き、エンジン状態といったデータポイントを、企業のさまざまなビジネス部門やシステムに絶えず送信している。
だが、こうしたトラックは、同じデータを含む複数のメッセージを、複数のチャネルを介して異なるタイミングで送信するケースが多いという問題がある。トラックの運行管理と保守には同じ燃料消費情報が必要であり、それぞれの担当チームは同じデータの別々のコピーを持っているが、データ転送のチャネルまで別々である場合もある。
「従来のアプローチは、労力やリソースを浪費している。データが重複し、冗長になるからだ」と、Gartnerのアナリストでディスティングイッシュト バイスプレジデントのロイ・シュルテ氏は指摘する。
「さらに、データにアクセスする必要がある新しいアプリケーションごとにチャネルを確立するのは、非常に複雑でありコストが高くつく」(シュルテ氏)
そこで、解決策として「デジタルツイン」が利用されている。デジタルツインは、物理的なモノから各システムを分離する設計パターンを指す。例えば、トラックはデータの個々の受け手と個別に通信せず、全てのデータを自身のデジタルツインに送信する。トラックからの情報が必要なビジネス部門は、デジタルツインと接続して、そのデータにアクセスできる。
この設計アプローチが適用されるのは、物流だけに限らない。Gartnerの調査によると、IoTソリューションを本番環境で使用しているか、IoTプロジェクトを実施している企業の24%は、既にデジタルツインを利用している。3年以内にデジタルツインを利用する計画の企業も42%に達している。
デジタルツインが人気を呼んでいるのは、この設計アプローチによってIoTエコシステムの複雑さを大幅に軽減するとともに、効率を高めることができるからだ。
デジタルツインは、目的や保持するデータ量によって千差万別だが、いずれも同じ原理に従っている。それは、「物理的なモノとデジタルツインは1対1で対応する」というものだ。ツインは、物理的なモノの最新の状態を反映するために、継続的に更新される。
ツインのデータとビジネスルール、最適化アルゴリズム、あるいは処方分析技術を組み合わせることで、デジタルツインは人間の意思決定を支援したり、さらには意思決定を自動化したりできる。例えば、トラックのデジタルツインを使って、ブレーキの状態を追跡できる可能性がある。さらに、ツインの現在と過去のデータから、次に保守が必要になる時期を予測できると考えられる。保守システムはその予測を踏まえて、最適なタイミングで保守を行うようにスケジューリングできる。
デジタルツインの主な目的は、モノとの通信におけるプロキシとしての役割を果たすことにある。そのため、あるモノからのデータを必要とするアプリケーションは全て、デジタルツインとやりとりすれば済む。ツインはソフトウェアであるため、データをカプセル化するように構成できる。このため、接続された全てのアプリケーションに影響を与えることなくツインに変更を加えることができ、その逆も可能だ。
カプセル化は、アプリケーションや物理的なモノのメンテナンスや改良に必要な作業を大幅に軽減する。多くの場合、モノに(センサーの追加のような)変更を加えると、ツインにも変更を加える必要があるが、新しいセンサーデータを使用しないアプリケーションには変更を加えずに済む。同様に、デバイスやツインに変更を加えることなく、アプリケーションにさまざまな変更を加えることが可能だ。
ほとんどのツインは資産のメーカーによって作成され、対応する物理的なモノとともに提供される。こうしたツインは、個々の購入判断において考慮しなければならない。ツインの機能は買い手の成功にとって、物理資産と同じように重要だからだ。
「デジタルツインが注目されている背景には、IoTの台頭がある。機械などの資産を購入するときは、デジタルツインのサポートや、ツインの機能の継続的開発も判断材料に加える必要がある」(シュルテ氏)
出典:How Digital Twins Simplify the IoT(Smarter with Gartner)
PR Manager Germany & Scandinavia at Gartner
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