人工知能(AI)に過度な期待や恐れを抱く人もいれば、AIは流行語にすぎないと断じる人もいる。真実はその中間のどこかにある。企業におけるビジネスリーダーは、「AIはどんな仕組みなのか」「どこに限界があるのか」を十分理解する必要がある。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
「AIは全てを自動化し、人々の仕事を奪う」「AIはSFの技術である」「ロボットが世界を支配する」――。人工知能(AI)がもてはやされる中、主流のメディアや取締役会、企業内で、さまざまな都市伝説が飛び交っている。「オールマイティーな」AIが世界を支配するのではないかと心配する人もいれば、AIは流行語にすぎないと断じる人もいる。真実はその中間のどこかにある。
「ビジネスリーダーはしばしば、会社のためにAIで何ができるのかよく分かっていない。これは無理もない。AIのさまざまな定義やバリエーションが広く語られるようになっているからだ」と、Gartnerのアナリストでバイスプレジデントを務めるアレクサンダー・リンデン氏は指摘する。
「だが、AI技術は企業で導入が進んでいる。『AIはどのようにビジネス価値を生み出すのか』『どんな場合に生み出せないのか』を十分理解することが重要だ」(リンデン氏)
Gartnerは、AIについて広く流布している5つの都市伝説や誤解として、以下を挙げている。
AIは、コンピュータ工学の1分野だ。現状では、問題解決のためのソフトウェアツールで構成されている。ある種のAIは賢い印象を与えるかもしれないが、現在のAIが人間の知能と似ている、または同等であると考えるのは非現実的だろう。
機械学習はAIのカテゴリーの1つであり、ある種の機械学習は人間の脳をヒントにしているが、両者は同じものではない。例えば、画像認識技術は、ほとんどの人より正確に画像を認識できるが、数学の問題を解くのには役に立たない。現在のAIは、ある一つのタスクを非常にうまく処理するが、タスクの条件がわずかでも変わると、処理に失敗する代物だ。
完成した機械学習の成果物は、自ら学習できるという印象を与える。だが、実際には、人間の熟練したデータサイエンティストが問題を設定し、データを準備し、適切なデータセットを決定し、トレーニングデータの潜在的なバイアスをなくし(都市伝説3を参照)、そして最も重要なこととして、ソフトウェアの継続的な更新を行い、次の学習サイクルに新しい知識とデータを統合できるようにしている。
AI技術は全て、人間の専門家によるデータやルール、その他の入力に基づいている。人は誰もが生来、何らかのバイアスを持っているため、AIもバイアスを持つことになる。頻繁に再トレーニングされるシステム(例えば、ソーシャルメディアからの新しいデータなどを使って)は、無用なバイアスや意図的な悪意の影響をより受けやすい。
「今のところ、バイアスを完全に取り払う方法はない。だが、われわれは、バイアスを最小限に減らすために最善を尽くす必要がある。多様なデータセットのような技術的なソリューションを使用するだけでなく、AIを扱うチーム内の多様性を確保し、チームメンバー間でお互いの作業をレビューし合うようにすることが重要だ。このシンプルなプロセスにより、選択バイアスや確証バイアスを大幅に減らせる」(リンデン氏)
AIの予測や分類、クラスタ化といった機能を活用することで、企業はより的確な判断を行える。企業は、こうした機能を提供するAIベースのソリューションを職場に導入し、定型業務を代替するためだけでなく、複雑な業務の担当者をサポートする目的でも利用している。
例えば、医療における画像処理AIの利用について見ると、AIベースの胸部X線アプリケーションは、放射線科医よりも迅速に病気を発見できる。金融・保険業界では、ロボアドバイザーが資産管理や詐欺検出に利用されている。これらのAI機能によって、こうした業務への人間の関与が不要になるわけではない。だが、いずれは人間の役割は、これらの機能の監視と例外的なケースへの対応に限られるだろう。それを前提にして、職務定義や人員計画を調整し、既存スタッフに再トレーニングの選択肢を提供する必要がある。
全ての企業が、AIが自社の戦略に与える潜在的な影響を検討し、この技術を自社のビジネス課題にどう適用できるかを調査しなければならない。AIを活用しなければ、次の段階における自動化のさまざまな機会を逃すことになる。そうなれば、企業は競争上、不利な立場に置かれる恐れがある。
「現在のAI戦略が、『AIは要らない』であっても、AI戦略は、調査、検討に基づいて、しっかり立てる必要がある。そして、他の全ての戦略と同様に、定期的に見直し、自社のニーズに合わせて変更しなければならない」(リンデン氏)
出典:5 AI Myths Debunked(Smarter with Gartner)
PR Manager Germany & Scandinavia at Gartner
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