基調講演では、Microsoft コーポレートバイスプレジデントのジュリア・ホワイト氏が、クラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」の開発環境について最新の動向を紹介した。
「Microsoftのゴールは、開発者に優れたプラットフォーム、ツールを提供し、成功してもらうこと。Azureは、あらゆるツール、言語、アプリケーションを利用する開発者のためのクラウドプラットフォームだ」(ホワイト氏)
その言葉を裏付けるように、近年のMicrosoftは、他のITベンダーやクラウドベンダーと次々とパートナーシップを結び、Azureの環境を拡充している。Red Hatとの提携によるOpenShiftのマネージドサービス「Azure Red Hat OpenShift」や、Dell Technologiesとの提携によるVMwareソリューション「Azure VMware Solutions」などは、その一端といえる。
以下では、de:code 2019の基調講演におけるホワイト氏の担当ブロックから、主にAzure上で利用できる開発向けの新機能、新サービスをピックアップする。
もはや世界最大級の開発者コミュニティーといっても過言ではない「GitHub」。Microsoftによる買収は2018年10月に完了し、その後、同社の傘下で機能強化が進んでいる。ホワイト氏は、その一部として「GitHubとAzure Active Directoryとの同期サポート」「開発者が個人で所有しているGitHubアカウントを使ってのAzureへのサインイン対応」「Visual StudioとGitHub Enterpriseの統合サブスクリプションオファー」などが、新たに可能になったことを紹介した。
「Visual Studio Online」は、Webブラウザから利用できるソースコードエディタだ。Windows向けのIDEであるフル機能版のVisual Studioではなく、コードエディタ「Visual Studio Code」のオンライン版として開発中であり、簡単なコード編集や、プルリクエストの確認などを、ブラウザを通じてリモート環境から行えるものになるようだ。
GitHubとVisual Studioファミリー、そして「Azure DevOps」の各ツール群を組み合わせることで、エンドツーエンドの完結した開発運用環境をAzure上で実現できる。Azure DevOpsは、以前、Visual Studio用のチーム開発向けサービス群として提供されていた「Visual Studio Team Services」(VSTS)を、Azure上の他のサービスや、GitHubとの連携機能を強化してリブランドしたもの。基調講演では、日本マイクロソフトの井上章氏が、Azure DevOpsを活用した開発プロジェクトの進め方に関する実演デモを行った。
Azure DevOpsには、いわゆる「カンバン」機能やバックログ管理機能などを提供するダッシュボード「Azure Boards」、CI/CDを用いたビルド、テスト、デプロイのためのプロセスを定義できる「Azure Pipeline」、手動による探索的テストを行うためのツール「Azure Test Plans」などのツールが含まれる。
井上氏は、Azureのコグニティブサービスを使い、入力された文字列から筆者の感情をリアルタイムに推定する「ライブ感情分析」サービスを開発、リリースするというシナリオで、それぞれのツールの機能と開発の流れを紹介した。
GitHub上のリポジトリへプッシュされたコードは、Azure Pipelinesによるビルド、テストをへた後に問題がなければマスターブランチにマージされる。ここでのパイプライン構成は、Azure Pipelines上でGUIによる定義が可能だ。定義内容はYAMLによって管理されるため、独自に編集することもできる。マスターブランチの内容は「Azure Container Registry」を通じて「Azure Kubernetes Services」(AKS)上に展開される。これらの一連の流れがAzure DevOpsとGitHub、Visual Studioファミリーで完結するというわけだ。
その他、ホワイト氏は、Azure上で提供されているWebアプリのホスティングサービス「Azure App Service」において「App Service on Linux」の無料プランが新たに追加されたこと、「Virtual Kubelet」をベースに構築されたAKS向けのサーバレスコンピューティングサービスの一般提供が開始されたこと、Kubernetesベースのイベント駆動型自動スケール(KEDA)が可能になったことなどを紹介した。
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