日本マイクロソフトが2019年5月末に開催した「de:code 2019」では、5月上旬に米国で開催された「Build 2019」に合わせて発表された、WindowsやAzureに関する多くの新機能、新サービスを国内で初披露した。この記事では、基調講演で触れられたものの中から、特に開発者やITエンジニアにとって関わりの深いものをまとめる。
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Microsoft コーポレートバイスプレジデントのジャレッド・スパタロウ氏は、基調講演の中で自身が担当した「Microsoft 365」関連のブロックにおいて、現在、主にWindows 10向けに開発を進めている、幾つかの新機能を紹介した。
「React Native for Windows」は、Facebookによって開発されたクロスプラットフォームの開発フレームワーク「React Native」を、ユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリの開発に利用できるテクノロジーだ。React Nativeの経験がある開発者は、JavaScriptによる記述でReact Nativeのコンポーネントを利用したUWPアプリのUI作成が可能になる。この機能は既にVisual Studioにも統合されている。
React Native for Windowsは現在、Microsoftのサポートの下、JavaScriptとネイティブコードとのブリッジをC++で再実装する取り組み「vnext」が進んでいる。これによって、React Native for Windowsを使って開発されたアプリのパフォーマンス向上が期待されている。
Microsoftは、Windowsにおけるコマンドラインインタフェース(CLI)の機能強化を進めている。新しい「Windows Terminal」では、「コマンドプロンプト」「Windows PowerShell」などをはじめ、「Windows Subsystem for Linux」(WSL)のシェルなどを統合し、タブインタフェースで切り替えて利用することが可能。開発者やITエンジニアが、自分にとって使いやすいCLI環境を構築できるカスタマイズ性を備えている。
また、Unicodeをフルサポートし、合字や絵文字なども表示可能となっている。現在、新しいWindows Terminalは、Microsoft Storeにおいてプレビュー版が入手可能となっており、2019年の冬には「Windows Terminal 1.0」として正式にリリースされる予定だ。
Windows 10においてLinuxの互換環境として提供されている「WSL」。その最新版となる「WSL 2」が発表された。従来のWSL(WSL 1)では、Linux向けのシステムコールを逐次WindowsのAPIコールに変換していたが、WSL 2ではアーキテクチャを一新。Windowsに統合されたLinuxカーネルを軽量な仮想マシン上で直接動かすことで、従来よりもさらに互換性とパフォーマンスに優れたLinux環境を実現するという。
このアーキテクチャの変更により、DockerのようなシステムもWSL 2上で稼働させることが可能になっているという。また、ファイルシステムのパフォーマンスも向上。基調講演では、WSL 1とWSL 2で同時にNPM(Node Package Manager)のインストールを開始し、どちらが早くインストールを完了できるかの比較映像も流された。
結果は、WSL 1が31.5秒だったのに対し、WSL 2では4.4秒で完了。スパタロウ氏によれば「(WSL 2では、WSL 1と比べて)ビットクローンが約2.5倍、cmakeが約3.1倍高速化する」という。
Microsoft 365に含まれるWebブラウザ向けの「Office Online」をはじめとするアプリケーション群において、複数ユーザーによるリアルタイムな共同作業を可能にするフレームワークとして発表したのが「Fluid Framework」だ。Fluid Frameworkが採用しているドキュメントモデルでは、コンテンツの内容を適切に分割することによって、利用しているアプリケーションの垣根を越え、複数ユーザー間の高度な共同編集が可能になるという。また、AIやbotなどを透過的にこの作業環境に導入することで、編集中のドキュメントに対する自動翻訳や、提案機能などを組み込むこともできる。
デモでは、「Word Online」での共同作業において、1人が入力した文章が8カ国語にリアルタイム翻訳され、それぞれのクライアントに同時にプッシュされる様子が披露された。
また、「Teams」のチャット画面とWord Online上で表コンポーネントを同時編集したり、Word Onlineと「Excel Online」を利用しているユーザー間で数式を同時編集したりする様子も示された。
Fluid Frameworkは2019年にリリースの予定で、Microsoft 365に含まれる各アプリケーションへの搭載に加え、開発者向けのSDKも公開する見込みだ。
2018年12月、MicrosoftはWebブラウザ「Microsoft Edge」で独自エンジンの利用をやめ、オープンソースプロジェクトである「Chromium」をベースとして開発していくことを正式に発表した。現在、この「Chromium版Edge」は、Windows 7/8/8.1/10、macOS向けのプレビュー版が公開されている。
de:code 2019の基調講演では、開発中の新機能を幾つか紹介した。
一つは「Internet Explorer」(IE)とのレンダリング互換性を確保する「IEモード」だ。もともとEdgeは「最新のWeb標準への完全準拠」をうたい、IEに代わるWindowsの標準Webブラウザとして開発が進められてきた。Microsoft自身も、ユーザーにIEからEdgeへの移行を進めるよう訴えてきたが、特に企業においては、IEの独自機能に依存したWebアプリが現在も多く残っており、必要に応じて、IEと他のブラウザを使い分けざるを得ないといった状況がある。新しいEdgeのIEモードでは、IE向けに作られたWebページのEdge上での閲覧が可能。タブの一つとして表示できるため、IEコンテンツのために、別途IEを立ち上げる必要がなくなるという。
その他、Chromium版Edgeには、アプリローンチャも組み込めるWebページのカスタマイズ機能、ユーザー行動をトラッキングするサードパーティーの機能を個別に制限できるプライバシー制御機能なども実装予定となっている。
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