IDC Japanは、IoTが生み出す価値を最大化するには「データエコシステム」の形成が必要だと主張する。IoTを活用したビジネス競争が激化する一方、外部データを活用して新市場を創造する「データエコシステム」の世界にはまだ競合相手が存在しないと見ている。
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IDC Japanは2019年7月22日、国内IoT関連企業の「データエコシステム」に対する取り組み状況の調査結果を発表した。同社は、IoT(モノのインターネット)が生み出す価値を最大化するには、企業が所有するデータと、企業外部のデータを可能な限り組み合わせて活用するデータエコシステムの形成が必要だと指摘する。
同社の調査によるとIoT機器市場は高い成長が見込まれる。具体的には、全世界のIoT機器の普及台数は2025年に416億台に達し、IoT機器が1年間で生成するデータ総量は同年に79.4兆GBに達する見込みだ。
こうしたIoT機器市場では、さまざまなベンダーがIoT基盤を中心としたサービスを提供している。ただ、IoTで共通的に使われる汎用(はんよう)機能はどのベンダーも標準実装しつつある。「機能のみでサービスを特徴付けることが難しくなってきている」とIDCはいう。そのためベンダーは、用途特化型IoTサービスと「共創を支える人材や組織変革」という2つの領域での取り組みを強化している。
ところがIDCは、こうした戦略によってIoTの活用範囲が広がっても、そこで活用されるデータが企業の特定部門にサイロ化されていては、大きなビジネス価値を生み出すのは困難だとしている。データエコシステムの形成が必要だと同社が主張するのは、こうした理由からだ。
IDCは、企業が外部データの活用を推進するデータエコシステムの構成要素として「データ取引基盤」「データ流通推進活動」「Data as a Service」の3つが広がりつつあるとしている。同社は、短期・中期的には、IoTデータをオンラインやオフラインのマーケティングデータとともに流通させることで、データエコシステム市場の成長をけん引すると予測する。さらに企業のIoTを活用したビジネス競争が激化する一方、外部データを活用して新市場を創造するデータエコシステムの世界にはまだ競合相手が存在しないと見ている。
IDC Japanでコミュニケーションズのシニアマーケットアナリストを務める鳥巣悠太氏は、「ベンダーは用途やシナリオに特化したIoTサービスの提供や企業との共創活動を、データエコシステム形成を前提として進めるべきだ。ベンダーはIoTに取り組む企業の経営層のビジョンやマインドセットを見極め、啓蒙(けいもう)活動やコンサルティングを通じ、データエコシステムの世界に引き上げる努力が必要だ」と述べている。
なおIDCでは、企業がIoT基盤を通じて収集するIoTデータや基幹系システムなどに蓄積しているデータなど、企業が所有するさまざまなファーストパーティデータを、外部のセカンドパーティ/サードパーティデータと掛け合わせ、あらたなビジネスモデルを創出するために形成するステークホルダーの集合体を「データエコシステム」と定義する。
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