就活サイト「リクナビ」が就活生の「内定辞退率」を企業に販売し、影響を受けた(と思われる)学生の就職活動の妨げとなった。問題の根源は何か、リクナビが反省すれば問題は解決するのか――HR業界の闇を明らかにするために、あのフリークたちが集結した!
大手就活サイト「リクナビ」を運営していたリクルートキャリアが、学生の同意を得ないまま履歴書情報とWebアクセス履歴を突き合わせ、機械学習技術を用いて「内定辞退率」を予測し、「リクナビDMPフォロー」(リクナビDMP)というサービス名で34社に販売していた事件は、大きな反響を呼んだ。学生や大学からの反発はもちろんだが、個人情報保護委員会や公正取引委員会、厚生労働省がリクルートキャリアに行政指導を行い、改善を求める事態になっている。
一般財団法人情報法制研究所(JILIS)は2019年9月9日、この問題を踏まえ、「就活サイト『内定辞退予測』で揺れる“個人スコア社会”到来の法的問題を考える」と題するセミナーを開催した。JILIS理事長の鈴木正朝新潟大学法学部教授の他、上席研究員の山本一郎氏、参与の板倉陽一郎弁護士、理事の高木浩光氏によるパネルディスカッションに加え、行動経済学の観点からは京都大学大学院経済学研究科の依田高典教授が、労働法の視点から倉重公太朗弁護士が参加し、各自の専門分野に基づいた意見を述べた。
当初200人の予定で募集した会場はあっという間に埋まり、500人規模の会場が埋まるほどの盛況となった。
この件では、学生のWebサイトの閲覧履歴をリクルートキャリアが取得、分析し、「内定辞退可能性」を5段階で評価し、企業に数百万円という価格で提供していた。リクルートキャリアではWeb閲覧時のCookieを収集し、前年度の実績と突合することによって、内定辞退の可能性をはじき出していたというが、詳細な方法は明らかにされておらず「ブラックボックス」のままだ。
これについて鈴木氏は、「本人のことを考えずに、己の業のために野放図に使っていたことを、個人情報保護委員会も厚生労働省も真正面から叱責(しっせき)している」と指摘した。
板倉氏も「そもそも(このやり方は学生からの)同意がとれるわけがないのに、『同意スキーム』でやっていたこと自体がおかしい」とばっさり切って捨てた。さらに、2014年には就活生に対して大量のエントリーをあおってきたことが批判を集めた事実にも触れ、「大量にエントリーすれば必然的に内定辞退率も高まる。一方、内定辞退率は人事担当者のKPIになっている。そこに内定辞退可能性の情報を売るという、まるで武器商人のようなことをしている」と指摘した。
「やる前にじっくり考えて、お天道様の下で恥ずかしくないことをやっていくしかない。技巧的な法律構成ですり抜けても意味がなく、正々堂々と、ちゃんと説明できることをやるべきだ」(板倉氏)
「利用者であり、データ提供者である国民の幸福という原点に立ち戻るべきだ。国民が後から聞いてびっくりするような、不快感を与えるような利用の仕方をしていなければ、こうはならなかった。その利用者目線よりも、自分たちのビジネスに目がいって、想像力が欠けていた」と依田氏も述べた。
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