リバースエンジニアリングしたけど、もうけてないから問題ないでしょう?「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(71)(2/3 ページ)

» 2019年11月18日 05時00分 公開

ポイントは「相手に損害を与えたかどうか」

 判決の内容を見てみたい。

大阪高等裁判所 平成22年4月22日 判決から(つづき)

被告のプログラムは、トレードごとの成績を個別に検証し、適切なパラメータを設定することによって、(元のプログラムを)より多くの利益を獲得できるものにする目的で作成したものであって、販売目的で作成されたものではなかったことが認められる。

これらの事情を総合考慮すると、被告プログラムが(元の)プログラムの複製物、翻案物であると評価されたとしても、原告に財産的又は非財産的損害が発生したものということは到底できない。

 結果は、「リバースエンジニアリングの内容や方法」ではなく、「それによって著作権者(原告)に損害が発生したか否か」で判断された。

 簡単にいえば、「相手に損害を与えない限り、リバースエンジニアリング自体は不法行為ではない」ということだ。同じような機能を持つソフトウェアを販売してシェアを奪ったり、元のプログラムへの攻撃に利用したりするようなことが行われ、何らかの損害を与えたのでなければ問題ない、と解釈できる。確かに「損害がなければ不法行為には当たらない」という考えは自然である。

 ただ、かつてプログラムの開発者だった筆者には、作成したプログラムが勝手に利用されてもそれだけでは問題にならないとする判決には、違和感を拭えない。さらに本判決には、ソフトウェアに対する時代の要請ともいうべきものを感じざるを得なかった。

 作成したプログラムに込めた技術や工夫は、それをリリースした途端に自分だけのモノではなくなる時代なのだ。

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