AWS re:Invent 2019における、インフラ/データベースに関する大量発表の文脈AWS re:Invent 2019リポート(3)(1/2 ページ)

Amazon Web Services(AWS)は12月第1週に開催した「AWS re:Invent 2019」で、同社が定義する意味での「値下げ」は発表しなかった。代わりに、インフラ関連では自社開発ハードウェアの活用をはじめ、「あの手この手」でパフォーマンスあるいはコストパフォーマンスを向上させる自社の取り組みをアピールした。

» 2019年12月18日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

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 AWS re:Invent 2019で、「JEDI」と呼ばれる国防総省との契約をマイクロソフトが獲得した件について聞かれたAmazon Web Services(AWS)のCEO、アンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏は、「(サービスの)奥深さと幅広さではどこにも負けない」と話した。同氏は、2018年のAWS re:Inventに引き続き2019年もこの表現を用い、特にインフラ/データベース関連でさまざまなサービスプロダクトを発表した。

「Graviton2の開発はGraviton1と並行して進めてきた」

 AWSはre:Invent 2019で、仮想インスタンスを意識することなくコンテナオーケストレーションが利用できる「AWS Fargate」を、マネージドKubernetesサービスの「Amazon Elastic Kubernetes Service(Amazon EKS)」に適用、これを「Amazon EKS on AWS Fargate」として発表した。Fargateはこれまで、AWS独自のマネージドコンテナオーケストレーションサービスである「Amazon Elastic Container Services(Amazon ECS)」でしか使えなかった。

 こうしたコンテナサービスをはじめ、スケールアウト型のワークロードにおけるコストパフォーマンスを向上させる方策の1つとして、2018年のre:InventでAWSが発表したのがArmベースの独自プロセッサーである「AWS Graviton Processor」。

 今回は第2弾の「AWS Graviton2 Processor」と、これを採用した仮想インスタンス群を発表した。Graviton2はGraviton1に比べて、7倍の性能、4倍のコンピュートコア数、5倍高速なメモリを搭載。さまざまな構成のインスタンスを通じ、Graviton1よりも幅広い用途に使えるという。

Graviton2を採用したEC2インスタンスとして、M6g、R6g、C6gを発表した

 ジャシー氏によると、AWSはGraviton2の開発をGraviton1と並行して進めてきたという。

 「(当初、)第1世代のGravitonチップでどれくらいのイノベーションが起こせるかが不確実だったため、第1世代の開発チームとは別に、第2世代の開発チームを設け、(このチームが)作業を進めてきた」(ジャシー氏)

 ジャシー氏は、Graviton1を採用したA1インスタンスの利用が「驚くほどの」ペースで広がっているとしながら、Graviton2ベースのインスタンスではx86 CPUを使った同等のインスタンスに比べて価格性能比が最大40%向上するとアピールした。

 AWSはGraviton2で、事実上6タイプのインスタンスを発表し、アプリケーションサーバ、ミッドサイズデータストア、コンテナ/マイクロサービス、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、 ビデオエンコーディング、シミュレーション、オープンソースデータベース、インメモリキャッシュなどに生かせるとしている。

 Graviton シリーズは、Armベースのコアを、後述の「AWS Nitro System」と組み合わせているのが大きな特徴。単なるArmベースのCPUではなく、I/Oなどのアクセラレーション(高速化)を加えて、アプリケーションパフォーマンスを高めている。

「データレイクは、単一の技術では賄えない」

 「データレイクは、単一の技術では賄えない」。ジャシー氏はこういい、データの利用目的/アプリケーションに応じて汎用オブジェクトストレージの「Amazon S3」、リレーショナルデータベースの「Amazon RDS」「Amazon Aurora」、NoSQLデータベースの「Amazon DynamoDB」、データウェアハウスの「Amazon Redshift」といったデータ管理サービスに適材適所で格納したデータを、分析のために動かすことなく、目的に応じてさまざまなやり方で活用できるようにしていくべきだとの考えをあらためて示した。

データがサイロ化してしまっては活用しきれないとアピール

 そして、NoSQLデータベースのApache Cassandraをマネージド型で提供する「Amazon Managed Apache Cassandra Service(MCS)」を発表し、データ管理における選択肢をさらに増やした。

 MCSは「サーバレス」で、サーバを意識せずに利用できる。トラフィックに応じてテーブルを自動的にスケールアップ/ダウンし、事実上無制限のスループットとストレージを実現するという。

 一方Amazon S3は、Apache Sparkなどを使った分析の「Amazon EMR」、S3データに対して直接SQLクエリが行える「Amazon Athena」、RedshiftからS3データに直接クエリが行える「Amazon Redshift Spectrum」といった機能を通じて分析ができるようになっている。

 今回のre:Inventでは、Redshiftのクエリ結果を「Apache Parquet」と呼ばれる効率的な形式で、S3に出力できる「Amazon Redshift Data Lake Export」という機能を発表した。Apache Parquet形式は、テキスト形式に比べてデータを2倍の速度でS3に出力でき、データ量も6分の1に抑えられるとする。Redshift上でのデータ処理を生かし、S3上に移したデータにRedshift Spectrum(あるいはAthena、EMR)で効率的にアクセスできるという。

 AWSはまた、RedshiftからS3、RDS、Auroraにまたがるクエリができる「Amazon Redshift Federated Query」を発表した。当初、RDSとAuroraでこの機能を利用できるのはPostgreSQL版のみ。だが、AWSの担当者は「PostgreSQLから始める」と話し、他のデータベースにも適用を拡大していくことを示唆した。

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