Windows 10のあの不具合はどうなった? 2019年のトラブルを振り返るその知識、ホントに正しい? Windowsにまつわる都市伝説(151)

間もなく2019年も終了。締めくくりは、筆者が2019年(一部は2018年から)注目した「Windows 10の不具合」のその後を振り返ります。修正された不具合もあれば、依然として放置されている不具合もあります。

» 2019年12月25日 05時00分 公開
[山市良テクニカルライター]

この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。

「Windowsにまつわる都市伝説」のインデックス

Windowsにまつわる都市伝説

2019年のWindows Updateは12月11日でおしまい!

 あくまでも筆者の個人的な感想ですが、2019年もまた、「Windows Update」や「Microsoft Office」の更新に振り回された感じがしています。新年早々、更新によって「Microsoft Excel 2010」が起動しなくなるというトラブルから始まりました。

 1月の更新では「Windows 7」と「Windows Server 2008/2008 R2」でネットワーク共有やRDP(リモートデスクトッププロトコル)接続の認証エラーというのもありました。5月までは改元に伴うWindows、.NET Framework、Officeに対する修正が続き、日付処理の仕様変更が混乱を引き起こした記憶があります。

 最近では11月の更新が原因で「Microsoft Access」の全バージョンの一部のクエリがエラーになるという、Accessを業務アプリで使用している企業にとっては痛い問題もありました。

 これらの問題は、問題が発覚してすぐに、あるいは1カ月ほどで修正されました。5月の「Windows 10」バージョン1903からの「半期チャネル(対象指定)」(SAC-T)の廃止や11月のWindows 10 バージョン1909の機能更新プログラムのイネーブルメントパッケージを使用した新しい配布方法の試み(将来のバージョンでも採用される予定はいまのところないようです)も、Windowsの更新管理を混乱させていると思います。

 さて、Microsoftはサポート対象のWindows、.NET Framework、「Adobe Flash Player」に対して、毎月第2火曜日(米国時間)に新たなセキュリティ更新を含む品質更新プログラム(Windowsと.NET Frameworkは累積更新プログラム、"B"リリースとも呼びます)を配布し、その翌週("C"リリース)または翌々週("D"リリース)にWindowsと.NET Frameworkに対してセキュリティ以外の修正を含むオプションの品質更新プログラム(これも累積更新プログラム)を提供しています。

 2019年12月の"B"リリースは11日となりましたが、Windows 10(およびWindows 10の.NET Framework)についてはこれが2019年最後の更新プログラムです。この件に関しては、毎月の後半にリリースされるオプションの更新プログラム("C"または"D"リリース)が提供されないことが、11月の"B"リリース時に「Message Center」(https://docs.microsoft.com/en-us/windows/release-information/windows-message-center)を通じて発表されました(2018年は12月にホリデーシーズンを理由に同様の措置が行われました)。

 既に12月の"B"リリースまで更新済みなら、安心して新年を迎えてください。なお、12月のWindows Updateでは、「Windows Server 2012」が更新後に再起動を繰り返し正常に起動しなくなることがあるという問題が報告されています。再起動を繰り返す問題を解消する方法はありますので、該当する場合は以下を参照してください。

 "C"および"D"リリースが11月と12月にないのは、Windows 10および「Windows Server 2016」以降の話です。「Windows 8.1」「Windows Server 2012 R2」以前については12月中にオプションの更新プログラムがまだあるかもしれません(11月はありました)。もちろん、Windowsのバージョンに関係なく、定例外で緊急のセキュリティ更新(“Out-of-band”リリース)が配布される可能性は残っています。

 更新プログラムに起因する重大な問題は、翌月の"B"リリースまでには修正されてきました。しかし、一部の問題については、修正されることがないまま放置されているものもあります。筆者が本連載や別の連載で取り上げた問題について、その後を見てみましょう。

タスクスケジューラの曜日指定「9:00」開始問題〜未解決

 Windows 8.1、Windows Server 2012 R2、Windows 10 バージョン1607、Windows 10 バージョン1903、Windows Server 2016には、曜日指定で日本時間「9:00」開始にスケジュールされたタスクが前日と当日に2回実行されるという、摩訶不思議なバグが存在します。

 この問題は、Windows 10 バージョン1903はリリース時点で最初から、それ以外のバージョンは2019年3月後半の累積更新プログラムで発生するようになった問題です。本連載第144回では、Windows 10 バージョン1903、Windows 8.1、Windows Server 2016の3台で再現テストを実施し、開始時間を日本時間「9:00」から0.01秒でも前後にずらせば問題を回避できることを示しました。

 その後、この問題が解決されたという情報はありません。第144回で再現テストを実施したWindows 10 バージョン1903はバージョン1909に更新しましたが、1つだけ残していた「毎週金曜日9:00」開始のタスクは、その後も木曜日と金曜日の2度実行され続けています(画面1)。

画面1 画面1 再現テストのために仕込み、その後も残していた「毎週金曜9:00」開始のタスクは、木曜と金曜の2度実行され続けていた。木曜日の誤った実行が1度抜けているのは、恐らくその時間にPCがオフ状態だったから

更新の延期設定が消える問題〜解決済み

 本連載第143回では、Windows 10 バージョン1903のリリース時点から存在する不具合として、「設定」アプリの「Windows Update」の「詳細オプション」で機能更新プログラムや品質更新プログラムに「1」日以上の延期設定を行うと、「更新プログラムをいつインストールするかを選択する」が表示されなくなり、「0」以外に設定した設定項目も表示されなくなるという問題を報告しました。

 実は、この問題は最新のWindows 10 バージョン1909でも修正されないまま、10月中旬にRTM(Release To Manufacturing)となりました。しかしながら、2019年10月後半の以下のオプションの更新プログラム("D"リリース)でようやく修正されました。

 Windows 10 バージョン1903とバージョン1909は累積更新プログラムが共通であり、バージョン1903の場合はビルド18362.449以降、バージョン1909の場合は18363.449以降であれば問題は解決済みです。Windows 10 バージョン1909の11月の正式リリースには修正が間に合ったことになります(画面2)。

画面2 画面2 ビルド18362.449以降(バージョン1903)またはビルド18363.449(バージョン1909)以降であれば、「更新プログラムをいつインストールするかを選択する」が消えてしまう問題は解決済み

謎のショートカット問題〜条件付きで解決

 筆者のもう一つの連載では、Windows 10 バージョン1903にアップグレードした後に気が付いた、スタートメニューの「その他」に分類される謎のショートカット「ms-resource:AppName/Text」や「ms-resource:AppName/Text」について報告しました。この“謎のショートカット”を完全に消す方法もないわけではなかったのですが、ハードルが高いため、見て見ぬふりをすることをお勧めしました。

 上記記事にも最新情報として追記しましたが、この問題に対する修正はWindows 10 バージョン1903向けの2019年8月末の累積更新プログラム("D"リリース)に含まれます。ただし、既に謎のショートカットが存在しているWindows 10 バージョン1903にこの累積更新プログラムを適用してもショートカットが消え去るわけではありません。新たにWindows 10の以前のバージョンからWindows 10 バージョン1903(ビルド18362.329以降)にアップグレードした場合に、謎のショートカットが作成されないようにする修正です。

以前のバージョンの Windows 10 から Windows 10 Version 1903 にアップグレードする際、[スタート]メニューに空白のタイルを表示させないようにします。 ただし、既に Windows 10 Version 1903 にアップグレードしている場合は、この更新プログラムをインストールしても既存の空白のタイルは削除されません。

 Windows 10 バージョン1909は、Windows 10 バージョン1903に対してWindows Updateまたは「Windows Server Update Services(WSUS)」からの以下の「イネーブルメントパッケージ」を利用した、最小ダウンロードと短時間の更新が可能です。しかし、このイネーブルメントパッケージを利用したアップグレードでは、Windows 10 バージョン1903にあった謎のショートカットが消えることはありませんでした(画面3)。

画面3 画面3 Windows 10 バージョン1909になっても謎のショートカットはまだそこに残っていた(ただし、イネーブルメントパッケージを利用した機能更新の場合)

 Windows 10のダウンロードサイト(https://www.microsoft.com/ja-jp/software-download/windows10)からのアップグレードなど、従来方式のアップグレードなら謎のショートカットは消えていたかもしれません(筆者は未確認)。「Windows 10 バージョン2004」になるといわれている次回「20H1」の機能更新プログラムに期待して、またしばらく見ないふりを続けることにします。

縦書きの文字の一部が横書き問題〜未解決

 最後に、Windows 10 バージョン1803から放置されている問題について。Windows 10 バージョン1803では、一部のアプリで縦書き文字の一部(ダッシュや3点リーダーなど)が横文字のまま表示されるという問題がリリース時から存在します。

 その後、一部の文字は修正(以下の画面4の3点リーダー「…」は当初は横書きでした)されましたが、全ての文字について修正されたわけではありません。その後のWindows 10 バージョンでも状況の進展はありません。

画面4 画面4 Windows 10 バージョン1909とWindows 8.1で同じリッチテキストを開いたところ。Windows 10 バージョン1803以降、「ワードパット」で縦書き文書を作成すると、一部の文字が横書きのままに

 ジャストシステムの「一太郎」については、Microsoftによる修正とは関係なく、一太郎側で問題の解決が行われたようです。

 筆者の環境でこの問題の影響を受けるのは、Windowsに組み込まれている「ワードパッド」(wordpad.exe)くらいです。「Microsoft Word」には影響しませんし、そもそもWindows 10でワードパットを使って、縦書きの文書を作成する人なんてほとんどいないでしょう。ワードパットで縦書きの文書を作成することはできますが、文書を横倒しの状態で作業することになるからです。

新たなる問題、エクスプローラーの検索ボックスが応答しない

 Microsoftが公開しているWindows 10 バージョン1909の既知の不具合リストにはありませんが、「エクスプローラー」の検索ボックスの仕様変更と応答しなくなる問題に気が付いた人はいると思います。

 Windows 10 バージョン1903までは、検索ボックスに検索ワードを入力すると「検索場所:<フォルダ名>」ウィンドウに検索結果が表示され、検索ボックスの「×」をクリックすると元の場所に戻る仕様でした。

 Windows 10 バージョン1909からは、検索ボックスにカーソルを移動すると過去の検索ワードが一覧表示され、新たに検索ワードを入力するとウィンドウの場所はそのままに、検索された結果と検索ワードの履歴がドロップダウンリストに表示される形になりました。また、[Enter]キーを入力するか、虫眼鏡アイコンをクリックすると「検索場所:<フォルダ名>」ウィンドウに検索結果が表示されるようになりました(画面5)。

画面5 画面5 Windows 10 バージョン1909(左)とバージョン1903(右)のエクスプローラーの検索ボックスの挙動の違い。挙動の違いだけでなく、バージョン1909の方は応答しなくなる問題がある

 この新仕様には慣れないと違和感を覚えるかもしれませんが、問題はそこではありません。筆者が確認した限りでは、検索ボックスが応答しなくなることがある、「×」をクリックしても元の場所に戻らないなどの問題があるのです。

 検索ボックスが応答しなくなる問題は、エクスプローラーのウィンドウサイズを変更すると簡単に再現できます。応答しなくなった場合、別のウィンドウやタスクバー、デスクトップの背景をクリックしてからエクスプローラーのウィンドウに戻ることで、再び検索できるようになることもあります(ダメな場合はエクスプローラーを開き直すとよいようです)。この問題は12月の"B"リリースでは解消されなかったので、修正されるとしても2020年に持ち越しとなりました。

 最後になりますが、タスクスケジューラの問題と縦書き文字の問題が解決される日は果たしてくるのでしょうか。タスクスケジューラの問題の方は、再現テストに仕込んだタスクを放置して、気長に待ってみることにします。縦書き文字の問題については、日本語環境だけの問題であり、ごく一部のアプリに影響するだけで、回避策(影響のない書体に変更するなど)もあるので、このまま放置されるような気がします。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スポンサーからのお知らせPR

注目のテーマ

Microsoft & Windows最前線2025
AI for エンジニアリング
ローコード/ノーコード セントラル by @IT - ITエンジニアがビジネスの中心で活躍する組織へ
Cloud Native Central by @IT - スケーラブルな能力を組織に
システム開発ノウハウ 【発注ナビ】PR
あなたにおすすめの記事PR

RSSについて

アイティメディアIDについて

メールマガジン登録

@ITのメールマガジンは、 もちろん、すべて無料です。ぜひメールマガジンをご購読ください。