日本マイクロソフトは2020年1月23日、デジタルトランスフォーメーションのためのデータ活用で、専門部隊が企業に対しコンサルティング/アドバイスを提供する日本独自のプログラム、「X(クロス)インテリジェンス・センター」の本格稼働を開始した。一般的なコンサルティング/販促活動とは異なる方向性を模索しているようだ。
日本マイクロソフトは2020年1月23日、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)のためのデータ活用で、専門部隊が企業に対しコンサルティング/アドバイスを提供する日本独自のプログラム、「X(クロス)インテリジェンス・センター」の本格稼働を開始したとし、その活動内容を説明した。パートナーの一社として電通デジタルが参加していることに象徴されるように、日本マイクロソフトは一般的なコンサルティング/販促活動とは異なる方向性を模索しているようだ。
X(クロス)インテリジェンス・センターは、「DXのためのデータ活用で、何をどうやればいいのか見当がつかない」という悩みを持つ企業に、ワークショップなどを通じたコンサルティングを提供するサービス。データでビジネスを変えていくための全社的な取り組みにおける、データおよび人に関する課題の解決を目的としているという。
データに関する課題解決では、生産/販売管理、顧客管理、営業情報、販売情報、保守情報など散在するデータを、全社的な観点からどう連携・分析すると、ビジネスをどのように変革できるか、データを活用したフィードバックループをどう構築できるかについてのアドバイスを提供するという。
また、人に関する課題解決では、日本企業にDX推進人材が不足している点や、データ活用に関して社内にステークホルダーが多く、まとまりにくい点に着目。顧客企業と共同でアイディアソンやハッカソンを実施し、管理者・経営層に「成功体験を実感してもらう」という。
日本マイクロソフトはXインテリジェンス・センターのサービスを、顧客に無償で提供する。つまりMicrosoft Azureのデータ関連サービスに関する営業活動の一環であることは事実だが、今回のサービスは特定の製品・サービスの使い方よりもはるか上流がテーマだと、同社執行役員常務でクラウド&ソリューション事業本部長の手島主税氏は話す。
「Amazon Web Servicesに蓄積したデータを、どう活用すればいいか教えて欲しい」といった顧客からのリクエストも受けていると同氏はいう。
日本企業の大部分はITアプリケーションの構築・運用をアウトソーシングしてきたため、データから全社的なビジネス上の価値を引き出すための設計や、社内環境の整備がイメージできないケースが多い。Xインテリジェンス・センターでは、社内で誰がどのような権限を持って、DXのためのデータ活用を推進するかといった点を含めてコンサルティングを行うという。
また、「顧客のデータ活用ニーズは、マイクロソフトだけで満たせるものではない。オープンにやっていく必要がある」と手島氏はいう。このためXインテリジェンス・センターでは、他社との連携を進める。協同パートナーとしてはISAO、Informatica、ジール、システムサポート、ブレインパッド、電通デジタルの名を挙げているが、今後拡大していきたいという。
電通デジタルの動きは興味深い。同社執行役員でデータ/テクノロジー領域担当の小林大介氏によると、広告代理店は統合マーケティングソリューション提供者に変身していかざるを得ない。企業のマーケティング担当部署は、広告支出を減らす一方、ITへの投資を増やしており、今後広告代理店にとって手ごわい競合相手となり得るのは企業活動の基幹部分を担うITシステムベンダーだという。
電通デジタルは自社の取得する多様な消費者情報を統合したデータ基盤を構築済み。2019年からは、このデータ基盤と顧客のCRM(顧客情報管理基盤)との情報連携で、顧客の属性情報や行動履歴と、広告やキャンペーンを連動するサービスを展開し始めているという。
今後は在庫をはじめとする顧客のサプライチェーン情報との連携による「デマンド―サプライ連結」などの可能性も探りたいという。こうした観点で日本マイクロソフトと協力し、何ができるのかを探っていきたいという。
企業におけるビジネスのためのデータ活用には多様な側面がある。社外データとの連携によって、社内データが生きることもある。こうしたさまざまな可能性を、日本マイクロソフト自身も探ろうとしているようだ。
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