2020年にCIOが試すべき技術は何か――Gartnerアナリストが解説Gartner Insights Pickup(146)

多くの“革新的”とされる技術が生まれ続けている。では2020年、CIOがフォローするだけではなく実際に試してみるべき技術は何か。ブロックチェーン、拡張インテリジェンス、IoT、機械学習などのトピック別に、Gartnerのアナリストが注目すべきポイントを挙げる。

» 2020年02月21日 05時00分 公開
[Kasey Panetta,Gartner]

ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。

 新興技術にいつ、どのように投資すべきかを知るCIO(最高情報責任者)は、デジタルを企業の中核に据えて真の違いを生み出し、競争上の差別化を実現する戦略的な意思決定ができる。Gartner IT Symposium/Xpo 2019でプレゼンテーションを行ったGartnerのアナリストに、2020年にCIOが注目すべき技術について話を聞いた。

グラフテクノロジーと拡張インテリジェンス

  • バイスプレジデント アナリスト、スベトラーナ・シキュラー(Svetlana Sicular)氏

 CIOは、グラフテクノロジー(グラフデータベース)に目を向け始めるべきだ。この技術は以前から存在するが、脚光を浴びてこなかった。ところが、モダンなデータとアナリティクスの要件から、グラフテクノロジーは一転して大きな関心を集めるようになった。この技術は構造化データと非構造化データを組み合わせられ、リアルタイム分析やコンテキスト抽出に適しているからだ。

 例えば、グラフは、顧客の360度ビューを迅速かつ効率的に構築できる、魅力的な技術だ。グラフを使えば、顧客に関する個々のデータエンティティだけでなく、そうした要素間のつながりも得られるからだ。グラフを効果的に活用できる他の分野には、ルート最適化やレコメンデーション、詐欺検知、マネーロンダリング対策などがある。

 また、拡張インテリジェンスも、人工知能(AI)の価値を最大限に引き出す設計アプローチとして急速に浮上している。拡張インテリジェンスにより、AIを利用して人間の限界を補うとともに、AIの可能性を広げられる。当初、多くの早期採用企業は、AIが真価を発揮するのは完全自動化だと考えた。しかし、今では、完全自動化は非常にコスト高で複雑なことを理解し始めている。こうした企業はより現実的な見方をするようになり、拡張インテリジェンスを利用して、自動化の限界を人間の創造性や柔軟性、適応性で補おうとしている。これは、AIを人間のアシスタントとして扱い、人間をAIのアシスタントとして扱うということだ。

拡張アナリティクス

  • ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリスト、リタ・サラム(Rita Sallam)氏

 ほとんどの企業において、アナリティクスは価値を生み出すための戦略的な要素となっている。だが、アナリティクスは重要な転換点を迎えている。データの複雑さが増す中、どの部署の従業員も大量のデータを持て余し、「最も重要なことは何か」「取るべき最良の行動は何か」を見極めるのに苦労している。データセットの組み合わせがより大規模で多様になると、分析や探索、テストすべき変数や関係も増えてしまうからだ。拡張アナリティクスは、全社のさまざまな部署のユーザーに、知る必要があることだけを提示する重要な機能を担うようになっている。

 拡張アナリティクスは、開発や管理、デプロイの多くの側面を自動化することで、データサイエンティストの生産性を向上させるとともに、データサイエンスや機械学習のモデル作成を、これらの分野のスキルで劣る広範なユーザーが行えるようにする。その中には、新しい“市民データサイエンス”の担い手(ビジネスアナリスト、開発者など)が含まれる。

IoTとデジタルツイン

  • バイスプレジデント アナリスト、アルフォンソ・ベロサ(Alfonso Velosa)氏

 CIOは、IoT技術とビジネスポリシー、アーキテクチャ、戦略を組み合わせた取り組みを試し、実行すべきだ。ほとんどの企業がIoTの導入を急ピッチで進めており、それは通常業務のためにIoT対応の新しい資産を購入しているか、あるいはビジネスプロセスの改善や業務コストの削減に取り組んでいるからだ。

 企業は資産、従業員、顧客のデータを利用して、生産性を新たなレベルに引き上げることや、新たな収益源を開拓することを目指している。首尾一貫したIoTビジネス戦略およびポリシーがない企業は、技術的な実装の非互換や、データに関する権利の消滅、文化的な抵抗、GDPR(EUの一般データ保護規則)のような規制による制裁のリスクといった問題に直面する恐れがある。

 CIOはデジタルツインも試すべきだ。デジタルツインは、デジタルプロジェクトの基盤となるビルディングブロックだ。ITチームは、企業がデジタルツインをどのように作成、使用、統合するかを見いだしていく必要がある。今、デジタルツインの価値を実現する取り組みの計画を立て始め、デジタルツインがもたらす機会とリスクを理解することが重要だ。また、デジタルツインを試すことで、エコシステムや競争という要因に左右されることなく、デジタルツインの独自ビジョンの構築を図れる。

ブロックチェーン

  • ディスティングイッシュト バイスプレジデント アナリスト、デイヴィッド・ファーロンガー(David Furlonger)氏

 分散コンテキストで使用されるトークン化が市場と企業に根本的な影響を与えることから、CIOはブロックチェーン技術を明確に理解する必要がある。これは純粋な研究開発に関することではない。CIOは、巨大デジタル企業や巨大多国籍企業が、集中管理戦略によっていかに市場支配を強化できるかを検討する必要がある。ブロックチェーンの5つの要素を全て使うことで、CIOは競争において、こうした枠組みを超えた対応を取れる。

機械学習

  • シニアディレクター アナリスト、アレクサンダー・ブシェク(Alexander Buschek)氏

 中規模企業のCIOは、機械学習を試し始めなければならない。まず、機械学習の実際の仕組みを――例えば、時系列分析などと比べて理解する必要がある。機械学習は、大量かつ高品質なデータに依存する。提供されるデータが一貫していないと(“ノイズ”が多すぎると)、機械学習を適用するのは難しい。

出典:What Technology Should CIOs Experiment With in 2020?(Smarter with Gartner)

筆者 Kasey Panetta

Brand Content Manager at Gartner


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