AIの導入が進んでいるが、課題も残っている。企業は、AIで何ができて何ができないかを理解する必要がある。AIプロジェクトを成功に導くには、その裏にある真の障壁を克服しなければならない。
ガートナーの米国本社発のオフィシャルサイト「Smarter with Gartner」と、ガートナー アナリストらのブログサイト「Gartner Blog Network」から、@IT編集部が独自の視点で“読むべき記事”をピックアップして翻訳。グローバルのITトレンドを先取りし「今、何が起きているのか、起きようとしているのか」を展望する。
人工知能(AI)を導入する企業が増えている。「Gartner 2019 CIO Agenda Survey」によると、既に世界のCIO(最高情報責任者)の14%がAIを導入済みであり、48%が2019年または2020年に導入すると回答していた。
「AIの導入が進んでいるが、AIのビジネス効果やメリットにまだ懐疑的な企業もある。われわれは現在、AIの導入における3つの大きな障壁を目の当たりにしている」と、Gartnerのアナリストでシニアディレクターを務めるブライアン・マヌサマ(Brian Manusama)氏は語る。
第1の障壁はスキルだ。ビジネスリーダーやITリーダーは、AIを業務に導入すると業務遂行に必要なスキルが導入前とは変わることを認めている。「Gartner Research Circle Survey」では、56%の回答者が、既存の仕事をするにしても、AIの導入で生まれる新しい仕事をするにしても、新しいスキルの習得が必要になると答えている。
AIは現在、人間の放射線科医のようにレントゲン写真を分析できる。この技術が研究レベルを超えて進化すれば、放射線科医は重点をシフトさせ、診断と治療に関する他の医師へのコンサルティングや、病気の治療、画像誘導による医学的介入、治療の手続きや結果についての患者との話し合いを、主に手掛けるようになる。
第2の障壁は、未知への恐怖だ。回答者の42%が、ビジネスにおけるAIのメリットや用途を十分に理解していない。AIプロジェクトのメリットを定量化するのは、ビジネスリーダーとITリーダーにとって非常に厄介だ。売上高の成長や時間の節約など、一部のメリットは価値を明確に定義できるが、顧客エクスペリエンスの向上のようなメリットは、的確に定義したり正確に測定したりするのが難しい。
AIプロジェクトを成功させるには、有形および無形の両方のメリットを考慮し、それらの有意義な測定方法を決める必要がある。Gartnerは、2024年までにAI投資の50%がROI(投資対効果)を測定するために、効果が定量化され、特定のKPI(主要業績指標)が算出されるようになると予想している。
第3の障壁は、AIによって得られるデータスコープ全体やデータ品質だ。AIの取り組みの成否は、企業が最適な状況対応について情報を引き出せる大量のデータが得られるかどうかにかかっている。企業は、十分なデータがなければ(あるいは、直面する状況が過去データの延長上になければ)、AIの出力の精度が低下することを認識している。状況が複雑になるほど、AIが使用する既存データと食い違う可能性が大きくなることも理解している。もし状況が既存データと食い違えば、AIは有効に機能しなくなる。
企業のAI導入が進めば、AIによってより多くの仕事が生まれ、それらの仕事は2つのカテゴリーに分けられる。すなわち、社内のAI開発や実装に直接関わる仕事と、AIがもたらす大きな可能性から生まれる仕事だ。
全体的に見ると、AIは雇用を喪失させるわけではない。2020年までに、AIが雇用にもたらす効果は差し引きでプラスになる。AIは180万の雇用を喪失させる一方で、230万の新たな雇用を生み出す見通しだ。
出典:3 Barriers to AI Adoption(Smarter with Gartner)
Director, Public Relations
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