データを資産と認識しているが、データを活用した意思決定をする従業員が少ない アクセンチュア「データリテラシーによる人への影響」調査

アクセンチュアとQlik Technologiesが実施した「データリテラシーによる人への影響」に関する調査の結果によると、多くの企業がデータに基づいた経営戦略を実践したいと考えているのに対して、従業員はデータから価値を生み出すのに十分な能力を持っておらず、ギャップが生じていることが分かった。

» 2020年02月25日 08時00分 公開
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 アクセンチュアとQlik Technologiesは2020年2月21日、「データリテラシーによる人への影響」に関する調査を実施したと発表した。同調査結果によると、多くの企業がデータに基づいた経営戦略を実践したいと考えているのに対して、従業員はデータから価値を生み出すのに十分な能力を持っておらず、ギャップが生じていることが分かったとしている。

 今回の調査は、2019年9月に日本、英国、米国、ドイツ、フランス、シンガポール、スウェーデン、オーストラリア、インドの企業の正社員9000人を対象に実施した。そのうち、日本での調査対象者数は1000人。

画像 データリテラシーによる人への影響(出典:Qlik Technologies

従業員1人当たりの損失時間が最も大きかったのは米国

 同調査ではまず、情報やデータ、技術的問題が原因のストレスによって引き起こされる従業員の時間損失を調べた。アクセンチュアは「データは企業の成長や技術革新を促す文化の源泉だ」と指摘するが、従業員がデータを十分に理解できなければ、生産性やビジネス価値を低下させてしまう。

 調査結果によると、従業員1人当たりの損失時間は、毎年平均5日以上(日本では4日以上)に上っていた。生産性の損失を金額に直すと、今回の調査対象国で最も大きかったのは米国で、11.9兆円(1094億米ドル)にもなった。ドイツは2.6兆円(237億米ドル)、日本は1.6兆円(152億米ドル)、英国は1.4兆円(132億米ドル)、フランスは1.2兆円(109億米ドル)、オーストラリアは1兆円(94億米ドル)、インドは4500億円(46億米ドル)、シンガポールは4020億円(37億米ドル)、スウェーデンは3500億円(32億米ドル)だった。

データ活用における2つの課題とは

 従業員のデータを正確に読み取って活用する能力(データリテラシー)は企業が求めるレベルに達しておらず、アクセンチュアは企業がデータを活用してビジネスを進める上で次の2つの課題があることが、今回の調査で明らかになったとしている。

 1つ目は、多くの従業員がデータを資産と認識しているが、データを活用して意思決定する従業員が少ないことだ。具体的には、データを資産と認識している従業員の割合は、全世界では87%、日本人に限れば90%を占める。ところが、データを効果的に利用するために十分な準備ができていると回答した従業員の割合は、全世界の25%、日本人の15%にすぎない。データリテラシーに自信があると回答した割合は、全世界で21%、日本人ではわずか9%だった。

 さらに、データを活用することでより信頼性の高い意思決定ができると回答した割合は、全世界で37%、日本人で32%あったにもかかわらず、全世界の48%、日本人の38%が実際に意思決定するときには直感に頼ることが多いと回答した。

 2つ目は、データスキル不足による生産性の低下。今回の調査で、データを利用する際に困惑する、または不満を感じて作業効率に影響すると回答した割合は、全世界の74%、日本人の70%に及んだ。こうした従業員はデータの利用を避ける傾向にある。具体的には、データを使用しない別の方法を考えて業務をすると答えた割合は、全世界で36%、日本人では43%を占めた。

 また、職場でのストレスの一因としてデータが多すぎることを挙げた従業員は過半数を占め、情報やデータ、技術的問題のストレスによる病気休暇を1年で1日以上取得すると答えた従業員の割合は、全世界で31%、日本人では16%にも及んだ。

「釣りざおを持たせずに釣りに行かせるようなもの」

 こうした調査結果を受けてアクセンチュアは「企業の経営陣に対して、従業員が自信を持ってデータに基づいた意思決定ができるよう、十分な研修機会を提供する必要がある」と指摘する。実際に、今回の調査では、全世界の37%、日本人の32%の従業員が、データリテラシーの研修を受ければ自らの生産性が向上すると考えていることが分かった。

 Qlik Technologiesのデータリテラシー・グローバルヘッドで、データリテラシープロジェクト諮問委員会の委員長を務めるJordan Morrow氏は、「ビジネスの成功にデータが不可欠であると認識しているにもかかわらず、データから価値を導き出すことができるチームの構築に苦戦している企業がほとんどだ。こうした企業は、各従業員が自己完結的にデータを活用する能力を育てずに、データへのセルフサービス的なアクセス権を与えることを優先してきた。しかし、十分なトレーニングや適切なツールを提供せずに従業員がデータを活用することを期待するのは、釣りざおや餌、網を持たせずに釣りに行かせるようなもので、釣り場に連れていくことはできても、魚を採れるよう支援していることにはならない」と述べている。

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