エンジニアはなぜ、ちょっとした契約外作業を請けてはいけないのかちりも積もれば何とやら(2/3 ページ)

» 2020年04月01日 05時00分 公開

偽装請負の契約範囲とは

 偽装請負というと、メガバンクのシステム部門で行われていた違法な指揮命令に関するものが有名です。

 あるITベンダーの社員コンサルタントが、請負契約でメガバンクのシステム室に常駐しました。しかし、請負なのにメガバンクの担当者から指示され、翻訳作業や企画書作成など、契約外の作業をさせられたというものです。

 しかもこの社員が作業形態について異を唱えたところ、プロジェクトから外された上、降格処分を受けました。さらに社員が労働局に「偽装請負ではないか」と告発したところ、退職勧告まで出されました。

 結局、労働局がメガバンクとITベンダーに職業安定法44条、および労働者派遣法複数条の違反を認定しました。驚くべきは、それまでメガバンクのシステム室で当該ベンダー社員以外にも数多くの人間が請負契約で働いていたにもかかわらず、誰一人として契約と自らの作業形態について異を唱える者がいなかったことです。

 ユーザー企業はベンダーの社員を好きに使える。ベンダーはユーザー企業に人を出してしまえば、後は最小限の管理で売り上げが上がる。そして当の社員たちも、システム導入に関わる仕事をして給料をもらえて、ユーザー企業からも感謝されていれば、そこにどれほどの問題があるのか実感できない――。

 この問題の怖いところは、表面上はどこにも問題がないように思えることです。

請負契約のリスク

 しかし、それはあくまで表面上のことです。

 例えば、ユーザーからのさまざまな要求に応えるために工数を消費した結果、納期や品質に問題が出たらどうでしょう。請負契約ですから、ベンダーには完成義務があります。徹夜を続けてでも仕事を終わらせなければなりません。

 あれもこれも頼んでおいて、なおかつ当初契約にあるシステムの完成も義務付ける。ベンダー社員が効率良く作業して予定より早く契約内作業を終わらせても、空いた時間に新たな作業を詰め込み、それが終わらないことには帰らせない。しかも、その全てが請負契約の中で行われるので、どんなに働いても作業費用はビタ一文増やしてもらえない――こんなストーリーも考えられます。

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