ガートナー ジャパンは企業がテレワークの効率化を図るために検討すべきペーパーレス化やファイル活用への取り組みについて、ロードマップなどを発表した。
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ガートナー ジャパンは2020年4月17日、企業がテレワークの効率化を図るために検討すべきペーパーレス化やファイル活用への取り組みについて発表した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、テレワークを導入する企業が広まっている。その導入の障壁となるのが、業務で使用する紙の帳票や文書の存在だ。社内に保管しなければならない紙文書の閲覧や、紙文書への押印のためだけに出社するといった事態が起きている。
同社のアナリストでバイスプレジデントの鈴木雅喜氏は「社内でほとんど紙を使わない日本企業は既に3割を超えている。テレワークを進める上で『紙問題』に悩む企業は速やかに電子化を進めるべきだ」と語った上で、情報を使いこなす仕組みの検討と、重要情報のセキュリティ確保を両輪として取り組む必要があると主張する。
同社は、テレワークを進める上で直面する紙問題として以下の3つを挙げた。
1と2の多くはテクノロジーで解決でき、実績がある。3が大きな課題となっているケースは、新型コロナウイルス感染症への対応が当面の間必要となる可能性を踏まえて、全ての日本企業は電子化と情報活用に向けた活動を加速させるべきとした。
同社は、ペーパーレスの視点からテクノロジーを展開するためのロードマップを作成している。そこでは、企業は自社の取り組み状況を確認した上で、テレワークからより複雑なプロセスを含む電子化や情報活用へ歩みを進められることを示している。
鈴木氏は「新型コロナウイルス感染症への対応とテレワークを推進するために、企業は従来の慣行や紙文化を突き崩し、電子ファイルベースで業務を進められる環境への移行を図るべきだ」と語る。
ロードマップでは、従来の紙文化から最終的により複雑なプロセスでペーパーレスを導入する流れを「テレワーク」「コラボレーション」「より複雑なプロセスへの対応」の順で描いている。
従業員個人が保有する紙の資料類や情報漏えいのリスクがない紙文書を、複合機やスキャナーで電子化し、必要に応じファイル名を付与するなどして活用する段階。
簡易なワークフロー製品やサービスが、さまざまな電子フォームのテンプレートを提供しており、簡単に電子フォームをカスタマイズできる場合もある。社内の各部門のプロセスに紙帳票がまだ残っている場合は、こうした製品やサービスを短期間で導入し、紙帳票を電子フォームに変えることができる。
工場の現場や店舗で紙の報告書を作成していたり、社内の事務職に紙文書を扱うプロセスが残っていたりする場合は、タブレット端末などのデバイスを活用して電子化を進められる可能性がある。
チームで共有する既存の紙文書も、テレワーク時に利用できるようスキャンしておく必要が生じる場合がある。緊急対応としては、紙文書を全てスキャンするのではなく、できる限り必要なものに絞り込むのが望ましい。また、電子化の目的がテレワークのみである場合は、紙文書を少なくとも当面は廃棄しないようにすることも重要。
既に広く行われている、ワークフローや文書管理などの基本機能を活用する。また、これらの機能をベースに各企業でカスタマイズし、用途により適した仕組みを作る。
電子帳簿保存法は、さまざまな改正を経て対象が広がり、適用の難易度が低くなった。現実的に適用しにくい部分も残っているものの、電子帳票は既に普及しており、電子帳簿や、帳票、電子契約、電子請求といった製品やサービスを活用することができる。一方、電子帳簿保存法適用外の契約書については、プロバイダーによる簡易な電子契約書保管サービスを活用できる。紙問題への取り組みを、3カ月、6カ月、1年先まで見据える場合、これらの対応を検討する。
顧客自身が書き込む申込書など、顧客や取引先が紙を用いている場合は、電子化のハードルはやや高くなる。このようなケースでは、より高度な機能群を有する製品を用いる。この段階を緊急対応の一環と位置付けるのは難しく、紙問題への取り組みを1年先まで見据えた場合に検討する対象となる。
「直近の問題にだけ対応するのではなく、視野を広げて、やや時間のかかるペーパーレスとファイル活用への取り組みも検討し、自社の計画を実施していくことが重要。テレワーク環境を展開するスピードを重視するあまり、企業が間違った選択をするリスクが高まっているため、注意が必要」(鈴木氏)
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