OSIモデルにはないが、サービスの創出で重要な「レイヤー8」とは?羽ばたけ!ネットワークエンジニア(27)(2/2 ページ)

» 2020年04月27日 05時00分 公開
[松田次博@IT]
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「誰をつなげるか」「何をつなげるか」を決めるレイヤー8

 2つの自治体サービスを作って、発展形が自然に頭に浮かんだ。それが図4である。自治体と警備会社に加えて宅配スーパーや病院がつながって高齢者向けのサービスを提供する。例えば、買い物は高齢者にとって大変なことなのだが、ロボットに向かって「キャベツを1個持って来て」と言えば、きちんとテキスト化されたメッセージが宅配スーパーに届き、キャベツを持って来てくれる。

図4 ロボットとクラウドでつながる地域社会が高齢者を支える API:見守りクラウドを使ったサービスの開発を容易にするインタフェース

 ここまで読んで「これがネットワークの話だろうか」と思った方もいるのではないだろうか。しかし、図4はまさにネットワークだ。ネットワークとは人やモノをつなげて相互のコミュニケーションを可能にするものだからだ。

 ネットワークには「OSI参照モデル」(以下、OSIモデル)というモデルがある。コンピュータ通信の機能をレイヤー1の物理層からレイヤー7のアプリケーション層までの7つの階層で定義したものだ。TCP/IPが主流になった1990年代後半以降、OSIモデルの実用的価値はあまりなくなったが、通信が持つべき機能を理解する上では役に立つ。

 しかし、サービスを創出するためにはOSIモデルに大切な要素が欠けていることに気が付いた。サービスを実現するには通信機能をどう実現するかの前に「誰をネットワークにつなげるか」「何をネットワークにつなげるか」を決めなければならない。それは技術的な検討で決まるOSIモデルの7層と違って、何を目的にどのようなサービスを創るかという「アイデア」で決まるものだ。それは7層より上の概念なのでレイヤー8ということになる。

 レイヤー8までをネットワークと捉えるとネットワークエンジニアの仕事は大きく広がる。皆さんもレイヤー8を含むサービス創出にチャレンジしてはどうだろう。

筆者紹介

松田次博(まつだ つぐひろ)

情報化研究会主宰。情報化研究会は情報通信に携わる人の勉強と交流を目的に1984年4月に発足。

IP電話ブームのきっかけとなった「東京ガス・IP電話」、企業と公衆無線LAN事業者がネットワークをシェアする「ツルハ・モデル」など、最新の技術やアイデアを生かした企業ネットワークの構築に豊富な実績がある。企画、提案、設計・構築、運用までプロジェクト責任者として自ら前面に立つのが仕事のスタイル。『自分主義-営業とプロマネを楽しむ30のヒント』(日経BP社刊)『ネットワークエンジニアの心得帳』(同)はじめ多数の著書がある。

東京大学経済学部卒。NTTデータ(法人システム事業本部ネットワーク企画ビジネスユニット長など歴任、2007年NTTデータ プリンシパルITスペシャリスト認定)を経て、現在、NECセキュリティ・ネットワーク事業部主席技術主幹。


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