Mirantisは2020年5月28日(米国時間)、LinuxおよびWindows Serverに対応した最新の「Docker Enterprise 3.1」をリリースしました。Docker Enterprise(旧称、Docker Enterprise Edition、Docker EE)はWindows Server 2016で初めてWindows Serverに対応しましたが、このバージョンからはWindows Server 2016はサポート対象外となります。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
2019年11月初め、Docker Enterprise部門がMirantisに買収されました。その後、買収発表直後のマイナーリリース「Docker Enterprise 3.0(Docker Engine 19.03.5)」を最後にマイナーリリース、メジャーリリースともに半年以上動きがありませんでした。そして、2020年5月28日(米国時間)、Mirantisからの初めてのメジャーリリース「Docker Enterprise 3.1(Docker Engine 19.03.8)」が発表、提供されました。
新バージョンの新機能や変更点については、以下のリリースノートで確認してください。大きな変更点としては、「Universal Control Plane(UCP)」で管理されている「Kubernetes」クラスタにおいて、Windows Serverノードのオーケストレーションがサポートされます。これにより、LinuxノードとWindows Serverノードの混在するクラスタにおいて相互運用性が向上します。また、Windows Serverで「Docker Trusted Registry(DTR)」が初めてサポートされました。
Docker Enterprise 3.1は、長期サービスチャネル(Long-Term Servicing Channel、LTSC)の「Windows Server 2019」と、「Windows Server, version 1809」以降の半期チャネル(Semi-Annual Channel、SAC)に対応しています。
以前のバージョンである「Docker Enterprise 3.0(Docker Engine 19.03.0〜19.03.5)」までは、PowerShell Galleryの「DockerMsftProvider」モジュールがインストール手順を簡素化してくれましたが、旧手順はDocker Enterprise 3.1には適用されません。
Docker Enterprise 3.1の新規インストールおよび旧バージョンからのアップデートは、Mirantisが提供するインストール用PowerShellスクリプト「install.ps1」を実行するだけで完了します。PowerShellの実行ポリシーが「RemoteSigned」であれば、以下の2行のコマンドラインを実行するだけです(画面1)。
PS:\> Invoke-WebRequest -Uri https://get.mirantis.com/install.ps1 -o install.ps1 PS:\> .\install.ps1
Docker Enterprise(旧称、Docker Enterprise Edition、Docker EE)は、「Windows Server 2016」で初めてWindows Serverをコンテナホストとしてサポートし、Windowsコンテナの実行に対応しました。
しかしながら、Windows Server 2016がサポートされるのはDocker Enterprise 3.0が最後になります。そして、以下のライフサイクルが示すように、Docker Enterprise 3.0のサポートは「2021年7月21日」に終了することに注意してください(KubernetesクラスタでのWindows Server 2016ワーカーノードのサポートは2020年7月まで)。
最新のDocker Enterpriseを利用するには、サポート終了までにWindows Server 2019以降にアップグレードする必要があります。なお、Docker Enterprise 3.1の「install.ps1」はWindows Server 2016へのインストールをブロックすることはしませんが、筆者が試した限りでは、アップグレード後にDocker Enterprise 3.0で動作していたWindowsコンテナはエラーで起動できなくなりました。
ベースOSイメージ「Windows Server Core」のWindows Server 2016バージョン(mcr.microsoft.com/windows/servercore:ltsc2016)については、Windows Server 2019上のDocker Enterprise 3.1の環境で、以前と同様に「Hyper-V分離モード」(Hyper-Vコンテナ)として実行可能です(画面2)。ベースOSイメージとしては、通常のWindows Server 2016のライフサイクルが終了する「2027年1月12日」までサポートが継続されるはずです。
Docker EnterpriseのMirantisによる買収後、半年以上、これといって目に見える動きがなかったため心配していましたが、Docker Enterprise 3.1でのWindows Server向けの強化点(インストールやアップグレードの簡素化)や、「Microsoft Azure」でも注力している「Kubernetes」でのLinuxとWindows Serverの相互運用性強化などを見ると、継続性は保たれており、心配は無用だったようです。
Docker EnterpriseはMirantisに移りましたが、「Windows 10」向けの「Docker Desktop(Docker Desktop Community)」は引き続きDockerが提供します。以下の記事で説明されているように、MicrosoftとDockerの提携関係は引き続き強固なようです。
Docker Desktopの安定版(Stable)の最新バージョンは2020年5月27日(米国時間)リリースの「2.3.0.3」で、Docker Enterprise 3.1とDocker Desktopのエンジンは「Docker Engine 19.03.8」で再び同じになりました(画面3)。
2020年11月12日(米国時間)リリースの新バージョン(Engine 19.03.13)から、「Docker Enterprise」は「Mirantis Container Runtime(MCR)」という名称になりました。
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(2019-2020)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.