国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)らの研究グループは、300GHz帯の無線に向けた超小型アンテナの開発に成功した。フォトニックジェット効果に注目し、大きさが縦1.36×横1.36×奥行き1.72ミリの小型アンテナを開発した。
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国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学とソフトバンク、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)、National Research Tomsk State University、Tomsk Polytechnic Universityの研究グループは2020年6月18日、300GHz帯の無線に向けた超小型アンテナの開発に成功したと発表した。第5世代移動通信システム(5G)の次の無線システム(Beyond 5G/6G)に向ける。
300GHz帯は、「テラヘルツ無線」と呼ばれる帯域に属する。テラヘルツ無線は、5Gが利用する周波数帯域よりもより広い帯域を使えるため、超高速データ伝送が可能だ。ただし、テラヘルツ無線の周波数は伝搬損失が大きい。アンテナ利得とアンテナ開口面積は比例関係にあり、アンテナ利得を高めようとするとアンテナ開口面積が大きくなってしまう。スマートフォンなど小型機器への実装を考慮すると、実用化するには小型で利得が高いアンテナの開発が不可欠だった。
研究グループは、無線の波長と同じ程度の大きさの誘電体構造に電磁波を照射することで、誘電体の後に発生する「フォトニックジェット効果」に注目した。発生したフォトニックジェットを測定することでアンテナ性能が測定できる。今回は300GHz帯の無線信号波長(約1ミリ)と同程度の直方体誘電材料を使用し、大きさが縦1.36×横1.36×奥行き1.72ミリの小型アンテナを開発した。
開発したアンテナの利得は、シミュレーション値で約15dBi。アンテナ利得が同程度のホーンアンテナと比べて、体積を40%程度に小型化。このアンテナから放射された300GHzの電波のアンテナ開口面での電界分布を測定すると、電波の位相分布はアンテナ開口面で一様で、位相に敏感な無線通信にも利用できることが確認できた。
今回開発したアンテナに加えて、テラヘルツ無線に対応するトランシーバーの出力と受信感度を向上させることで、テラヘルツ無線通信技術の実用可能性が広がる。研究グループは「今後、テラヘルツ無線伝送システムに開発した超小型アンテナを適用して、無線送受信機の実現可能性を調査する」としている。
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