総務省では5Gの次のステップである「Beyond 5G(6G)」を推進するための道筋を「Beyond 5G推進戦略懇談会」の場で検討している。どのような戦略を立て、議論しているのか。
この記事は会員限定です。会員登録(無料)すると全てご覧いただけます。
ウェアラブル端末などを通じて人の思考や行動をサイバー空間がリアルタイムに支援することで身体能力や認知能力を拡張する「超サイバネティクス技術」などを2030年代までに6Gを用いて実現する――国主導のもと、現在このような議論が繰り広げられている。
2020年3月、NTTドコモ、au、ソフトバンクは5G(第5世代移動通信方式)サービスの提供を開始した。現在主流となっている4Gと比較して、超低遅延、超高速、超多数同時接続が特徴で、遠隔地のロボット操作の遅延をなくしたり、大容量データを高速ダウンロードしたり、莫大(ばくだい)な数のセンサーや端末をインターネット接続できたりするようになると期待が高まっている。2020年4月現在の段階では、5Gが利用可能な地域は局所的なものとなっており、2024年までに全国へ徐々に対象エリアが広がる予定だ。
この5Gの次の段階、「Beyond 5G(以下、6G)」は2018年ごろから、世界各国で学術的な議論が行われている。米国では、2019年2月にトランプ大統領がTwitterで6Gへの取り組み強化をツイート。ニューヨーク大学とDARPA(国防高等研究計画局)がテラヘルツ波の無線とセンサー技術の研究拠点「ComSenTer」を立ち上げている。中国では、2019年11月に華為技術(ファーウェイ)の梁華会長が「6Gは研究の初期段階。6Gで使用が想定される周波数の特性や技術的課題の研究、経済的、社会的利益に焦点を当てた研究チームを任命した」とコメントし、6Gの研究に乗り出したことを示している。
日本では、独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)が2018年7月に欧州委員会と連携したテラヘルツ波end-to-endシステムの開発研究を開始し、6Gを見据えたワイヤレス、ネットワーク、デバイスなどの研究開発を進めている。また日本電信電話(NTT)は2019年6月、6Gを見据えたネットワーク構想「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network)を発表した。
このような情勢の中、総務省は2020年1月に、6Gの導入が見込まれる2030年代の通信インフラや、6Gを実現する政策の方向性などの検討を目的として「Beyond 5G推進戦略懇談会」の場を設けた。2020年4月8日に開催した2回目の会合で総務省が案を示し、14日に「Beyond 5G推進戦略(骨子)」を提示した。
推進戦略では、先述した「超サイバネティクス技術」以外に、次のような姿を2030年代に期待される社会像だと示している。
これらを実現するために、どのような要件が6Gに求められるのか。推進戦略では次のような機能――具体的には、5Gの10倍のアクセス通信速度、5Gの10分の1の低遅延、現在の100分の1の消費電力の実現など――を目指している。
これらの機能を実装すべく、「研究開発」「知財、標準化」「展開」のそれぞれにおいて、ロードマップを策定して取り組む。
「研究開発」「知財、標準化」「展開」それぞれの戦略で、次のような施策を実施する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.