【Excel】極端な値を範囲から外してグラフの変化を分かりやすくするTech TIPS

Excelで単純にデータをグラフ化すると、突出した値のためにグラフで変化が見たい部分が平たんになってしまい、意味のないものになってしまうことがある。かといって、突出したデータを削除すると、データの改ざんと誤解されかねない。こうした場合は、グラフの範囲設定を変更すればよい。その方法を紹介しよう。

» 2020年08月03日 05時00分 公開
[塩田紳二]

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対象:Office 2013/2016/2019/365


Excelでグラフ化すると見たい変化が分からなくなることも Excelでグラフ化すると見たい変化が分からなくなることも
Excelで販売数量などをグラフ化すると、何らかの理由から飛び抜けた販売個数があると、グラフの範囲が大きくなってしまい、前後の変化が分からなくなってしまう。こうした飛び抜けたデータを除いた範囲でグラフを作成すれば、本来の変化が見たい部分がグラフで見える化できる。その方法を解説する。

 新型コロナの関連なのか、最近テレビのニュースやワイドショーなどで「グラフ」を見る機会が増えてきた。しかし、世間で見掛けるグラフの中には、「これでいいのか?」と思えるようなものも少なくない。例えば、1つの値だけが飛び抜けているため、本来比較したい他の値がドングリの背比べのようにグラフ化されてしまい、差の推移が分かりにくいようなものだ。

 これらは、「Microsoft Excel(エクセル)」の自動スケール機能が原因であることが少なくない。Excelでは、指定された表をグラフ化する際、最大値と最小値を重視してグラフを作る。このとき、他と飛び抜けた値が含まれていると、グラフの範囲が大きくなってしまい、それに対して小さな値の変化が見えにくくなる。あるいは、変動幅がグラフの前半と後半では大きく異なるような場合、前半が穏やかで後半が激しいといったグラフになってしまうこともある。ここでは、グラフの軸範囲を手動で指定することで、データの変化を見やすくグラフ化する方法を解説する。

グラフでデータの変化を分かりやすくするには?

 Excelのグラフ機能には、自動的に軸の範囲を調整する機能があり、原点の位置(最小値)を自動調整してくれる。しかし、元データに、平均と比べて大きすぎる、あるいは小さすぎる値が含まれていると、この機能により、データの変化を小さく見せてしまい、グラフの意味がなくなってしまうことがある。

グラフの見やすさのために元データを書き換えるのはデメリットだらけ

 元データから異常値を削除してしまう方法もあるが、それではデータの意味合いが変わってしまったり、改ざんを指摘されたりする可能性もある。また、表の一部のみを選択してグラフ化することもできるが、表の途中部分のみを選択してしまうと、表の先頭にある項目名などがグラフに表示されず、グラフタイトルなどを手動で設定しなければならなくなる場合もある。

 基本的には、データは書き換えず、オリジナルと同じ形を保つようにしておくことで、後で何か問題が起こる可能性を減らすことができる。そもそも、グラフは、元データとなる表を視覚的に表現するものであり、グラフのために元データを書き換えるという発想自体が危険で、後の処理に悪影響を及ぼす可能性がある。

 オリジナルのデータが定期的に更新、追加されるような場合でも、元データがオリジナルの構造をそのまま保っていれば、Tech TIPS「【Excel】毎日集計のCSVファイルもクエリ機能で一発自動更新」で解説したクエリでシート化し、これをそのままグラフ化することで、手直しはわずかで済む。しかし、グラフの見栄えのために元データを編集してしまったら、毎回、同じ書き換えを行わねばならず、「二度手間、「三度手間」となってしまう。筆者の経験では、表データを編集するよりも、グラフの設定を変える方がはるかに楽である。

一部に大きな値などを持つグラフの2つの対応方法

 一部に大きな値などを持つグラフの問題への対応には大きく2つがある。

 Excelは、1つだけ飛び抜けた値があると、最大値が大きくなりすぎて、データの変化が見えなくなってしまう。このような場合には、数値軸の範囲を手動で指定することで、データの変化をはっきりと見せることができる。

縦軸の範囲を調整してグラフを見やすくする 縦軸の範囲を調整してグラフを見やすくする
飛び抜けた値をグラフの表示外とすることで、変化が見えやすくなった。

 グラフは、元データの数字から作られるものであるため、一定範囲にこれを描画しようとすると、どうしても、変化の小さい部分が平たんに見えてしまうことがある。このような場合、1つのグラフをコピーして2つにして、それぞれの表示範囲を変えることで、それぞれの変化を見せる方法がある。これは、グラフの前半と後半などで変化率が違うような場合に有効な方法だ。Excelではグラフのコピーは簡単に行えるため、元データとの関係を保ったまま、表示範囲の違う複数のグラフを作ることができる。

グラフをコピーして変化を見たい部分の表示範囲を調整する グラフをコピーして変化を見たい部分の表示範囲を調整する
グラフの後半の変化が激しく、前半がフラットになってしまった。表示範囲を限定したグラフを作ることで変化が分かりやすくなった。

軸の範囲を手動で指定する

 Excelのグラフには、数値を示す「数値軸」と項目の並びを示す「項目軸」がある。「縦軸」「横軸」のどちらが数値軸、項目軸になるのかは、グラフの種類による。横軸グラフでは、縦軸が「項目軸」、横軸が「数値軸」となる。一方、縦棒グラフでは、縦軸が「数値軸」、横軸が「項目軸」となる。表の構造やグラフのデータ指定によっては、どちらも「数値軸」「項目軸」になることがある。

「数値軸」と「項目軸」 「数値軸」と「項目軸」
Excelのグラフには、数値を示す「数値軸」と、項目を並べた「項目軸」がある。Excelは数値軸の最大値、最小値を元データから自動的に決定する。

数値軸の範囲を調整する

 Excelは、数値軸の範囲を元データから自動で設定する。しかし、これを手動で設定し、他に比べて大き過ぎる(あるいは小さ過ぎる)値をグラフの表示範囲外とすることで、データの変化が分かりやすいグラフを作ることが可能になる。

 数値軸の範囲を手動で設定するには、グラフの軸の数値項目を右クリックして、[軸の書式設定]を選択する。その後、[操作]ウィンドウで[軸のオプション(グラフのアイコン)]を選択、「軸のオプション」の「境界値」にある「最大値」あるいは「最小値」を適当な値に変更する。

数値軸の範囲を調整する(1) 数値軸の範囲を調整する(1)
グラフの数値軸上で右クリックして、メニューから[軸の書式設定]を選択する。
数値軸の範囲を調整する(2) 数値軸の範囲を調整する(2)
グラフ右側の領域で[軸のオプション]を選択して「境界値」の「最小値」「最大値」を手動で設定する。

項目軸を調整する

 項目軸は、数値範囲にならない元データの項目を並べたもので、「テキスト」と「日付」の2種類がある。日付の場合は、数値軸のように日付で開始日時、終了日時を設定できる。

項目軸の確認方法 項目軸の確認方法
項目軸を右クリックして、メニューから[軸の書式設定]を選択する。「軸のオプション」を確認することで、項目軸がどのように設定されているのか確認できる。

 ただしExcelは、時々日付軸を「数値軸」と解釈してしまうことがある(対策については後述)。

 テキスト軸の場合、その範囲を調整する場合には、グラフを右クリックしてメニューから[データの選択]を選ぶ。

 表示された[データソースの選択]ダイアログの右側に[横(項目)軸ラベル]というリストがあり、表示されている項目がここに全て並ぶ。これを使って、項目軸の範囲を指定できる。操作としては2つあり、1つは、このリストに表示されている項目の行頭にあるチェックボックスを「オフ」にする。もう1つの方法は、上の[グラフデータの範囲]で対象として指定されている項目軸のセル範囲を変える方法だ。前者は、任意の項目をオン/オフできるが、チェックボックスを1つ1つオン/オフしなければならないため、表示させない項目が少ない場合に使う方がよい。

項目軸を調整する(1) 項目軸を調整する(1)
項目軸の範囲を変更するには、グラフ上で右クリックして[データの選択]を選ぶ。
項目軸を調整する(2) 項目軸を調整する(2)
[データソースの選択]ダイアログでは、2つの変更方法がある。1つは「グラフのデータ範囲」でセル範囲を変更する方法(A)、もう1つは、右下の「横(項目)軸ラベル」でリストボックス内のチェックボックスを使って表示させる項目を選択する方法(B)だ。
項目軸を調整する(3) 項目軸を調整する(3)
項目軸の範囲を調整することで、見せたいデータの変化が分かりやすくなる。

 これに対して後者は、多数の項目を対象外に指定しやすいものの、先頭か末尾からの連続範囲でない場合には、指定が面倒になる。カンマで項目セル範囲指定をつなげていけば、チェックボックスを使う方法と同等の指定は可能ではある。しかし、セル範囲をユーザーが手入力で入れるのは面倒な作業で、マウスを使った作業でうっかり範囲外をクリックしてしまうと、キャンセルして指定を最初からやり直さなければならない。

 もっとも多くの場合、途中を抜くなら数個程度、それ以外は先頭か末尾の連続範囲を対象外とすることが多いので、どちらかの方法で問題はないだろう。

項目軸が日付なのに数値と解釈された場合の対処方法

 Excelでは、日付時刻を「シリアル値」という数値として保持している。Excelが軸となる元データが日時であると解釈すると、「境界値」設定では日付形式での範囲指定が可能になる。しかし、何らかの原因で、元データが「シリアル値(日付時刻)」なのに単なる数値と解釈されてしまうことがある。シリアル値ではないと解釈されると、「境界値」では数値の入力欄になってしまう。Excelは、この数値欄でも「yyyy/mm/dd」形式の日付を受け付けることができる。

日付軸を数値軸と解釈された場合の対処方法 日付軸を数値軸と解釈された場合の対処方法
何らかの原因でExcelが日付軸を数値軸と解釈していても、数値欄に「yyyy/mm/dd」形式の日付を入力することができる。

グラフを2つに分ける

 データによっては、前半と後半で変化率が大きく違うような場合、1つのグラフを前半と後半に分けると、それぞれの変化が分かりやすくなる。

グラフをコピーして必要な範囲に限定したグラフを作成する(1) グラフをコピーして必要な範囲に限定したグラフを作成する(1)
1回作成したグラフは、コピー&貼り付けで簡単に複製できる。それぞれが元データとの関係を維持しているが、設定はそれぞれで独立している。このため、範囲を限定したグラフを作るには、必要なだけコピーを行い、それぞれの表示範囲などを設定すればよい。
グラフをコピーして必要な範囲に限定したグラフを作成する(2) グラフをコピーして必要な範囲に限定したグラフを作成する(2)
コピーしたグラフの項目軸の範囲を調整(限定)し、数値軸も変化が分かりやすいようにする。

 原理は簡単である。グラフのコピーを作り、軸の設定で表示範囲を変えればよい。一回、表からグラフを作ると、Excel内では「グラフ」というオブジェクトになり、それをシート内グラフあるいはグラフシートとして表示できるようになる。このグラフオブジェクトは、簡単にコピーや貼り付けが可能なので、簡単に全く同じものを作ることができる。

 しかし、一回コピーしてしまうと元データとの関係は維持されても、元のグラフとは独立したものになるため、それぞれの軸範囲などを個別に設定できる。この方法は、10年間といった長期間にわたるデータから前の1年間のデータをグラフ化するといった場合にも利用できる。

グラフをコピーする場合はワークシート内グラフがおすすめ

 グラフをコピーして作業するなら、グラフシートよりもワークシート内グラフにした方が、作業は簡単になる。単純にシート内グラフ全体を選択してコピーし、貼り付けを行うだけでよい。グラフシートにしてしまった場合には、タブを右クリックして[移動またはコピー]を選択する。この方法については、Tech TIPS「【Excel】『マウスで表を選んでコピー&ペースト』よりもスマートな方法あります」を参照してほしい。

 また、シート内グラフやグラフシートは、グラフを選択している状態で、以下の方法で相互に変換できる。

  1. 右クリックメニューから[グラフの移動]を選択
  2. [メニュー]キーを押して[V]キーを押す
  3. [グラフのデザイン]タブの[場所]−[グラフの移動]をクリック
  4. [Alt]キーを押しながら[J][C][V]キーを順に押す

 シート内グラフに戻す場合には、配置されるシートを確認、選択しないと、グラフを見失いやすいので注意してほしい。

 グラフをコピーすれば、全体を示すグラフを幾つにでも分割できる。後々のことを考えると、最初に元データ全体を使って作ったグラフは加工せずに、取っておくとよい。コピーしたグラフの設定に失敗したとき、これを消して新しいコピーを作ればいいからだ。

 ケチケチしないで、オリジナルは手をつけずに保存、コピーしたものを加工するようにすれば、失敗のリカバリーも簡単になる。「何でも保存」は、こうしたExcelのようなデジタルデータの編集で心掛けておくと、後で「ヨカッタ」と思うことが少なくない。ダマされたと思って実践してほしい。

 なお、オリジナルのグラフは、保存するなら、グラフシート化する方が「見えやすく」、管理が楽だ。シート内グラフは、シートの表示範囲外になることがあり、シートを開いただけでは確認ができず、複数のワークシートがあると探すのが面倒になる。どうしてもグラフシートを見せたくなければ、タブの右クリックメニューから「非表示」を選択して隠しておくこともできる。

 Excelのグラフは簡単に作成できるが、必ずしもデータの変化を的確に伝えるものにはならないことがある。このような場合には、軸を設定し、変化が見えるようにすることで、分かりやすいグラフにすることが可能だ。

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