ガートナー ジャパンは、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」を発表した。今後5〜10年にわたって競争優位性をもたらす可能性が高い一連の技術に注目し、1700以上の技術を分析した上で知見を抽出して30の先進技術と5つのトレンドにまとめた。
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ガートナー ジャパンは2020年8月19日、「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」を発表した。今後5〜10年にわたって競争優位性をもたらす可能性が高い一連の技術に注目し、1700以上の技術を分析した上で知見を抽出して30の先進技術と5つのトレンドにまとめたという。
ガートナーが示した技術トレンドは、「デジタルミー」「コンポジットアーキテクチャ」「フォーマティブAI(人工知能)」「アルゴリズムによる信頼」「シリコンの先へ」の5つ。
ガートナーは、「技術と人の統合が進みつつあり、デジタルパスポートやソーシャルディスタンシング技術など、人をデジタルで表現する新たな機会が生まれている」と指摘する。このカテゴリーに含まれる技術としては「人のデジタルツイン」や「ヘルス・パスポート」「シチズンツイン」などが挙げられており、これらはいずれもハイプ・サイクルの黎明(れいめい)期にあるとしている。
ガートナーは「アジャイルな組織になるためには、コンポジットアーキテクチャのカテゴリーに含まれる技術に注視すべきだ」としている。このカテゴリーに含まれる技術は「コンポーザブルエンタプライズ」や「データファブリック」「プライベート5G」「組み込み型AI」などだ。
フォーマティブAIとは「状況の変動に応じて動的に変化する、一連の先進的なAIと関連技術」を指す。
このカテゴリーに含まれる技術には、「AI拡張型開発」や「オントロジ/グラフ」「コンポジットAI」「アダプティブな機械学習」「自己教師あり学習」「生成的AI」などがある。ガートナーは「“AIの境界線の探求”を目指す企業はこうした技術を検討すべきだ」としている。
ガートナーは「権限に基づく信頼モデルはアルゴリズムによる信頼モデルに転換しつつある。こうしたアルゴリズムによる信頼に関連する技術は、企業が顧客や従業員の信頼を失うリスクとコストにさらされないよう保証する上でも役立つ」と語る。
例として「SASE」(Secure Access Service Edge)や「差分プライバシー」「個人所有アイデンティティーの業務利用」(BYOI)、「責任あるAI」などの技術が挙げられる。
ムーアの法則に従ってこれまでIT業界をけん引してきた半導体技術が物理的な限界に近づく中、ガートナーは「新たな先端素材が技術の加速と小型化を可能にする画期的な機会をもたらす」と指摘する。そうした「シリコンの先へ」として検討すべき技術では、「DNAコンピューティング/ストレージ」や「生物分解性センサ」「カーボンベースのトランジスタ」が挙げられている。
2020年のハイプ・サイクルで特徴的なのは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が強く出ている点だ。COVID-19に関する「ヘルス・パスポート」と「ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジ」はいずれも、ハイプ・サイクル上を急速に推移している。ソーシャル・ディスタンシング・テクノロジのように「過度な期待」のピーク期からハイプ・サイクルに初登場するテクノロジーの例はほとんどないとガートナーはいう。
ガートナーのブライアン・バーク氏(アナリスト、バイス プレジデント)は、次のように述べる。
「先進テクノロジーとは本質的に破壊的なものだ。それらがどれほどの競争力を持つかは、まだよく知られていないか、市場で証明されていない。ほとんどのテクノロジーは、『生産性の安定期』に達するまでに5〜10年以上かかる。しかし、本ハイプ・サイクルで取り上げたテクノロジーの中には短期間で成熟するものもあるため、テクノロジーイノベーションのリーダーは、特にその影響が革新的、あるいは多大なものについては把握しておくべきだ」
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