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» 2020年11月24日 05時00分 公開

私のふんどしで相撲を取らないでください「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(82)(2/3 ページ)

[ITプロセスコンサルタント 細川義洋,@IT]

ネットに公開されたデータはどう使おうと自由か?

 皆さんは、どのように考えるだろうか。

 被告Yの行為に「他人のふんどしで相撲を取る」ような不公正さを感じる方もいるだろう。心情的には私にもそんな思いがないとはいえない。しかし、インターネット上で公開したデータは世界中が自由に使えるはずのものだ、という考えもある。無償で開示したデータをどう使おうと文句は言えない、というのもインターネット時代の考え方だ。

 わざわざプログラムを作ってデータを抽出するあたりは、少し作為的な感もあるが、これも単なる工夫の一つにすぎないとも考えられる。この辺りを裁判所はどのような線引きをしたのだろうか。まずはその基準を示した部分から見てみよう。

東京地方裁判所 令和元年12月19日判決から(つづき)

当該DBに独立の経済的価値があるとしても、その情報を収集して他のDBに組み込む行為は、情報およびDBの内容および性質、行為の態様および目的、権利侵害の程度などに照らして、著しく不公正な方法で他人の権利を侵害したと評価できる場合に限り、不法行為を構成すると解すべきである。

 「著しく不公正な方法」とは、秘匿しているデータを不正アクセスで盗み出すようなことがこれに当たるだろう。その上で、「データを公開した者に対して何らかの権利侵害があった場合」には不法行為となる、というわけだ。インターネット上にデータを公開するということは、それをどのような形で活用されても文句は言えない、という判断に見える(もちろん合法的な目的である必要はあるが)。

 ただし、私はこの判断について一定のエクスキューズを記したいと思う。それは後にして、裁判所の判断を先に見ていくことにしよう。

東京地方裁判所 令和元年12月19日判決から(つづき)

本件データのうち、医療機関基本情報は、一般に公開される必要が高く、実際に公開されている情報であり、Yはサイトにおいて無償で公開されていた情報の中から、顧客が指定した条件に従って情報を収集したに止まり、労力および時間をかければ顧客自身でも収集することが可能な情報について、その収集を代行していたにすぎないと評価することもできる。

(中略)

さらに、Yは、あくまでサイトに無償で掲載されている情報の収集代行を業務としていたにすぎず、本件情報元記載の存在を考慮しても、Yに、Xの本件DBに対する権利を積極的に侵害しているとの認識があったと認めるのに足りる証拠はない。

本件DBの(Xの)主な市場は、検索サイトやコールセンターなどへの医療機関情報の提供、カーナビ向けの医療機関情報の提供および診療圏(市場)調査である。

(中略)

年間使用料は、提供する情報の範囲や更新頻度によって異なるが、数万円から数十万円程度である。

一方、(中略)Yの顧客は、企業、大学および個人などであり、顧客の目的は市場調査や研究資料の収集などであることが認められるから、市場調査を目的とする場合などに、Xの顧客層と一部競合する。

(中略)

料金は、高いもので1件当たり5万円程度であり、証拠上認められる売り上げは、合計27万1080円に止まる。そして、本件Yの業務によって、Xが本件DBの販売機会を失ったと認めるのに足りる証拠はない。

以上によれば、本件Yの業務には、本件DBの無断複製と評価できる行為が含まれているものの、著しく不公正な方法で他人の権利を侵害したとまではいい難く、不法行為には当たらないというべきである。

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